服薬指導に活かす医薬品情報

アダラートCR錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

適応症は「高血圧症、腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症」と「狭心症、異型狭心症」です。

一律に「血圧を下げる薬です」と説明してしまっていませんか?まずは患者情報を収集し、疾患名が確認できたらプロフィールにも記載しましょう。


Q

作用機序は?

A

本剤はジヒドロピリジン(DHP)系のCa拮抗薬です。血管平滑筋と心筋細胞膜のL型Caチャネルを阻害して、筋の機械的収縮を抑制し、それにより全身細動脈及び冠動脈を拡張させて血管抵抗の減少と血流量の増加をもたらします。

本剤のCa拮抗作用は非DHP系のジルチアゼム、ベラパミルに比べ強力です。かつ血管平滑筋に高い選択性を示し(心筋収縮力抑制作用は血管拡張作用の約1/7 倍)、心機能を抑制することなく、抗高血圧作用、抗狭心症作用が得られます。


Q

服用方法は?飲み忘れたら?

A

高血圧症の場合は20~40mg(10~20mg より投与開始、必要に応じて漸次増量)、狭心症の場合は40mg(最高60mg)、いずれも1日1回です(ただし高血圧症(腎実質性等を除く)で1日40mgで効果不十分の場合は1回40mg、1日2 回まで増量可能)。なお、カプセルは1回10mgを1日3回、L錠は高血圧1回10~20mg、狭心症1回20mgをそれぞれ1日2回です。

CR 錠は外層部と、外層部よりも薬物放出速度が速くなるよう設計された内核錠の2 つの徐放性部分から成る有核錠で、外層部は胃から小腸において極めてゆっくり、内核錠は消化管下部において比較的すみやかにニフェジピンを溶出し、1日1回の投与で安定した血中濃度が24時間持続します(CR; Controlled Release)。CR 錠の臨床的利点として、①血中濃度が穏やかな立ちあがりと持続的な推移を示す、②急速な血中濃度の上昇に基づく副作用の発現の軽減が期待される、③服薬コンプライアンスの改善が期待される、④薬物動態は食事の影響をほとんど受けず安定した効果が得られる、といったことがあげられます。

飲み忘れた場合は気づいた時点ですぐ服用してもらいますが、次の服用時点が近いときは、過量服用になるのを避ける必要があります。何時間あければよいのか明確なデータはありませんが、「半日程度」がひとつの目安となります。

Ca 拮抗薬の急な中止により症状が悪化した症例が報告されているため、医師の指示なしに服薬を中止しないよう指導してください。休薬する場合は徐々に減量します。


Q

注意すべき副作用は?

A

主な副作用は頭痛・頭重感、顔面紅潮・顔のほてり、動悸です。本剤の末梢血管拡張作用の延長上にあるものだと考えられ、継続により慣れることが多いです。割ったりかみ砕いたりすると血中濃度が高くなり、これらの副作用が発現しやすくなる恐れがあります。まれに過度の血圧低下を起こすことがあり、特に高齢者では脳梗塞等が起こる危険がありますので、低用量から開始するなど慎重な対応が求められます。


Q

相互作用は?

A

本剤は主にCYP3A4 により代謝されるため、併用注意の薬剤が多数知られています。グレープフルーツジュースとの相互作用は有名ですが、ジュースだけではなく果肉でも血中濃度の上昇が懸念されます。薬剤、食品ともに併用がないか確認し、プロフィールでしっかり管理してください。


Q

妊婦への注意点

A

催奇形性、胎児毒性が報告されており、妊娠20週未満の妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与禁忌です。妊娠20週以降の妊婦へも安全性が確立しているわけではありません。治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与します。



「カルシウムの摂取はダメなの?」

患者さまから、このような質問をされたことはないですか?「Ca拮抗薬」という呼び名から、確かにそう誤解されても不思議ではありません。実際にはCaと直接拮抗するという意味ではなく、Ca2+の細胞内への流入を阻害する薬物を指すもので、その意味では「Caイオン流入阻害剤」等の分類名が適当ではないかと考えられますが、実際には皆さまご承知のように「Ca拮抗薬」と略記されています。略記された経緯については不明ですが、標記を短縮するということで記載され始めたものが定着したのではないかと考えられているようです。


掲載日: 2023/10/26
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