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  • 公開日:2023.05.22

ステロイド外用剤の服薬指導!強さの比較一覧や副作用について解説

ステロイド外用剤の服薬指導!強さの比較一覧や副作用について解説

ステロイド外用剤とは、薬効成分としてステロイド(副腎皮質ホルモン)を配合した炎症性皮膚疾患やアトピー性皮膚炎など、多くの皮膚疾患の治療によく用いられる塗り薬(軟膏、クリーム、ローション、ジェル)のことをいいます。

しかし、経口ステロイドの副作用とステロイド外用剤の副作用を混同するなどして、いまだにステロイド外用剤の使用に不安を感じる方も少なくありません。

この記事では、【ステロイド外用剤の服薬指導をする際のポイント/よく聞かれる質問と回答】など、安全性の高いステロイド外用剤の服薬指導のコツを解説します。

ステロイド外用剤の強さ【一覧表】

まずは、ステロイド外用剤の服薬指導をする際の基本である、ステロイド外用剤の強さを解説します。ステロイド外用剤にはさまざまな種類があり、効果の強さによって以下のⅠ~Ⅴの5つのランクに分けられます。

<ステロイド外用剤のランク>

ストロンゲスト(Ⅰ群) ・クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート ®)
・ジフロラゾン酢酸エステル(ダイアコート ®)
ベリーストロング(Ⅱ群) ・モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ ®)
・ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート ®)
・フルオシノニド(トプシム ®)
・ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロン DP®)
・ジフルプレドナート(マイザー ®)
・ジフルコルトロン吉草酸エステル(テクスメテン ®,ネリゾナ ®)
ストロング(Ⅲ群) ・デキサメタゾンプロピオン酸エステル(メサデルム ®)
・デキサメタゾン吉草酸エステル(ボアラ ®,ザルックス ®)
・ベタメタゾン吉草酸エステル(ベトネベート ®,リンデロン V®)
・フルオシノロンアセトニド(フルコート ®)
ミディアム(Ⅳ群) ・プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(リドメックス ®)
・アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ ®)
・クロベタゾン酪酸エステル(キンダベート ®)
・ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド ®)
・デキサメタゾン(グリメサゾン ®,オイラゾン ®)
ウィーク(Ⅴ群) ・プレドニゾロン(プレドニゾロン ®)

ステロイド外用剤は患者さまの年齢や、疾患の種類・程度、症状が出ている部位・範囲に応じて適切なランクのものが選択されます。皮膚の炎症がとくに強い場合や、慢性化していると医師が判断した場合は、より効果が強いステロイド外用剤を使用します。

ただし、皮膚のなかでも吸収しやすい部位に強いステロイドを使い続けると副作用が出やすくなる可能性があるため、体の部位によってステロイドを使い分ける必要があります。つまり、部位や皮疹の改善に合わせて、ステロイドのランクを下げることも重要です。

「とても強い(very strong)」と「最も強い(strongest)」に分類されるステロイド外用薬は作用が強いため、使用する際は医師や薬剤師など専門家の管理が必要です。

そのため、これらのランクのステロイド外用剤は医療用医薬品のみの取り扱いであり、ドラッグストアでは購入できません。

ステロイド外用剤の副作用とは

認知症患者の服薬管理は周囲の方からの協力も重要

ステロイドの局所的副作用としては、皮膚感染症などの免疫抑制作用や、細胞増殖、間質産生抑制作用やホルモン作用があげられます。

ただし、これらの局所的な副作用の多くは、一般的にステロイド外用剤の中止または適切な処置により回復します。ただし、皮膚線条(皮膚にすじが入った状態)は元に戻らないとされています。

また、ステロイド外用剤は内服のステロイド薬とは異なり、一般的な使い方では、全身性の副作用(糖尿病、骨粗鬆症、血栓・塞栓、緑内障、感染誘発・憎悪など)はめったに起こらないとされています。実際、ベリーストロング(II群)のストロイド外用剤を1日5~10g程度(初期外用量)で開始し、症状によって適宜増減しながら3ヶ月継続して使用した場合、一過性で可逆的な副腎機能の抑制が生じることはありますが、不可逆的な全身性の副作用は生じないとされています。つまり、日常診療における広範囲の皮疹に、ステロイド外用剤の使用量(体重10kgあたり1カ月15g未満)であれば、過度な心配はいりません

しかしながら、長期で大量に治療に使用したり、バリア機能の低下した病変部位(ステロイドの吸収が高まっている状態)に使用したりする場合には、全身性の副作用にも注意することが必要でしょう。

さらに、目やその周囲に使用するステロイドの点眼薬や、眼軟膏によって眼圧上昇や緑内障の発症リスクが高まることが知られています。ランクの高いステロイド、塗布回数が多い、塗布期間が長いなどのケースでは要注意です。

ステロイド外用剤の服薬指導で確認するポイント

服薬指導の際に注意すべきポイントは、ステロイド外用剤の使用部位や使用回数、使用量や使用期間について患者さまが理解しているか具体的に確認し、必要に応じて情報提供することです。

これらの確認ができていないと、患者さまが副作用を心配して必要な量を塗布できていなかったり、自己判断で中止してしまったりすることで、十分な効果が得られないどころか悪化してしまう恐れもあります。

使用部位の確認

皮膚の症状や使用する部位を患者さまと確認しましょう。同じ症状が出たとしても、安易に別の部位に使用しないように指導することも大切です。

ステロイド使用部位別の経皮吸収率

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ステロイド外用剤の皮膚への吸収率は、体の部位によって異なります。具体的には、腕を1とすると、陰部で42倍、顎で13倍、ひたいで6倍、頭皮で3.5倍、背中で1.7倍、足の裏では0.14倍です

このように、体の部位によっては100倍以上の吸収率の差があるため、副作用を防いで治療効果を高めるためには適切な使い分けが重要です。つまり、吸収率の高い部位ではランクの低いステロイドが、吸収率の低い部位ではランクの高いステロイドが使用されます。たとえば、顔は薬剤吸収率が高いため、原則として、ミディアムクラス以下のステロイド外用剤を使用します。

使用回数の確認

ステロイド外用剤の使用回数の目安は、原則1日2回(朝、夕:入浴後)です。症状が軽快した場合は、1日1回の使用に減らす場合もあるので、医師の指示を確認しましょう。

症状が改善傾向にあったとしても、中断すると症状が悪化する可能性があるため、自己判断で急にやめないように指導することが大切です。

使用量の確認

日本皮膚科学会診療ガイドラインによると、ステロイド外用剤は皮膚がべとつくくらいの十分な量を使用することが重要です。塗り薬の使用量の目安として、「フィンガーチップユニット(FTU)」という考え方があります。

FTUは、直径5mmの軟膏チューブ(10gのチューブ)によって人差し指の第一関節から指先まで押し出した量で、約0.5gに相当します(ローションの場合:1円玉大くらいの大きさの量)。この量で、大人の手のひら2枚分の広さに塗布できるといわれています。

患者さまのなかには、ステロイド外用剤の副作用を心配して少量しか塗らない方もいるかもしれません。しかし、適切な使用量を守らないと治療効果が得られずに症状が長引く可能性があります。

とくにステロイド外用剤を初めて使用する患者さまには、FTUといった目安を用いて適切な使用量を具体的に説明することが大切です。

使用期間に関する指導

処方箋に外用剤の使用期間が明記されていることは、ほとんどありません。そのため、医師からどんな指示があったのかを患者さまに確認し、具体的に指示がない場合は次の受診予定日まではしっかり続けるように指導しましょう。

また、ステロイド外用剤を途中でやめると症状が悪化する可能性があるため、医師の判断なしで自己中止しないように伝えることも大切です。

【Q&A】よく聞かれる質問について

ここでは、ステロイド外用剤に関してよく聞かれる質問についての回答例をご紹介します。

※使用する薬剤は患者さまごとに異なるため、あくまで一例として参考にしてください

Q.ステロイド外用剤を長期使用するとどうなりますか?

ステロイド外用剤を長期間使用すると、免疫抑制作用などによって皮膚の感染症(真菌症など)が起きやすくなる可能性があります。とくにランクの高いステロイドを長期間使用している場合は注意が必要です。

ただし、決められた用法用量や使用期間を守っていれば基本的に副作用に対する過度な心配は必要ありません

Q.塗ると肌が黒くなるって本当ですか?

ステロイド外用剤の使用によって皮膚が黒くなることはありません。ステロイド外用剤の使用中に「肌が黒くなった」と感じる理由には、適切な治療をしないことによる炎症の慢性化や、炎症による色素沈着などがあげられます。

Q.軟膏・クリーム・ローションはどのように使い分けるのですか?

軟膏・クリーム・ローションは一般的に、伸びやすさや刺激性の違いで使い分けられます。たとえば、クリームやローションは軟膏と比べて伸びがいいため、広範囲に塗り広げる際に適しているのです。また、ローションはベタつかないので、頭皮に塗る場合によく使われます。

皮膚への刺激性の強さは、一般的に「軟膏<クリーム<ローション」です。クリームやローションは刺激性が強いため、ただれている部位や傷がある部位などには基本的に使用されません。

正しい服薬指導で患者さまの不安を取り除こう

ステロイド外用剤は主に炎症性疾患の治療に使用される薬で、効果の強さによって5つのランクに分類されます。

服薬指導の際には、副作用リスクを回避して治療効果を最大限にするために、使用部位や使用回数、使用量や使用期間についてしっかり理解しているかを患者さまに具体的に確認し、必要に応じて情報提供することが大切です。

経口ステロイドとステロイド外用剤の副作用が混同し、過度に心配されている患者さまも多いため、患者さまの疑問や不安を解消し、適切な治療ができるように指導しましょう。

前原雅樹さんの写真

監修者:前原雅樹(まえはら・まさき)さん

有限会社杉山薬局小郡店(福岡県小郡市)勤務。主に精神科医療に従事し、服薬ノンアドヒアランス、有害事象、多剤併用(ポリファーマシー)などの問題に積極的に介入している。

2019年、英国グラスゴー大学大学院臨床薬理学コースに留学(翌年、同コース卒業)。日本病院薬剤師会精神科専門薬剤師、日本精神薬学会認定薬剤師。

そのほか、大学非常勤講師の兼任、書籍(服薬指導のツボ 虎の巻、薬の相互作用としくみ[日経BP社])や連載雑誌(日経DIプレミアム)の共同執筆に加え、調剤薬局における臨床研究、学会発表、学術論文の発表など幅広く活動している。

記事掲載日: 2023/05/22

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