- 公開日:2021.07.21
OTC医薬品医薬品販売の「2分の1ルール」撤廃でなにが変わる?薬剤師への影響について
OTC医薬品販売における「2分の1ルール」が撤廃の方向で進んでいます。このルールが撤廃されれば業界全体はもちろん、薬剤師の仕事にも少なからず影響が及ぶでしょう。ここでは「2分の1ルール」の内容や撤廃される背景、そして予測される影響などを詳しく解説します。ご自身の仕事や今後のキャリアを考えるうえで、しっかり理解しておきましょう。
OTC医薬品販売における「2分の1ルール」とは?
OTC医薬品OTC医薬品販売を行う店舗には、営業時間の半分以上、医薬品について専門知識のある薬剤師や登録販売者が常駐しなくてはいけません。保健衛生上に支障が出ないようにすることが目的で、薬剤師等は医薬品を購入しようとする方からの相談や説明、販売などに対応します。
この営業体制について1964年、厚生省は「薬局並びに店舗販売業及び配置販売業の業務を行う体制を定める省令」を示しました。これがいわゆる「2分の1ルール」です。
「2分の1ルール」廃止の背景
では、なぜこの「2分の1ルール」が廃止の方向に向かっているのでしょうか。きっかけはCVS(コンビニエンスストア)業界からあがった規制緩和の要望です。
現状、24時間営業が多数を占めるコンビニエンスストアでOTC医薬品販売を行おうとすれば、薬剤師や登録販売者を12時間以上常駐させなければいけません。これだけの人員確保は、人的コストの面を含めて非常に大きな障壁です。そのため、コンビニエンスストアでもOTC医薬品販売が行いやすいよう、ルールの緩和・撤廃が求められてきました。
「2分の1ルール」廃止による薬剤師への影響
実際に「2分の1ルール」が廃止された場合、薬剤師にとってどのような影響が考えられるのでしょうか。ここでは具体的に予測されるものを取り上げて見ていきます。
OTC医薬品販売の現場で薬剤師ニーズが減少する可能性
ルール自体が撤廃されれば、コンビニエンスストアのみならず24時間営業のドラッグストアなどでも薬剤師や登録販売者が12時間以上常駐する必要がなくなります。登録販売者などと比較して薬剤師の給与水準は高い傾向にあるため、コスト面から考えると、ルール撤廃後に薬剤師の採用が消極的になる可能性が考えられるでしょう。すでに薬剤師を常駐させている場合でも、給与の引き下げや人員削減に取り組むケースもあるかもしれません。
一方で、ルール撤廃によりコンビニエンスストアなどがOTC医薬品販売へ積極的に参入してくると考えられます。既存の業種に限らず新しい活躍の場が増える可能性もあるため、様々な業態に適応できる薬剤師がますます求められるでしょう。
医薬品販売における安全性が低下する可能性
OTC医薬品販売における薬剤師の役割には、副作用や用法容量など購入者が知っておくべき情報の提供が含まれます。薬剤師をはじめとしたOTC医薬品の専門家が不在となる時間が長くなることで、お客さまに必要な情報が行きわたりにくくなり、誤った服薬が起きてしまう可能性が高くなると考えられます。
薬剤師の業務量が増える可能性
多くのドラッグストアでは、医薬品の専門家として薬剤師のみならず登録販売者を採用し、両者で連携しながらお客さま対応にあたっています。今回のルール撤廃は登録販売者の存在意義にも大きく関わっており、企業の方針によっては、今後の店舗運営においてすべてのOTC医薬品を扱える薬剤師のみを採用すれば良いとする場合もあるのです。
登録販売者の採用が減ってしまうと、勤務時間中に医薬品を扱える人材が自分だけという状況になったり、休みをとりづらい状況になったりと業務量・業務時間ともに増加する可能性があります。
こうした影響を踏まえ、2分の1ルールの廃止に対しては現役の薬剤師や登録販売者のほか、ドラッグストアを含めた業界関係者、専門家などからも反対の声があがっています。
変化に臨機応変に対応し、求められる薬剤師を目指しましょう
2分の1ルールの概要や廃止の背景、そして廃止された場合に予測される薬剤師への影響などについて解説しました。長時間営業の店舗で医薬品を購入できることは、お客さまにとって大きなメリットになるでしょう。しかし医薬品の適切な情報が十分に提供できないなかで医薬品が販売される可能性が高まることで、誤った服薬のリスクも考えらえれます。
また、2分の1ルールが廃止されれば、薬剤師の採用ニーズや現状の働き方にも少なからず影響を及ぼすでしょう。今後業界に何が起きるのか、ここで取り上げた内容を参考に予測しながら、薬剤師としてのキャリア形成に役立ててください。
ファルマラボ編集部
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