- 公開日:2021.07.29
処方薬の配達など、広がる非対面での受け取りサービス。今後の動向を解説
新型コロナウイルス感染症の拡大や地域包括ケアシステムにおける在宅医療の普及を背景に、処方薬の非対面での受け取りサービスが広がっています。大手チェーン調剤薬局では、処方薬の配達や無人ロッカーでの受け取りなど新しいサービスを行うところも。
この記事では、処方薬の非対面での受け取りサービスについて、最新の事例や動向を紹介していきます。変化する状況のなかで薬剤師に求められることについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
非対面での処方薬受け取りが広がる背景
2019年に公布された改正医薬品医療機器等法(薬機法)により、テレビ電話などを利用して服薬指導を受けられる「オンライン服薬指導」が解禁されました。これまでは原則として薬剤師が対面で指導することが義務づけられていましたが、オンライン服薬指導の解禁により薬の受け取りまでを自宅で完結できるようになりました。
もともとは、医療体制が整っていない離島やへき地に住む患者さまや、何らかの理由により通院が困難な患者さまなどへの医療提供を目的に認められたオンライン服薬指導。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大リスク低減においてもメリットがあることから、2020年9月の施行より早く、2020年4月に時限的・特例的にオンライン診療およびオンライン服薬指導が解禁となったのです。同時に処方された医薬品の受け渡しにおいても非対面でのニーズが高まっており、保険調剤薬局チェーンなどを中心に様々なサービスがはじまっています。
配達、ロッカー...処方薬の受け取りサービスの動向
オンライン服薬指導によって、病院や薬局に行かずに自宅で医療サービスを受けられるようになりましたが、処方された医薬品の受け取り方法は課題の一つです。ここでは、現在提供されているサービスや実証実験が行われているサービスについて紹介していきます。
配達サービス
まず有人による配達サービスです。一般的な宅配業者だけでなく、食料品配送や買い物代行などを行う配送プラットフォームが利用される場合もあります。通常の宅配便と同じ仕組みで処方薬を受け取ることができるため、導入へのハードルが低いことがメリットですが、配達費用分は対面での受け取りより患者さま負担が大きくなる点や、受け渡し時に宅配業者のスタッフと患者さまが接するため、感染拡大リスクが生じる点などに注意が必要です。
宅配ロッカーでの受け取り
配達サービス以外で注目を集めている方法が「宅配ロッカー」での受け取りです。様々な企業が導入をすすめるなか、保険調剤薬局チェーン大手の日本調剤では、2020年11月より一部店舗で冷蔵機能付きの宅配ロッカーを使った処方薬受け渡しの実証実験を行っています。
使用される「スマートピックアップロッカー」は、フルタイムシステム社が開発した冷蔵機能付宅配ロッカーで、QRコードをかざすだけで処方薬を受け取ることが可能です。利用履歴データはコンピュータで管理されるため、患者さまが処方薬を受け取ったかどうかを薬局で管理できます。そのほか、コンビニ内の宅配ロッカー利用の実証実験も始まるなど多くの企業が力を入れています。
患者さまが宅配ロッカーまで出向く必要はありますが、配達費用が不要な点や非対面で受け取れる点がメリットです。
ロボットによる処方薬配送
保険調剤薬局チェーン大手のアインホールディングスでは、2021年3月よりパナソニック社と共同で小型低速ロボットを使用した処方薬配送の実証実験を行っています。神奈川県藤沢市のFujisawaサスティナブル・スマートタウンにおいて、2台の小型低速ロボットが公道を自動走行し、処方薬を患者さま宅に配送するといった内容です。屋外でロボットが処方箋医薬品を配送するのは、2021年3月時点では国内初の取り組みとして注目を集めています。
ドローンでの配達
海外では、米国を中心にドローンによる宅配サービスが話題になっています。時間短縮や人手不足を補えるため、過疎地での運用など様々なメリットが期待される一方で、商品の破損・紛失のリスクや天候によるリスク、都心部や集合住宅での受け取り方法など、様々な課題があるのが現状です。
そうしたなかでアインホールディングスでは2020年7月より、経済産業省や旭川医科大学、ANAホールディングスなどと共同で、ドローンによる処方箋医薬品配送の実証実験を行いました。医薬品や日用品などの配送体制維持が困難となりつつある地域の課題解決や、ウィズコロナ時代における感染リスク低減において今後の運用が期待されています。
広がる非対面での服薬指導や処方薬受け渡し。薬剤師に求められることは?
今後もオンライン服薬指導の普及が進むなかで、従来の対面での服薬指導とどのように対応を変えるべきなのでしょうか。薬剤師に求められることや注意すべきポイントについて解説していきます。
患者さまからの適切な情報収集
オンラインによる服薬指導では、従来の対面による服薬指導と比べて薬剤師が受け取れる情報に限りがあります。画面越しでは顔色やむくみなど患者さまの細かな変化に気づきにくいだけでなく、検査値などのデータを受け取れない場合もあるでしょう。これまで以上に患者さまからの聞き取りが重要になるため、ヒアリングに必要なコミュニケーション能力の向上が求められています。
デジタルツールの知識習得
オンライン服薬指導は、スマートフォンやタブレットなどの情報端末を用いて実施されますが、患者さまのなかには情報端末に不慣れな高齢者も多く、操作方法に不安を抱えている場合も少なくありません。トラブルの際には薬剤師側のフォローが必要になるため、医薬品の知識だけでなくデジタルツールの知識習得も不可欠となるでしょう。
電子お薬手帳の活用
オンライン服薬指導では、患者さまが現在服用している併用薬や飲み忘れによる残薬を直接確認することが難しいため、電子お薬手帳の活用が必要となります。通院日時や服薬時間を管理できる電子お薬手帳も登場しており、患者さまの利便性を向上しながら適切な服薬管理ができると期待が寄せられています。
最新の動向をチェックし、素早く対応できる薬剤師を目指して
この記事では、処方薬の配達や無人ロッカーなど、広がる非対面での受け取りサービスについて、最新の事例や動向、薬剤師に求められる役割などについて解説しました。オンライン服薬指導は今後ますますの普及が予想されますが、処方薬の受け取り方法は課題の一つです。現時点では薬局のスタッフによるお届けや、専門の配達サービスが用いられる場合が多いですが、完全非対面での受け取り方法にも期待が高まっています。
薬剤師においては、非対面であっても対面と変わらない質の服薬指導が求められています。コミュニケーション能力やデジタルに関する知識を高める努力も重要になるでしょう。
ファルマラボ編集部
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