- 公開日:2021.02.18
添付文書の電子化はいつから?適用後の運用と薬剤師がやるべきこと
薬剤師をはじめとする医療系職種において、医薬品添付文書(以下、添付文書)は医薬品の情報収集に欠かせない媒体のひとつです。
一方で、電子書籍の普及やタブレット端末の活用など、身の回りでペーパーレス化を実感する機会も増えてきました。そのような背景の中で、2021年8月から紙の添付文書が廃止され、電子的な方法で閲覧することが基本となります。
この記事では、添付文書が電子化されることになった背景や電子化が行われた後の閲覧方法、メリットやデメリット、薬剤師が準備すべきことなどについて解説していきます。
2021年8月、添付文書が電子化!
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の改正により、2021年8月から、これまで医薬品などの製品と一緒に同梱されていた紙の添付文書は原則として廃止され、電子的な方法で閲覧することが基本となります。今後のスケジュールや電子化が行われた背景について、詳しくみていきましょう。
今後のスケジュール
添付文書の電子化における今後のスケジュールとして、2021年8月1日より改正薬機法が施行され、製品の容器又は被包に符号を記載した製品が流通するようになります。2023年7月31日までに製造販売された製品においては、経過措置により添付文書の同梱が認められていますが、2023年8月1日以降は消費者が直接購入する製品を除いて、電子的に添付文書を提供することが義務付けられるようになります。
添付文書が電子化される背景
平成30年11月8日に行われた厚生科学審議会 医薬品医療機器制度部会における議論では、 ・添付文書は頻繁に改訂されるため、同梱されている添付文書は最新の情報ではなくなっている場合がある ・同一の医薬品等が医療機関や薬局に納品されるたびに、添付文書が一施設に多数存在し、紙資源の浪費につながっている などの問題点が指摘されました。そのため、タブレット端末などの情報通信機器の発達やインターネットの普及を背景に、添付文書の提供方法においても見直しの対象となりました。
添付文書電子化によるメリット・デメリット
添付文書が電子化されることにより、様々なメリットやデメリットが見込まれています。ここでは、具体的なメリットとデメリットについて解説していきます。
メリット① 臨床現場に最新の情報が提供される
添付文書には最新の情報や知見が反映されるため、頻繁に改定が行われています。しかし、臨床現場において使用頻度が少ない医薬品では、情報の更新が行われず誤った情報により薬物治療を受ける患者に不利益をもたらす場合があるのです。添付文書が電子化されることで、最新の情報を速やかに伝達することが可能となり、適切な薬物治療を提供できるでしょう。また、災害時などでも確実に情報提供できるなどのメリットも期待されています。
メリット② 環境負荷の軽減に貢献できる
薬局や医療機関に納入される頻度が高い医薬品において、全ての製品に紙媒体の添付文書が同梱されるのは、資源の面で問題があることが指摘されていました。添付文書が電子化されることにより、医療現場における紙資源の浪費が大幅に抑えられると考えられています。廃棄時のゴミ袋の使用量が減少することにより、地球温暖化やマイクロプラスチック問題においても、軽減効果が期待されています。
デメリット① 利用者によっては情報格差が生じる可能性がある
従来の紙媒体が電子媒体に移行することで、利用者側の情報リテラシーによっては、得られる情報に格差が生じる可能性が危惧されています。情報通信機器の使用方法やアプリケーションの操作方法について研修を実施するなど、業界全体で電子化の普及に取り組むことが求められています。薬局や医療機関において、スマートフォンやタブレット端末を用意する必要があるなど、導入時のコストも問題のひとつです。
デメリット② 医薬品の梱包方法や輸送方法を見直す必要がある
製薬会社の責務のひとつとして、医薬品の品質を確保することが求められています。従来用いられていた紙の添付文書には、医薬品の情報を伝える本来の役割の他に、医薬品を破損から防ぐ緩衝材の役割もありました。輸送時の破損を防ぐためには、紙の添付文書に代わる新たな梱包方法や輸送方法を導入しなければならないケースも想定されています。
電子化した添付文書の閲覧方法とは?
添付文書が電子化される2021年8月以降は、医薬品等の包装に符号(GS-1データバー)が印字されるようになります。この符号をスマートフォンやタブレット端末のアプリケーションなどを使って読み取り、その情報をもとにインターネットを経由して最新の添付文書にアクセスすることで、添付文書の閲覧が可能となります※。
前述の符号には、商品識別番号や製造番号(ロット番号)、有効期限などの医薬品管理上の情報が組み込まれるため、医薬品の管理にも活用できることが期待されています。
※電子的な提供方法に加えて、製造販売業者の責任において、必要に応じて卸売販売業者の協力の下、医薬品・医療機器等の初回納品時に紙媒体による提供を行うことも求められています。
薬剤師に求められるこれからの対応
近年では、オンライン服薬指導やオンライン資格確認などの導入が積極的にすすめられており、医療業界においてもICT(情報通信技術)が活用されるようになりました。薬剤師においても、従来どおり調剤や服薬指導を実践していくことに加えて、最新のシステムを利用して医療サービスを提供するための知識やスキルを身につけていかなければなりません。
2021年8月1日から2023年7月31日までの経過措置期間が設けられていますが、なるべく早いうちから電子化された添付文書に触れ、リテラシーを高めていくのが望ましいでしょう。また、添付文書の電子化を円滑にすすめるために、製造販売業者等による周知が予定されています。講演会などへの参加を通じて、適切な利用方法を身につけるようにしましょう。
添付文書の電子化に向けたスキルアップを
この記事では、添付文書が電子化されることになった背景や電子化が行われた後の閲覧方法、メリットやデメリット、薬剤師が準備すべきことなどについて解説しました。
2019年3月19日に閣議決定された薬機法の改正により、既に先駆け審査指定制度の法制化や薬剤師による服薬指導の義務化、オンライン服薬指導の導入などが行われましたが、添付文書の電子化も大きな改正内容のひとつです。
添付文書は薬剤師にとって馴染みの深いツールであるため、電子化された添付文書を適切に活用できるように、少しでも早いうちから電子機器に慣れておくことが求められます。
ファルマラボ編集部
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