- 公開日:2024.04.22
薬剤師にも求められる人生会議(ACP)への参加!具体的な役割とは?
ACPという言葉を聞いたことがあるでしょうか。薬剤師には今、新たな役割が求められています。その1つが人生の最終段階に関する計画「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」への参加です。
しかし、薬剤師の中にはACPの概念は知っているものの、具体的な役割や目的は理解できていないという方もいるのではないでしょうか。
本記事を読めば、ACPを行ううえでなぜ薬剤師が必要なのかがわかるほか、患者さまの医療や生き方の選択を手助けできるようになります。ぜひ、最後まで目を通してみてください。
薬剤師も知っておきたいACPの基礎知識
ACPの概要や薬剤師が参加すべき理由を解説していきます。臨床現場において薬剤師が介入するケースは多々あるため、事前にしっかり知識を備えておく必要があります。
ACP「人生会議」とは?なぜ必要?
ACPとは、アドバンス・ケア・プランニングの略です。具体的には、患者さまの今後の状態変化に備え、医療やケアについて患者さま自身を主体に家族や医療チームと話し合いながら意思決定を支援するプロセスを指します。このプロセスを通じて、患者さまの価値観や希望に沿ったケアを提供するのが目的です。
ACPを行う際に考えるべきポイントは以下の通りです。
高齢社会において認知症やがんなどの病気にかかる人は増加し、患者さまの意思表示が難しくなるケースも増えるでしょう。そのときのためにも、薬剤師はACPが患者さまの意志を尊重するための重要な手段だとしっかり理解しておく必要があります。
「人生の会議をしよう」と難しく考える必要はありません。患者さまの本音は、本人がリラックスできる場所、心を許せる人との些細な会話の中で生まれるものです。
ACPへの参加は薬剤師にも求められる?
2018年に改訂された厚生労働省の『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン』においても、ACPの普及と実践の重要性が強調されていました。医療チームの一員として、薬剤師の参加は患者さまの医療ケアをサポートするために必要です。
たとえば、薬剤師のサポートが必要なケースは以下のとおりです。
薬剤師は専門性を発揮しACPへの積極的な参加を通じて、患者さま一人ひとりに寄り添った医療ケアの提供をします。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)―人生会議―|公益社団法人 東京都医師会
アドバンスケアプランニングと薬剤師外来におけるがん患者への継続的な薬学的支援 日本医療薬学会年会|J-STAGE
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン|厚生労働省
「人生会議」してみませんか|厚生労働省
国や薬剤師会によるACPに関する取り組み
国や薬剤師会が行っているACPに関する取り組みは数多く存在します。無料で参加できるものもあるので、ACPを手軽に学ぶいい機会でしょう。具体的な例を3つ紹介していきます。
薬剤師会によるACPの実施・理解を促す研修会の実施
各地の薬剤師会では、ACPの理解を促す研修会を定期的に実施しています。例えば、横浜市の薬剤師会では過去、次のような取り組みが行われていました。
このように薬剤師会は、気軽にACPについて学ぶ機会を数多く設けています。研修会を通じてACPを身近に感じられるメリットがあり、万が一のケースに備えて事前に考えるきっかけにもなります。
国や自治体、医療機関によるACPの講義やグループワークの実施
国や各地の自治体、医師会や病院などの医療機関による講義や講演会も定期的に開催されています。具体的な例は以下のとおりです。
オンライン講義を通じて、自宅にいながらACPの重要性を手軽に学ぶことが可能です。また、アーカイブ配信がある場合はリアルタイムで講演に行けなくても、学習ができるメリットがあります。
令和5年度「もしも手帳」を用いたACP研修会 」のご案内|一般社団法人 横浜市薬剤師会
医療介護者向け研修 アドバンス・ケア・プランニング取組推進研修|東京都保健医療局
令和5年度人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)シンポジウム開催|厚生労働省
薬剤師がACPに参加する意義や必要性
薬剤師がACPに参加する意義やメリットについて紹介します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
医療チームの一員として医薬品に関する専門知識を提供できる
薬剤師は医療チームの一員として、薬に関する専門知識を提供する責任を担っています。
患者さまに薬の効果や副作用、服用方法をわかりやすく説明適切な情報提供は、患者さまが納得し、安心して治療を継続していく上で非常に大切です。また、ACPは患者さまの家で行われるケースが多いため、より詳細に知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
在宅医療における薬剤師の役割とは?仕事内容、求められるスキルも解説
患者さまの家族のサポートも可能
患者さまだけでなく家族のケアも非常に大切です。患者さまと家族との間で意思決定の相違が生まれる可能性があるかもしれません。患者さまだけでなく、家族にもしっかり寄り添い、患者さまや家族が安心して治療を受けられるよう、薬についての説明を行いながら、コミュニケーションをとっていきましょう。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)―人生会議―|公益社団法人 東京都医師会
アドバンスケアプランニングと薬剤師外来におけるがん患者への継続的な薬学的支援 日本医療薬学会年会|J-STAGE
人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン|厚生労働省
医療介護者向け研修 アドバンス・ケア・プランニング取組推進研修|東京都保健医療局
薬剤師がACPへ参画していくためにできること
薬剤師がACPへ参画していくためのポイントを3つ紹介します。
ACPに関する研修やセミナーに参加して理解を深める
ACPに参画するためには、ACPについての知識をあらかじめしっかり備えておきましょう。自分で勉強するだけでなく、国や自治体主催のセミナーを通じてACPで薬剤師の関わり方をケーススタディーとして知っておくのも大切です。
他職種連携を重要視していく
提供する医療の質を高めるために、医師や看護師、ケアマネージャーなどの他職種とコミュニケーションを積極的に取りましょう。患者さまの本音に基づいて医療の提供をしていくためには、他職種との連携プレーは大切です。
具体的には、医師や看護師とは全ての薬についての情報共有をし、問題点があれば協力して解決します。また、ケアマネージャーとは薬の管理を患者さまの日常生活レベルに落とし込んで考え、無理なく治療が継続できるようサポートします。
このように、他職種との連携プレーにより医療ケアの質向上へとつながります。
以下の記事ではより詳細に説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
在宅医療の現状と課題から見る多職種連携の重要性
終末期医療の知識を身につける
高齢化が進んでいる日本において、ACPにおける薬剤師の活躍が特に注目されているのが終末期医療です。緩和ケアや疼痛コントロールなどの終末期医療に関する知識の取得に尽力しましょう。
また、終末期の患者さまは体力や気力の低下から、つい弱気な言葉を吐いてしまうケースは少なくありません。本心ではないことも思わず口から漏れてしまう可能性があるので、しっかりと本音を言えるような状況にしてあげることも大切です。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)―人生会議―|公益社団法人 東京都医師会
アドバンスケアプランニングと薬剤師外来におけるがん患者への継続的な薬学的支援 日本医療薬学会年会|J-STAGE
医療介護者向け研修 アドバンス・ケア・プランニング取組推進研修|東京都保健医療局 緩和ケアに関わる薬剤師の役割と有すべき能力 ファルマシア 56巻 |J-STAGE
ACPにおける薬剤師の役割を知って活躍できるようになろう
ACPについてあまり知識がなかった方も、記事を読んで理解が深まったのではないでしょうか。今後ますます薬剤師の関わりが重要なACPについて知識を深め、薬剤師の活躍の幅を広げていきましょう。
また、患者さまの気持ちは常に変化するものなので、繰り返しのACP実施が大切です。患者さまや家族とのたわいもない会話の中で本音を引き出し、生活全体をサポートすることで患者さまのQOL(生活の質)の向上に貢献しましょう。
ファルマラボ編集部
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