服薬指導に活かす医薬品情報

ツムラ芍薬甘草湯エ キス顆粒(医療用)

Q

何のお薬?処方目的は?

A

適応症は「急激におこる筋肉のけいれんを伴う疼痛」で、証をあまり考慮せず幅広く応用できる薬剤です。シャクヤクはペオニフロリン、カンゾウはグリチルリチン酸がそれぞれ主要成分で、どちらの生薬にも鎮静・鎮痙作用、抗炎症作用があり、あわせて筋肉の緊張を緩和し痛みを取り除く鋭い作用があります。主に下肢の筋肉のけいれん性疼痛ならびに腹部疝痛を訴える場合に用います。


Q

用法・用量は?

A

「通常、1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する」とありますが、実際には頓服で処方されることが多い薬剤です。即効性が期待できる漢方製剤で、温服するとさらに即効性が促されます。味は「わずかに甘い」とありますが、シャクヤクはやや苦味を含みます。


Q

作用機序は?

A

腸内細菌の働きにより、ペオニフロリンはCa2+イオンの細胞内流入を抑制し、グリチルリチン酸はCaの存在下でホスホリパーゼA2を介してK+イオンの細胞外流出を促進し、それらの併用により細胞膜でCa2+、K+両イオンの抑制が起こり、神経筋シナプスのアセチルコリン受容体に作用して筋弛緩作用を発現すると考えられています。

骨格筋・平滑筋のいずれのけいれん性疼痛にも有効で、こむらがえりの他にも月経痛、下腹部痛、尿路結石の疼痛発作等にも広く効果を示します。もちろんいずれの場合も痛みの原因に対する治療を組み合わせて実施する必要があります


Q

注意すべき副作用/相互作用は?

A

本剤は漢方製剤の中でも特にカンゾウ(グリチルリチン酸)含有量が多いので、それに伴う注意事項が多く報告されています。重大な副作用として代表的なものが偽アルドステロン症で、低K 血症、血圧上昇、Na・体液の貯留、浮腫、体重増加等が現れることがあります。低K 血症の結果として、ミオパシー、横紋筋融解症が現れることもありますので、脱力感、筋肉痛等にも注意が必要です。原則的には投与中止により改善しますが、症状の種類や程度により適切な治療を行います。低K 血症に対しては、カリウム剤の補給等により電解質バランスの適正化を行います。

その他の重大な副作用としては、間質性肺炎や肝機能障害の他、うっ血性心不全、心室細動、心室頻拍の報告もあり、本剤の投与は治療上必要な最小限の期間にとどめることとされています。

カンゾウやグリチルリチン酸を多く含む製剤の他、低K 血症を促進する可能性があるためループ系・チアジド系利尿薬とも併用注意です。また、カンゾウは多くの漢方製剤に配合されているため、漢方製剤の併用時は重複生薬の有無を確認し、特に偽アルドステロン症等について注意深く確認してください。



各種疾患とこむらがえり

こむらがえり(限局性の有痛性筋けいれん)は、健常人でも過激な運動時、発汗・下痢等の脱水時に急性の細胞外液低下状態から起こるとされますが、頻繁に起こる場合は何らかの基礎疾患が疑われます。特に慢性肝炎・肝硬変ではこむらがえりを起こす頻度が高く、低アルブミン血症と関連があると考えられています。糖尿病性神経障害で運動神経が障害されると、やはりこむらがえりが起こりやすくなります。血液透析の患者さまでは透析後6 割以上にみられるとされ、他にも脳血管障害、腰部脊柱管狭窄症などがありますが、いずれの疾患でもこむらがえりに対して芍薬甘草湯が有効であると確認されています。

こむらがえりは夜間に起こることが多く、特に高齢者では不眠・不安の原因となりQOL が低下し、基礎疾患を増悪させる引き金にもなり得ます。上記の基礎疾患がある患者さまには「足がつることはありませんか?」と質問することで、QOL 向上の一助となれるかもしれません。


掲載日: 2024/03/21
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります