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  • 公開日:2024.12.24

【向精神薬一覧あり】精神科や心療内科で処方される薬を薬剤師向けに解説

【向精神薬一覧あり】精神科や心療内科で処方される薬を薬剤師向けに解説

向精神薬は種類が多く、また投与制限なども設けられていることから、学び直したいと考えている薬剤師も多いのではないでしょうか。

今回は薬局薬剤師向けに、精神科や心療内科で処方される主な向精神薬の種類を一覧表で紹介し、取り扱い上の注意点について整理します。さらに、向精神薬が処方されている患者さまに対する服薬指導のポイントも紹介します。ぜひ参考にしてください。

向精神薬の基本と分類

まずは向精神薬の基本的な情報や分類などをおさらいしていきましょう。

向精神薬とは?向精神薬が持つ役割

「向精神薬」とは、中枢神経系に作用して精神活動に影響を与える薬物群全般のことを指す言葉です。

主に抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬などの総称であり、その取扱いは「麻薬及び向精神薬取締法」によって厳格に規制されています。

向精神薬の主な分類

向精神薬は第1種向精神薬第2種向精神薬第3種向精神薬の3種類に分類されます。分類されている理由は治療上の有用性と乱用の危険性によるものです。

例えば、リタリンやコンサータといったメチルフェニデート塩酸塩製剤では、医薬品のリスクや治療の有効性の観点からも、流通管理の厳しい義務が設けられています。

分類ごとの一覧表は次の章でまとめているので、参考にしてください。

知っておきたい向精神薬一覧表

令和6年12月改訂の資料である『東京都保健医療局 向精神薬取扱いの手引』を参考に向精神薬一覧表を作成しました。

ここでは日本で流通している主な向精神薬を、第1種向精神薬、第2種向精神薬、第3種向精神薬のそれぞれに分けて表を作成しています。

第1種向精神薬の一覧表

まずは第1種向精神薬の一覧表です。

一般名

代表的な商品名

投与制限

薬理作用

メチルフェニデート

リタリン、コンサータ

30日

中枢興奮

モダフィニル

モディオダール

30日

中枢興奮

モダフィニルの取り扱いは、適正使用推進策について十分に理解し、あらかじめ登録された医師・薬剤師のいる登録医療機関・薬局のもとでのみ行うとともに、それら薬局においては、調剤前に当該医師・医療機関を確認した上で調剤を行うこととされています。

第2種向精神薬の一覧表

次に下記が第2種向精神薬の一覧表です。

一般名

代表的な商品名

投与制限

薬理作用

ブプレノルフィン

レペタン、ノルスパン

坐薬、テープともに14日
注射の場合30日

鎮痛

フルニトラゼパム

サイレース

30日

中枢抑制

ペンタゾシン

ソセゴン

14日

鎮痛

ペントバルビタール

ラボナ

14日

中枢抑制

1回14日分の処方制限とされているノルスパンテープは、1日に1枚貼付のため、1回の処方量は2枚までとなります。

第3種向精神薬の一覧表

最後に第3種向精神薬の一覧表です。

一般名代表的な商品名投与制限薬理作用
アルプラゾラムソラナックス、コンスタン30日中枢抑制
エスタゾラムユーロジン30日中枢抑制
エチゾラムデパス30日中枢抑制
クアゼパムドラール30日中枢抑制
クロキサゾラムセパゾン30日中枢抑制
クロチアゼパムリーゼ30日中枢抑制
クロナゼパムランドセン、リボトリール90日抗てんかん
クロバザムマイスタン90日抗てんかん
クロラゼプ酸メンドン14日中枢抑制
クロルジアゼポキシドバランス30日中枢抑制
ジアゼパムホリゾン、セルシン90日中枢抑制
ゾピクロンアモバン30日中枢抑制
ゾルピデムマイスリー30日中枢抑制
トリアゾラムハルシオン30日中枢抑制
ニトラゼパムベンザリン、ネルボン90日中枢抑制
ハロキサゾラムソメリン30日中枢抑制
フェノバルビタールフェノバール90日中枢抑制
フルラゼパムダルメート30日中枢抑制
ブロチゾラムレンドルミン30日中枢抑制
ブロマゼパムレキソタン30日中枢抑制
ペモリンベタナミン30日中枢興奮
マジンドールサノレックス14日食欲抑制
メダゼパムレスミット30日中枢抑制
ロフラゼプ酸エチルメイラックス30日中枢抑制
ロラゼパムワイパックス30日中枢抑制
ロルメタゼパムエバミール、ロラメット30日中枢抑制

また上記表にあるフェノバルビタールには、フェノバルビタールナトリウムを有効成分とする小児用の坐剤(商品名:ルピアール、ワコビタール)も存在します。

【注意点】向精神薬の薬局での取り扱いや管理について

向精神薬の薬局での取り扱いや管理における注意点

前項では、向精神薬を第1種から第3種まで分け、一覧表として整理しました。

次に、薬局における向精神薬の取り扱いや管理に関する注意点について解説していきます。

一部の向精神薬には処方日数の制限がある

基本的に市場に登場して1年未満の新薬は、処方できる最大期間が原則14日間に限られています。しかし、麻薬や向精神薬の扱いについては、別途、麻薬及び向精神薬取締法で定められています。

向精神薬を処方できる最大期間は医薬品の種類によって異なり、14日、30日、または90日の制限が課せられています。

前項の表からもわかる通り、30日の制限とする薬は最も多く、アルプラゾラム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、ブロチゾラムなどがあります。また、90日とされているのはジアゼパム、ニトラゼパム、フェノバルビタールなどです。

なお、ここで紹介した情報は2024年12月時点でのものであるため、将来的に変更となる薬もあるかもしれません。処方日数の制限については、厚生労働省などが発信している最新の情報を確認するとよいでしょう。

向精神薬の中にもハイリスク薬が存在する

ハイリスク薬とは、使い方を誤ると健康被害をもたらす場合もある「とくに安全管理が必要な医薬品」のことです。向精神薬の中にも、ハイリスク薬が存在します。

ハイリスク薬においては、有害事象の発生を防ぐためにも薬剤師による適切な服薬指導が非常に重要です。ハイリスク薬を扱う際には、一般的に下記の点に気をつける必要があります。

  • 患者さまへの処方内容(薬の名称、服用方法と量)の確認
  • 飲み忘れ時の対応も含めて、患者さまの薬剤服用状況の確認
  • 副作用の確認と深刻な副作用が起きた場合の対応策の指導
  • 治療効果の評価(適正な投与量の確認、可能であれば検査値のチェック)
  • 処方薬や市販の薬、サプリメントや食品との相互作用のチェック
  • 向精神薬の中でも薬物相互作用のリスクが高いなど、とくに安全管理が必要なハイリスク薬については、健康被害発生時に患者自身が適切な対応がとれるような服薬指導が必要であり、留意事項をあらかじめ整理しておくとよいでしょう。

    適切な管理をする必要がある

    薬局で向精神薬を取り扱う場合は、薬局の管理者自身が向精神薬取扱責任者であるか、もしくは営業所ごとに向精神薬取扱責任者を配置するなど、向精神薬取扱責任者の配置が必須です。

    また、向精神薬は法第50条の21・施行規則第40条に基づいて、薬局内の人目のつかない場所で保管すること、鍵をかけた設備内で保管することが定められています。

    さらに、第1種向精神薬及び第2種向精神薬の場合は、廃棄する際に記録を残すことも必要です。

    向精神薬は不正使用や盗難のリスクもある薬が多いため、適切に保管するよう心がけなければなりません。向精神薬は、厳重な管理を行う必要がある薬だと日頃から認識しておきましょう。

    【重要】向精神薬を内服されている患者さまの服薬指導のポイント

    向精神薬を内服される患者さまの服薬指導のポイント

    ここまで基本の分類や一覧表など、向精神薬についての基本知識を紹介しました。

    この章では、現場で患者さまへの対応に悩んでいる薬剤師のために、向精神薬を内服されている患者さまへの服薬指導のポイントを紹介します。

    漫然的な長期処方や多剤併用がないか確認する

    向精神薬は依存や副作用のリスクが高く、近年ではその不適切な使用を是正することへの関心が高まっています。特に、睡眠薬や抗不安薬においては、多剤併用のメリットが小さいとされ、併用投与は避けるべきだと考えられています。

    しかし、2017年に報告された健康保険組合連合会による調査では、分析対象施設約24%で抗不安薬および睡眠薬を8週間以上にわたって処方していました。

    また、528.3万件のレセプトデータのうち3類以上の抗不安薬や睡眠薬を内服し続けているケースは4%に認められました。

    複数の医療機関から向精神薬が重複して処方されるケースもあり、向精神薬の漫然的な長期処方や多剤併用を未然に防ぐためには、薬剤師が必要に応じて処方医と連携することが求められます。

    残薬が家や手元に残っていないか処方歴も合わせてチェックする

    向精神薬は徐々に効果を感じにくくなったり、常用量でも依存が生じやすいことから、オーバードーズなどの乱用の恐れもある薬です。

    決まった用法を連日服用する定期処方ではなく、症状が出た時にのみ服用する頓服処方では、医薬品の服薬管理が患者さま主体となり、適切に服用されているかどうかの確認が難しくなります。薬剤師としては、患者さまの残薬状況などを評価することによって、不適切な仕方で医薬品が服用されていないかどうか、丁寧に確認する必要があります。

    また、医療機関を定期的に受診できない場合に備えて、向精神薬(とくに睡眠導入剤)を自宅に残している患者さまもいるのではないでしょうか。「予備の薬をもっておくことで安心する」という患者さまの心理は良く分かります。

    しかし、自宅に多くの薬を保管しておくことは、重複して薬を飲むことにもつながります。薬の働きが強く出たり、副作用が強く出る可能性もあり、その意味でも患者さまの残薬状況を確認することは大切です。

    複数の医療機関や診療科からの処方内容も確認して飲み合わせをチェックする

    向精神薬を内服している方の中には高齢の方も多く、ほかの疾患で複数の病院に受診しているケースも少なくありません。このような場合、ほかの向精神薬を処方されていることもあるため、併用薬の状況には注意が必要です。診察時に併用薬の情報を医師に伝えていない患者さまもいるため、服薬指導の際には服薬している全ての医薬品を確認し、重複投与を防ぐように心がけましょう。

    ただし、向精神薬を併用することの是非については、薬剤師だけで判断することが難しいケースも多々あります。例えば、介護施設に入居している患者さまの薬において、精神科でフェノバルビタールが処方され、内科でクエチアピンが処方されていたとしましょう。

    クエチアピンとフェノバルビタールは、病状によっては併用することもあり得ます。しかし、クエチアピンはバルビツール酸誘導体等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者さまには禁忌となっています。このようなケースでは併用の是非について薬剤師だけで判断することは難しく、処方医と連携することが求められます。

    向精神薬の情報を学んで知識をアップデートしよう

    本記事では、向精神薬の分類や役割などの基本情報、第1種から第3種までの向精神薬の一覧表、処方や管理における注意点と服薬指導のポイントを紹介しました。

    本記事は2024年12月時点の情報を参考に掲載したものです。投与制限に関する法規制は社会情勢や新薬の登場によっても変化します。最新の情報に関心をもち、常に知識をアップデートするように心がけましょう。

    向精神薬の調剤では、患者さまとの関わり方や、服薬に関わる注意点の伝え方に悩む薬剤師も多いでしょう。患者さまが安心・安全に使用できるように、ここで紹介した服薬指導のポイントも参考にしてみてください。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2024/12/24

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