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  • 公開日:2023.08.10

【薬剤師向け】糖尿病の新しい治療薬 「マンジャロ皮下注」とは?

【薬剤師向け】糖尿病の新しい治療薬 「マンジャロ皮下注」とは?

マンジャロ皮下注は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する新たな作用機序の糖尿病薬で、田辺三菱製薬と日本イーライリリーが2023年4月に発売開始しました。

1回使い切りの注入器で週1回の皮下注射で済み、患者さまが用量を設定したり、注射針を扱ったりする必要がありません。

今回は、マンジャロ皮下注がどのような薬なのかを解説し、効能効果、副作用などの注意点をご紹介します。

マンジャロ皮下注とは

マンジャロ皮下注(一般名:チルゼパチド)とは、週1回皮下注射する2型糖尿病の治療薬です。

経口血糖降下薬を使用しても血糖値が下がらないケースでは経口薬の増量や併用とともに注射剤の使用が検討されます。

マンジャロ皮下注の効果と作用機序

マンジャロ皮下注には、血糖降下作用と体重減少作用があります。

マンジャロ皮下注は、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の2つの受容体に作用する薬で、とくにGIP受容体に対する親和性のほうが強いといわれています。

従来のインスリン製剤との違いとは

インスリン製剤は、血糖降下作用のあるインスリンそのものを補充する一方で、マンジャロ皮下注は、GIPとGLP-1の2つの受容体に作用して膵臓からのインスリン分泌を促進します。

また、マンジャロ皮下注は血糖値が高くなったときにのみインスリンの分泌を促すので、インスリン製剤と比較して低血糖の副作用を起こしにくいといわれています。

さらに、インスリン製剤は毎日かかさず打つ必要がありますが、マンジャロ皮下注は週1回の投与で済みます。

マンジャロ皮下注の特徴

ここでは、GIP/GLP-1受容体作動薬について解説し、1回使い切りの注入器で週1回皮下注射できる利点を説明します。

GIP/GLP-1受容体作動薬とは何か

GIP/GLP-1受容体作動薬とは、GIPとGLP-1の両インクレチンの作用を単一分子に統合した作動薬です。

GIPは小腸の上部に存在するK細胞、GLP-1は小腸の下部や大腸の上部に存在するL細胞から分泌されるホルモンであり、食事をすると腸壁から放出され、膵臓のインスリン分泌を促進することで血糖値を調節します。マンジャロ皮下注は、単一分子でGIP/GLP-1受容体のどちらにも作用する新しい作用機序の薬です。

GIPにはインスリンの分泌だけでなく、「レプチン」の分泌を促進する作用もあり、摂食量低下と脂肪利用増加を導く働きがあります。そのため、マンジャロ皮下注は体重減少効果が高いといわれています。

1回使い切りの注入器での週1回皮下注射の利点

マンジャロ皮下注は1回の使い切りなので、注射内の薬液の量を調整する必要がありません。また、空打ちも不要です。

専用注入器の「アテオス」には、あらかじめ注射針が取り付けられているので、注射針を扱う必要もなく、従来のインスリン注射と比べて操作が簡単です。

投与も週1回で済むため、患者さまの負担を軽減できます。

マンジャロ皮下注の使い方とは

マンジャロ皮下注の使い方とは

ここでは、マンジャロ皮下注の用法用量の設定方法や、注射器の使用方法などについて解説します。

用法用量の設定方法

週1回2.5mgから開始し、4週間投与したあと、週1回5mgに増量します。

効果が不十分な場合は、維持用量の週1回5mgを4週間以上投与したあと、4週間以上の間隔で2.5mgずつ増量可能です。ただし、最大用量は週1回15mgまでです。

注射器の使用方法と保管方法

マンジャロ皮下注の使い方は以下の通りです。

  1. 1.灰色のキャップを取りはずす
  2. 2.透明な底面を皮膚にあて、緑色の目印を回してロックを解除する
  3. 3.皮膚に押し当てながら注入ボタンを押し、そのまま待つ
  4. 4.1回目のカチッという音で注射が開始し、2回目のカチッという音がしたら注射完了です。
  5. 5.保管する際は、凍結させずに、冷蔵庫(2~8℃)で保管しましょう。冷蔵庫が使用できない場合は、直射日光を避けた室温(30℃以下)で21日間まで保管可能です。

皮下注射の適切な部位

マンジャロ皮下注を自分で投与する場合は、おなかや太ももを消毒用アルコール綿で消毒してから打ちましょう。

操作方法の訓練を受けた別の方に投与してもらう場合は、腕(上腕部)でも問題ありません。

同じ体の部位でも、毎回少しずらした場所に投与します。同じ場所に注射をし続けると、皮膚が固くなってしまうためです。

マンジャロ皮下注の副作用と使用上の注意点

マンジャロ皮下注の副作用と使用上の注意点

ここでは、マンジャロ皮下注の副作用と使用上の注意点、禁忌について解説します。

副作用

一般的な副作用としては、5%以上の患者さまで、悪心や嘔吐、腹痛、下痢、便秘などの消化器症状が報告されています。

これらの症状の対処法としては、制吐剤の使用や、油っぽい食事を避ける、医師と相談してマンジャロの使用量を減らすなどの対応が考えられます。

重大な副作用としては、低血糖(頻度不明)や急性膵炎(0.1%未満)、胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸(いずれも頻度不明)があげられます。

低血糖が見られた場合は、糖質を含む食品を摂取するなどの適切な処置を行うことが大切です。α-グルコシダーゼ阻害剤との併用時は、ブドウ糖を投与するように患者さまに指導しましょう。

禁忌について

マンジャロ皮下注は、以下のような方には使用しないこととされています。

  • マンジャロ皮下注の成分に対して過敏症の既往歴のある方
  • 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者さま
  • 重症感染症、手術等の緊急の場合
  • 高血糖による昏睡状態が見られる場合や、手術などの緊急の場合はインスリン製剤による速やかな治療が必須となるので、マンジャロ皮下注を投与すべきでないとされています。

    患者さまからのよくある質問を解説

    ここでは、マンジャロ皮下注に関してよくある質問と回答を記載します。

    マンジャロ皮下注で痩せるって本当ですか?

    マンジャロ皮下注には体重増加抑制作用が期待されているものの、現時点では抗肥満薬としての認可はされていません。

    美容・痩身・ダイエットなどを目的とした使用は適応外のため、日本糖尿病学会より注意喚起も出されています。

    糖尿病治療薬のトルリシティとはどう違うのですか?

    糖尿病に対する週1回の皮下注射製剤として、GLP-1受容体作動薬のトルリシティ(一般名:デュラグルチド)がすでに存在しています。

    マンジャロは、トルリシティよりも高い血糖改善作用体重減少効果が見込める薬です。

    マンジャロはGLP-1受容体に加えてGIP受容体にも作用するため、GLP-1受容体の単剤投与よりも大きな血糖改善作用と体重減少効果が期待できるのです。

    そのため、トルリシティのようなGLP-1受容体作動薬で血糖コントロールが上手くいかない方や、思うように体重減少が進まなかった方は、医師と相談してマンジャロ皮下注に切り替える方法もあります。

    カチッという音が聞こえず、注射できたかわからない場合の確かめ方はありますか?

    マンジャロ皮下注を自己注射する際に、カチッという音が聞こえない場合は、注入器の透明な部分を確認しましょう。灰色のゴムピストンが見えていれば、注射が完了しています。

    マンジャロ皮下注の使い方を正しく患者さまに伝えよう

    マンジャロ皮下注とは、GIPとGLP-1の2つの受容体に作用する世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。

    週1回の投与で済むことから、患者さまの負担軽減効果も期待されています。

    マンジャロ皮下注の特徴や使い方、注意点を知り、患者さまに正しく指導できるようになりましょう。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004 年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012 年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品 どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学: 存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2023/08/10

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