服薬指導に活かす医薬品情報

アーチスト錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

β遮断薬であり、それぞれの規格と適応症は以 下の通りです。

1.本態性高血圧症(軽症~中等症)
2.腎実質性高血圧症
3.狭心症
4.虚血性心疾患又は拡張型心筋症に基づく慢性 心不全(ACE 阻害薬、利尿薬、ジギタリス製 剤等の基礎治療を受けている患者さま)

効能・効果 1.25㎎ 2.5㎎ 10㎎ 20㎎
1
2
3
4

〇:効能あり -:効能なし


また、適応症と用法用量は以下の通りです。

効能・効果 投与方法 1回投与量
1、2 1日1回 10~20㎎
3 1日1回 20㎎
4 1日2回食後 1.25㎎、2.5㎎、
5㎎、10㎎(※)

(※)1回1.25mgから開始、忍容性をみながら1週間以上 の間隔で段階的に増量。維持量は通常1回2.5~10mg。


上記のように規格により適応症が異なり、さら に適応症により用法用量が異なります。取り扱い に誤りのないよう、しっかり把握してください。


Q

慢性心不全へのβ遮断薬の使用について

A

β遮断薬は、心臓の働きを抑制して症状を悪化させる恐れがあるとして、従来慢性心不全には禁忌とされてきました。しかし1990年代から、少量から漸増することでむしろ心臓の負担が減り心機能が回復したとの臨床試験結果が蓄積され、本剤は2002年に日本で初めてβ遮断薬として慢性心不全の適応を取得しました(なお2013年10月現在、慢性心不全への適応があるβ遮断薬は本剤とメインテート(ビソプロロール)のみです)。

慢性心不全に使用する場合は経験が十分にある医師のもとで使用するよう警告が出ています。既にACE阻害薬、利尿薬、ジギタリス製剤等の標準治療が行われており症状が安定していることが本剤使用の前提となりますので、治療歴について確認してください。高血圧治療薬ですので、低用量でも血圧が低下することがあります。また心拍数低下作用もありますので、収縮期血圧が90mmHg以上、心拍数60拍/分以上の症例が対象となります。投与開始時や増量時には、慢性心不全の悪化がないか慎重に確認します。やむを得ず中止・休薬する場合には、急に投与を中止せず、段階的に半量ずつ初期用量まで1~2週間かけて減量し、中止します。


Q

慢性心不全に対する用法用量について

A

心不全を起こした心臓では、β受容体遮断によりもたらされる作用に適応するまでに時間がかかります。初回から高用量を投与したり、増量のペースが早すぎたりすると、息切れ、呼吸困難、疲労等の心不全症状が悪化することがあるため、症状悪化や血管拡張によるめまい、ふらつき感等の発現を減らすために低用量から増量していきます。

投与回数が1日2回なのは、1回の投与量を減らして投与時の負荷を軽減し、心不全の悪化を防止するためです。国内での第Ⅰ相試験では絶食下より食後投与の方が血中濃度の立ち上がりが緩徐だったためその後の開発治験では食後投与が採用され、その結果として有効性と安全性が確認されているので1日2回食後投与となっています。


Q

服用の際の全般的な注意点は?

A

服用中、特に投与初期や増量時は、めまい、ふらつきが現れることがあるため自動車の運転等は避けてもらいます。主な副作用として、めまい、全身倦怠感、眠気、頭痛、心不全の悪化、動悸、徐脈、血圧低下、糖尿病悪化、発疹、喘息様症状、悪心などが生じることがあります。β遮断薬なので気管支喘息は禁忌です。COPDは禁忌ではありませんが、原則として使用すべきではありません。


Q

妊婦・授乳婦への投与は?

A

妊婦へは投与禁忌、授乳婦への投与は基本的には避け、やむを得ない場合は授乳を中止となっています。ヒトでのデータはありませんが、動物実験で乳汁中への移行が報告されています。授乳再開時期の明確なデータはなく、医師・薬剤師の判断となります。一般的には、半減期の4~6倍あけると薬剤の大半が消失するといわれています。


掲載日: 2024/03/14
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