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  • 公開日:2023.07.31

リンデロンは市販でも買える?病院で処方される薬との違い

リンデロンは市販でも買える?病院で処方される薬との違い

夏場に増えやすい虫刺されやかぶれ。調剤薬局やドラッグストアでも、「この薬ある?」と去年の塗り薬をもってきて質問されることが多いのではないでしょうか。

塗り薬のなかでも、リンデロンは患者さまへの認知度が高く、需要もあるステロイド薬です。この記事では、【医療用のリンデロンと市販用のリンデロンの違い/よく聞かれる質問と回答】などについて解説していきます。

リンデロンは市販されているのか

市販されているリンデロンには、指定第2類医薬品の「リンデロンVs(ベタメタゾン吉草酸エステル)」があげられます。リンデロンVsは、リンデロンVのスイッチOTC。ステロイドのランクはストロング(Ⅲ群)です。ステロイドの抗炎症効果によって、あせもや虫刺され、手湿疹や乾燥によるかゆみ、しもやけなどに効果を発揮します。

リンデロンVsの剤型には軟膏、クリーム、ローションの3種類があるため、それぞれの特徴や使い分けについても知っておきましょう

 

<リンデロンVsの剤型ごとの特徴>

リンデロンVs(ベタメタゾン吉草酸エステル)の剤型 特徴
軟膏 ベタつきはあるものの、傷口にしみにくく、患部を保護する力に長けている。乾燥しやすい時期や、低刺激のものを求めている方にもおすすめ。
クリーム 軟膏に比べてベタつきが少ない。伸びがよいため、広範囲への塗布に適している。カサカサした患部に使用しやすい。
ローション さらっとした使用感。軟膏やクリームが塗りにくい頭皮といった、毛が生えている部分への使用に向いている。

医療用のリンデロンの種類

医療用のリンデロンの種類

医療用のリンデロンには、以下の4種類があります。

  • リンデロンDP(軟膏、クリーム、ゾル)
  • リンデロンVG(軟膏、クリーム、ローション)
  • リンデロンV(軟膏、クリーム、ローション)
  • 眼・耳科用リンデロンA軟膏
    点眼・点鼻用リンデロンA液

これらは「ステロイドを含む」という点では共通しているものの、ステロイドのランクや、ステロイド以外の成分などによって、それぞれ効果や使用部位が異なります

医療用と市販用のリンデロンの違い

医療用と市販用のリンデロンは、主に以下の点で異なります。

  • ステロイドの強さ
  • 使用する部位
  • 使用期間
  • 抗菌薬の有無

ここでは、それぞれの項目について詳しく解説します。

ステロイドの強さ

ステロイド外用剤は、効果の強さによってⅠ~Ⅴの5つのランクに分けられます。

医療用と市販用のリンデロンのステロイドのランクは以下のとおりです。

 

<リンデロンに含まれるステロイドのランク>

ステロイドのランク 医療用 市販用
ストロンゲスト(Ⅰ群) なし なし
ベリーストロング(Ⅱ群) リンデロンDP(ベタメタゾンジプロピオン酸エステル) なし
ストロング(Ⅲ群)

リンデロンV(ベタメタゾン吉草酸エステル)

リンデロンVG(ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩)

リンデロンVs(ベタメタゾン吉草酸エステル配合)
ミディアム(Ⅳ群) なし なし
ウィーク相当(Ⅴ群) リンデロンA(ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム・フラジオマイシン硫酸塩) なし

医療用にはベリーストロング(Ⅱ群)、ストロング(Ⅲ群)、ウィーク(Ⅴ群)の3種類がありますが、市販用の強さはストロング(Ⅲ群)のみであり、「ベリーストロング(Ⅱ群)」や「ストロンゲスト(Ⅰ群)」といったランクのものはありません。

使用する部位

市販用のリンデロンは、主に虫刺されや湿疹、乾燥性湿疹によるかゆみがある部分などに用います。皮膚が薄い部位や化膿がある部位、顔面への広範囲な使用などはできないので注意が必要です。

医療用のリンデロンの使用部位は、以下の表のとおりです。

 

<医療用のリンデロンのステロイドランクと使用するケース>

薬品名 ステロイドのランク 使用するケース
リンデロンDP ベリーストロング(Ⅱ群) ・急性、進行性の高度な炎症病変がある場合
・苔癬化、紅斑、多数の搔破痕など難治性病変主体の場合
※顔面、頸、陰部、間擦部位への使用は十分な注意をする。
リンデロンVG ストロング(Ⅲ群) ・中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹などの炎症所見、搔破痕などを主体とする場合
リンデロンV ・皮膚感染を伴う湿疹・皮膚炎には使用しないことを原則とする
※やむを得ず使用する必要がある場合には、あらかじめ適切な抗菌剤(全身適用)、抗真菌剤による治療を行うか、又はこれらとの併用を考慮すること
リンデロンA ウィーク相当(Ⅴ群) ・外・前眼部の細菌感染を伴う炎症性疾患・外耳の湿疹・皮膚炎等
※2歳未満の場合には慎重に使用すること

ステロイド外用剤は体の部位によって吸収率が異なるため、使用する際は塗布部位とステロイド外用剤のランクを考慮すべきです。具体的な吸収率の差は、腕を1とすると、陰部で42倍、頬で13倍、ひたいで6.5倍、頭皮で3.5倍、背中で1.7倍、足の裏では0.14倍です。

皮膚が薄い顔や首は薬の吸収率が高く、強いステロイドを使い続けると副作用が出やすくなる可能性があるため、ランクの低いステロイドを使用しましょう

使用期間

医療用のリンデロンは処方医からの指示に従って使用し、自己判断で中止しないことが大切です。市販薬を5~6日間使用しても症状の改善が見られない場合は、薬が症状に合っていない可能性があります。そのような場合は使用を中止し、速やかに皮膚科を受診するように指導しましょう。

抗菌薬の有無

医療用のリンデロンVG(ベタメタゾン+ゲンタマイシン)とリンデロンA(ベタメタゾン+フラジオマイシン)にはそれぞれ抗菌薬が含まれる一方で、市販薬のリンデロンVs(ベタメタゾン単体)には抗菌薬が含まれていません。

リンデロンの副作用や使用上の注意点

リンデロンの副作用や使用上の注意点

ここでは、リンデロンのベースであるステロイド剤の副作用や、使用するうえでの注意点について詳しく見ていきましょう。

副作用

全身性の副作用はほとんどなく、局所的な副作用としては、多毛やステロイドざ瘡(にきび)、皮膚委縮、皮膚感染症、緑内障などがあげられます。ただし、多くの局所的な副作用は、薬剤の中止または適切な処置により回復します。決められた用法用量や使用期間を守っていれば、基本的に副作用に対する過度な心配は必要ありません。

使用上の注意点

症状が出ている範囲にのみ使用しましょう。また、市販用のリンデロンには抗菌薬が含まれないため、化膿を伴う皮膚炎には使用できません。

【Q&A】よく聞かれる質問について

ここでは、よく聞かれる質問について回答例をご紹介します。

  • リンデロンVGとリンデロンVsの違いはなに?
  • 市販のリンデロンは陰部に使える?
  • リンデロンVGは市販でも買える?

※服用できる薬剤は患者さまごとに異なるため、あくまで一例として参考にしてください。

Q.リンデロンVGとリンデロンVsの違いはなに?

これら2つの薬の違いは、抗菌薬が含まれるかどうかです。

どちらも「ベタメタゾン吉草酸エステル」をベースにしていますが、リンデロンVGには抗菌薬である「ゲンタマイシン硫酸塩」が配合されています。そのため、化膿を伴う皮膚炎には主にリンデロンVGを使用します。

Q.市販のリンデロンは陰部に使える?

市販のリンデロンの陰部への使用は、あまり推奨することができません。陰部は皮膚が薄くて薬剤の吸収率が高く、副作用が出やすい部位であるためです。

陰部へ使用したい場合は医療機関へ受診し、症状に合った薬剤を処方してもらいましょう。

Q.リンデロンVGは市販でも買える?

リンデロンVG(ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩)は市販されていないため、原則処方箋なしで購入することはできません

似たような成分の市販薬はありますが、リンデロンVGと同等の効果が得られない可能性があるので注意が必要です。

リンデロンVGと成分が似ている市販薬としては、ベトネベートN軟膏/ベトネベートNクリーム(ベタメタゾン吉草酸エステル・フラジオマイシン硫酸塩)やフルコートF(フルオシノロンアセトニド・フラジオマイシン硫酸塩)などがあげられます。

患者さまに安心してリンデロンを使ってもらおう

この記事では、医療用と市販用のリンデロンの違いや、適切な使用方法などについて解説してきました。

夏になると、虫刺されやかぶれなどの症状で市販のリンデロンを求める患者さまも増えるでしょう。ドラッグストアや薬局で購入できるリンデロンは「リンデロンVs」であり、「リンデロンVG」と同成分の市販薬は存在しないので注意しましょう。

医療用と市販用のリンデロンでは、ステロイドの強さや使用できる部位、使用期間、抗菌薬の有無などが異なります。患者さまに安心して一般用医薬品を使っていただけるように、医療用と市販用のリンデロンの違いを理解しておきましょう。

馬場の写真

監修者:馬場 布由佳(ばば・ふゆか)さん

現役の薬剤師として医療現場に携わる顔を持つ一方、医療情報を専門に扱うライターとして独立。執筆のほか、ディレクションや医療系メディア運用のサポートに従事。メディカルライターチームの運営を行なっており、医療,健康,介護,美容などのメディア記事執筆をはじめ、セミナーの記事化や資料制作なども提案から執筆、運用まで提供している。

調剤薬局のほかドラッグストア勤務経験もあり、健康知識のほか、一般用医薬品についての執筆も得意とする。

記事掲載日: 2023/07/31

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