- 公開日:2025.01.30
薬剤師が行う在宅医療は大変?知っておきたい魅力・大変さと解決法
超高齢社会を迎え、在宅医療の重要性が高まっているなか、在宅薬剤師の需要も増加しています。しかし、在宅医療に対して「大変」「しんどい」というイメージをもつ方もいるかもしれません。本記事では、在宅医療の魅力・大変さや、在宅医療の大変さを軽減する解決法を解説します。在宅医療に興味はあるものの、一歩を踏み出せずにいる薬剤師の皆さまは、ぜひ参考にしてください。
在宅薬剤師は大変?しんどいと感じる仕事内容・理由
在宅医療業務は、患者さまに寄り添い、医療に深く携わりたいと考えている薬剤師にとってやりがいのある仕事です。しかし、その業務内容は時に負担に感じることもあるかもしれません。
患者さまの居宅や施設に訪問することで、生活環境を観察した上で、きめ細かなケアを提供できるという点で大きなやりがいがあります。一方で、移動による体力的な負担や、生活環境に介入する責任の重さを感じることもあるでしょう。
また、多職種の関係者との連携が重要となるため、薬剤師としての専門性を発揮し、チーム医療に貢献できる反面、コミュニケーションのとり方に悩む方もいるかもしれません。
さらに、外来業務との両立や訪問スケジュールの調整、緊急時の対応なども、負担に感じる要因となりえます。
在宅医療における薬剤師の役割とは?仕事内容、求められるスキルも解説
在宅医療の魅力・大変さを解説
ここでは、在宅医療の魅力や大変さを解説します。在宅医療の理解を深めるために参考にしてください。
在宅医療の魅力
患者さまに深く関われる
在宅薬剤師は、患者さまの居宅や施設に訪問して、服薬状況や副作用の確認のほか、生活状況や患者さまの思いなどのヒアリングや、生活リズムや食事内容、家族の様子などの観察も行います。その上で、患者さまや家族の状態に応じた調剤や服薬指導などを実施するため、患者さまに深く関わることができます。
また、生活状況の改善や家族のケアまで必要となる場合があり、患者さまの人生に寄り添うことができます。
やりがいがある
在宅医療業務は、患者さまの生活環境を観察し、個々の状況に応じた薬学的管理を実施できる点で大きなやりがいがあるでしょう。また、患者さまや家族との距離が近いため、家族の日常が垣間見えることがあり、直接感謝の言葉をもらえる機会も多くなります。
多職種の関係者と相談して、用法・用量の調節や処方変更などの提案や生活状況の改善を行える機会も多くありますので、薬剤師としての専門性を発揮できることへのやりがいを感じることもできます。
需要が増加している
在宅医療の重要性が高まるなか、在宅医療の経験がある薬剤師を求める企業が増加している傾向にあります。
また、在宅薬剤師には在宅業務手当や、24時間対応・緊急時対応などへの手当が考慮されることも多いです。
今後も在宅薬剤師の需要は増すと考えられるため、在宅医療での経験は将来的なキャリア形成や転職時に有利に働く可能性が高いでしょう。
在宅医療の大変さ
書類作成が多い
在宅医療では、薬学的管理指導計画書や医師・ケアマネージャーへの報告書、多職種カンファレンスの議事録など、多くの書類作成が求められます。
書類作成に時間を要することにより、訪問件数を増やせないもどかしさを感じたり、残業につながったりする場合もあります。
コミュニケーションの難易度が高い
在宅医療の現場では、患者さまや家族、多職種の関係者と円滑なコミュニケーションをとる能力が求められます。
たとえば、認知機能が低下した患者さまや終末期の患者さまとのコミュニケーション、家族間での意見の相違がある場合の調整など、難しい状況に直面することがあります。また、医師への処方提案、看護師やケアマネージャーとの情報共有など、多職種の専門性を理解した上で、薬学的観点からの意見を適切に伝える能力が求められます。
患者さまの居宅や施設などの環境特有の対応力も必要となり、経験の浅い薬剤師にとっては、コミュニケーションの難易度が高いと感じることがあるでしょう。
体力や精神力、スケジュール管理力が必要
在宅医療では、患者さまの居宅や施設への訪問による体力的・精神的負担のほか、薬局内業務との両立やスケジュール管理の難しさもあります。患者さまの病態の急変による緊急訪問など予期せぬ事態への対応や、早朝や深夜など開局時間外の対応が求められることもあり、体力や精神力、スケジュール管理力などが必要となります。
在宅医療の現場について詳しく知りたい方は、以下の薬剤師と医師による在宅医療の対談動画もぜひご覧ください。
これからの在宅医療:在宅薬剤師への期待と高まるニーズ
超高齢社会に突入した日本では、在宅医療の重要性が高まっており、在宅薬剤師の需要も増加しています。
実際に2024年度調剤報酬改定では、質の高い在宅医療を推進する方針が打ち出されました。在宅医療における薬剤師の専門的な役割への評価も拡充され、薬剤師の在宅医療業務への期待が寄せられていることが伺えます。
やむをえず看護師やケアマネジャーなどが薬の管理に関わっている現場もあるため、医療の質や患者さまの QOLの 向上のために、在宅薬剤師の需要は今後さらに増加すると予想されます。
在宅薬剤師の大変さを軽減するには?
在宅医療の大変さは、適切な環境や支援体制によって軽減できる可能性があります。ここでは、在宅医療業務の負担の軽減が期待できる職場を紹介します。
在宅医療を推進している職場
在宅医療を推進している職場では、以下のように薬剤師が効率的に質の高い在宅医療業務に取り組める環境が整っていることが多いです。
●在宅医療の研修制度
在宅医療に必要な知識や技能を学ぶ機会が豊富に設けられています。たとえば、多職種連携のためのコミュニケーション研修や、在宅での薬学的管理に関する講座などが用意されていることがあります。
●十分なサポート体制
経験豊富な先輩薬剤師による指導や定期的なケースカンファレンスが充実している傾向にあります。また、在宅医療の専門チームや24時間相談できる体制が整備されていることもあり、一人で悩まずに安心して業務に取り組むことが可能です。
●在宅医療業務の負担軽減のためのシステムやツールの導入
在宅での患者さまのケアに注力するために、業務の効率化に取り組んでいる職場も多くあります。たとえば、調剤業務の自動化や在庫管理・発注へのAIの活用など、システムやツールの導入による対物業務の効率化が進んでいます。クラウド型の電子薬歴や計画書・報告書のデータ化により、訪問先や移動時間での書類の閲覧や入力を可能としている企業もあります。
そのほかにも、企業によっては、訪問スケジュールの管理や多職種との情報共有にITツールを使用していたり、オンライン服薬指導を取り入れたりすることで、薬剤師の負担軽減に取り組んでいます。
在宅専門薬局
在宅専門薬局は、在宅医療に特化した薬局であり、薬剤師が在宅医療業務に集中できる環境が整っています。外来業務の対応は不要で、在宅医療業務を効率化するシステムやツールが充実している場合もあり、在宅での患者さまのケアに十分時間を割くことができます。在宅医療に取り組む同僚が多いため、経験の共有や相談もしやすいでしょう。
在宅薬剤師として活躍するために
在宅医療業務につらさを感じる場合は、在宅医療を行っていない薬局やドラッグストア、病院などで働くのもよいでしょう。一方で、在宅薬剤師の需要は、今後も増加することが予想されるため、在宅医療での経験やスキルは大きな強みとなります。
在宅医療にやりがいを感じていたり、挑戦したい思いがあったりする場合は、本コラムで紹介したような制度・環境が整っている職場で働くことで、大変さを軽減しつつ、在宅医療に携わることができるかもしれません。異動や転職も視野に入れて、働き方を見直してみるのがおすすめです。
今後の働き方や職場に悩んでいる場合は、転職コンサルタントに相談してみるのもよいかもしれません。周りのサポートも活用しながら、在宅医療にどのように向き合っていくか考えてみましょう。
ファルマラボ編集部
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