- 「職業紹介優良事業者」認定
- 求人者と求職者の適切なマッチングの促進に取り組む企業として認定されています。
薬剤師さんには在宅医療現場をつなぐハブになって欲しいですね。
祐ホームクリニック
医師 井口真紀子
医師が語る、在宅治療の場で 求められる薬剤師とは
地域医療の現場で薬剤師を求める声が日増しに高まっています。調剤だけでなく実際に現場を訪れることができるため、薬局勤務では得られない経験ができることが特徴で多くの薬剤師が注目している仕事です。そこで在宅医療で地域高齢者の健康を守る祐ホームクリニックの在宅医療専門医の井口 真紀子先生に「これから必要とされる薬剤師像」についてお伺いしました。
医療過疎地の僻地治療を志して、目指す未来を見つけた
先生はなぜ、在宅・終末期医療に関わっていこうと思われたのですか?
井口氏:もともと、医療におけるジェネラリストになりたいという思いがあり、地域医療を志していました。専門領域だけを治療する医師ではなく、街のお医者さんのようなイメージで、深刻な病気の時だけではなく人間全体に関わりたいと思っていたのです。私は子供の頃から病弱でよく病院にかかっていたので、自然と自分も医師になって人の役に立ちたいと思うようになっていました。 在宅診療や終末医療を志すようになったのは、研修医の時に在宅緩和ケアを学ぶ機会があったことがきっかけです。終末期であれば病院にいた時よりも体調は悪くなっているはずなのに、自宅にいる患者さまたちは残された時間を笑顔で過ごしていました。その姿を見て、「患者さまご本人やご家族には、私たち医療者にはない力がある。それを引き出したい」と感じ、在宅診療医を目指すことにしました。
現在祐ホームクリニックでは、どのような体制で地域医療に取り組まれているのでしょうか。
井口氏:基本人数は、医師とアシスタントの二人です。患者さまの状態によって地域医療連携室と連絡を取り合い、さらに看護師さんが加わったり、外部の薬剤師さんやケアマネジャー、ヘルパーさんが同行したりします。 医師である私に言いづらいことでも、薬剤師さんやヘルパーさんになら相談できるという患者さまもいらっしゃるので、チームで活動することが在宅医療では大切です。例えば「薬が飲みづらくて、どうしても残ってしまう」という相談を薬剤師さんが受け、同じ効き目だけれど錠剤が小さくて飲みやすい形状のものを提案してもらい、変更したというケースもあります。
多職種連携医療で求められる薬剤師の姿
在宅医療の現場において、薬剤師に求められているのはどのようなことでしょうか?
井口氏:臨機応変に対応できる柔軟性と、スピード感があるといいですね。薬剤師さんは薬に関するプロですから、臆せず私たちにアドバイスしてもらえると助かります。以前、処方していた薬と患者さまの状態を見て、「先生が処方している薬の種類が少し多いかもしれない」と、指摘をしてくれた方がいました。もちろん、患者さまの体調や体重に合わせて適切な薬の処方しているつもりですが、在宅での治療は正解がひとつではありません。患者さまとご家族のQOLを維持するために何ができるのか、そうしたことを視野に入れて動ける人が活躍できる場所なのではないでしょうか。
多職種連携医療で求められる薬剤師の姿
医師だけではなく、薬剤師も調剤薬局勤務とはまた違った適性が必要になるのですね。
井口氏:そうですね。医師にとっても病院勤務と在宅医療では環境が異なりますが、薬剤師さんにとっても必要になるスキルが変わってくると思います。 薬剤師さんが自らご自宅まで訪問して、患者さまやその家族に薬剤指導をすることが大きな違いの一つでしょうか。カウンタ越しではなく生活のある家庭に入っていき、指示通りに薬が飲めているかや、飲み残しを捨ててしまっていないかなど、会話の端々から推察する力が必要です。 薬に対する考え方はさまざまで、とにかく薬をたくさん飲みたがり不要な内服も止められない方もいれば、薬を飲むことに不信感をもっている方もいらっしゃいます。個々の解釈や状況も考慮した上で、患者さまにとって何がベストなのかを薬のプロとして考えアドバイスをしていく力が必要です。
医師と共に地域を守る、在宅支援薬局チームを作り出す
長年にわたって在宅医療に関わっていらっしゃいますが、チーム医療の一員として薬剤師の役割は大きいと思います。これまでのご経験の中で感じる"信頼できる薬剤師像"について教えてください。
井口氏:自分の行動に責任を持ち、しっかり連絡を取り合える人だといいですね。緩和ケアの状態で、患者さまが強い苦痛を感じているといった場合、すぐに薬を届けてあげなければならないこともあります。残業や、本来の薬剤師業務から少し離れたことを頼まれることもあるかもしれません。そんな時もプロとして対応してもらえたら、本当に助かります。 他にも不明点があるときに医師に連絡をしてきてくれる方は信頼できますね。どうしても薬剤師さんは「医師は忙しそうなので、電話がかけづらい」と思われるようなのですが、私はいくらでも電話をしてきてほしいと思っています。ハードルを感じることや、難しい患者さまの時ほど気軽に声をかけてきてくださいと伝えるようにしています。
ご一緒に働かれている薬剤師の岡崎先生は、以前は調剤薬局にいらしたとか。祐ホームクリニックは、どんな薬局さんと協力をして薬を患者さまに届けているのですか?
岡崎氏:どこか特定の一カ所ではなく、地域にある色々な薬局さんと手を組んで調剤を行っています。一部の場所に集中してしまうと、その薬局に大変な負荷がかかってしまいます。 現状では特に在宅支援に力を入れている薬局と、消極的な薬局が存在しています。どこかが大きなしわ寄せを抱えるのではなく、地域全ての薬局が同じくらいの負担を持ち回りできれば、みんなで幸せな気持ちで地域を支えることができるのではないでしょうか。今はそんなチームになることを着地点に見据えて、地域グループへの啓蒙活動も行っています。
在宅医療には時に「耐える力」がいる
最後に薬剤師へアドバイスをお願いします。
井口氏:在宅医療は病院で行われる治療と異なり、病気を治すことだけが目的ではありません。そのため状況によっては、教科書的に正しい方法を取ることができない場合もあります。必ずしもひとつの正解があるわけではない中で、ご本人、ご家族を支えつづけるためにチームのみんなでそれぞれの視点をもちよって話し合いながら一人ひとりにとって良い環境を作っていきます。 あいまいな状況の中、耐える力も必要となりますが、人間として大きく成長させてくれる現場でもあります。興味を持たれたら、ぜひ在宅医療の現場に来てください。
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