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  • 公開日:2023.07.24

子どもの中耳炎と抗菌薬とは?薬の種類や飲み方の注意点も解説

子どもの中耳炎と抗菌薬とは?薬の種類や飲み方の注意点も解説

子どもの中耳炎は治療をしてもすぐに治らないケースも多く、抗菌薬が途中で変わることも多々あります。

また、治療を終えたと思ったら、症状が改善せず、別の抗菌薬が処方されることもあり、「こんなに抗菌薬を飲んでも大丈夫でしょうか」と心配される親御さんも多いでしょう。

この記事では、子どもの急性中耳炎に処方される抗菌薬の種類や服用の注意点について解説します。

中耳炎の種類とそれぞれの症状

中耳炎とは中耳(鼓膜の内側)に炎症が起きている状態であり、耳痛、発熱、耳漏(耳だれ)、耳閉感(耳がふさがったような感じ)、難聴などの症状を伴うことがあります。

ここでは、急性中耳炎と滲出性中耳炎の症状について解説します。

急性中耳炎

急性中耳炎とは、鼓膜の奥にある中耳に炎症が起こる疾患で、多くの場合は鼻水や発熱などのかぜ症状に続いて生じます。

急性中耳炎は中耳の疾患のなかで発症頻度が高く、小児に多いのが特徴で、発熱、耳痛、耳漏などを伴います。とくに乳幼児では、夜泣き、むずかる(機嫌を損ねてぐずる)などの症状や、38℃以上の発熱を呈する場合もあります。

滲出性中耳炎

滲出(しんしゅつ)性中耳炎とは、中耳に液体(貯留液)がたまることで鼓膜が振動しにくくなり、難聴や耳閉感といった症状があらわれます。とくに、幼児では、急性中耳炎の後、あるいは慢性副鼻腔炎 (蓄膿)に伴って発症し易いといわれています。(医療法人かくいわ会 岩野耳鼻咽喉科サージセンター『』』より)

滲出性中耳炎の主な原因は、急性中耳炎での炎症後に中耳の圧力が低下し、滲出液がたまりやすくなるためです。実際、乳児の滲出性中耳炎のおよそ半数は、急性中耳炎の発症後に続いて起こることが知られています。

滲出性中耳炎は多くの場合で自然治癒するため、鼓膜に異常がなければ、発症から3ヶ月間は経過観察が推奨されています。後述する急性中耳炎の治療とは異なり、抗菌薬の使用はあまり推奨されていません。但し、中耳内の液体を出しやすくするカルボシステイン(粘液溶解薬)が使用されたり、副鼻腔炎を併発している場合にはマクロライド系の抗菌薬が使われたりすることもあります。

薬物治療で症状がなかなか改善しない場合は、中耳内の滲出液を排出するために鼓膜を切開する場合もあります。

中耳炎の原因

中耳炎の原因

中耳炎の主な原因は、下記の細菌への感染です。

・インフルエンザ桿菌
・肺炎球菌
・モラクセラ・カタラーリス

通常はこれらの細菌によって上気道炎が起こり、咳やくしゃみといった症状に続いて中耳炎の症状が表れます。

上記の細菌が鼻腔や咽頭から耳管(鼻の奥と耳をつないでいる管)を通り、鼓室へと侵入することで鼓膜に炎症が起きます。

子どもがよく中耳炎にかかる理由は、乳幼児の耳管が大人に比べて短くて水平に近い角度であり、細菌が中耳に入り込みやすいためです。

鼓膜に穴が空いてしまっている場合は、入浴や水泳の後に外耳道側から細菌が侵入して中耳炎を生じることもあります。

子どもの急性中耳炎に使われる抗菌薬の種類

中耳炎のなかでも、急性中耳炎は子ども、とくに3歳以下の乳幼児に多い病気です。実際に、1歳までに約60%、3歳までに約80%の子どもが少なくとも1回はかかるといわれています。

急性中耳炎の場合、抗菌薬を投与せずに経過観察によって自然治癒する場合が多いです。しかし、全てが自然治癒するわけではなく、抗菌薬が処方されることがあります。ここでは急性中耳炎に使われる抗菌薬について説明します。

本邦における小児の急性中耳炎の第一選択抗菌薬は、ペニシリン系のアモキシシリン(サワシリン®、ワイドシリン®など)や、クラブラン酸カリウム・アモキシシリン水和物(オーグメンチン®)ですが、後者はより重症の場合に使用されます(小児急性中耳炎診療ガイドライン)。しかし実際には、中耳炎や、小児への呼吸器感染症全体に対しての場合は「セファロスポリン系(セフェム系)とマクロライド系抗菌薬の処方割合が高い」と報告されています。(National Library of Medicine「Nationwide survey of indications for oral antimicrobial prescription for pediatric patients from 2013 to 2016 in Japan」より)

第一選択薬のアモキシシリンが効かなかった場合、セフェム系のセフジトレンピボキシル(メイアクト®)が用いられることもあります。それでも効果が見られない場合は、ニューキノロン系のトスフロキサシン(オゼックス®)や、カルバペネム系のテビペネムピボキシル(オラペネム®)などが選択肢に含まれます。

なお、抗菌薬に対する感受性(効きやすさ)や症状の程度によって、抗菌薬の量を増やしたり、適切な抗菌薬に変更する場合もあるでしょう。

抗菌薬の副作用や使用上の注意点

ここでは、中耳炎の治療に用いる抗菌薬の副作用や、使用するうえ上での注意点について解説します。

副作用

抗菌薬の主な副作用には、下痢などの消化器症状があげられます。ひどい場合には服用を中止して受診するよう指導する必要があります。なお、消化器症状を防ぐため、抗菌薬と一緒に併用しても効果が減弱しない整腸剤が処方されるケースも少なくありません。

また、抗菌薬の飲みはじめは湿疹やかゆみなどのアレルギー反応が出る場合もあります。軽度の発疹から重度の全身発疹まで知られていますが、発症時は直ちに受診するよう指導する必要があるでしょう。

使用上の注意点

処方された抗菌薬は自己判断で中止せず、飲み切ることが大切です。途中で止めると、耐性菌が生じて治療しにくくなる可能性があります。

中耳炎を防ぐための日常生活での注意点

中耳炎を防ぐための日常生活での注意点

鼻をかむ際は、片方ずつ、やさしくかむようにしましょう。新生児や乳児は鼻をかめないため、専用の吸引器で吸い取りましょう。

▼参考資料はコチラ
中耳炎|慶應義塾大学病院

【Q&A】よく聞かれる質問について

ここでは、中耳炎と抗菌薬の服用についてよく聞かれる質問について回答例をご紹介します。

※服用できる薬剤は患者さまごとに異なるため、あくまで一例として参考にしてください

Q. 子どもが抗菌薬(粉薬)を飲まない場合はどうしたらいいの?

子どもがなかなか抗菌薬を飲まない場合は、以下のような工夫をしましょう。

・粉薬に少量の水を加え、ペースト状になるまでよく練った後、口の中(頬の内側や上あご)に塗りつけ、水や湯ざましなどを飲ませる
・薬のマスキング(薬の苦味などを軽減する方法)をするために、子どもが好む飲食物(少量)に混ぜて一緒に飲ませる
・味覚は冷たいと鈍くなることが知られているため、アイスクリームやシャーベットなどに包み込むようにして飲ませる
・服薬補助ゼリーを活用する

マクロライド系の抗菌薬を服用する場合は、酸性の飲み物と混ぜると薬剤のコーティングがはがれ、苦味が出たり効果が弱くなったりすることがあります。

そのため、酸性度の強い飲食物(オレンジジュース、スポーツドリンク、乳酸菌飲料、ヨーグルトなど)や、酸性の薬(カルボシステイン)とは混ぜないように注意しましょう。

Q. 急性中耳炎に対する抗菌薬は何日間服用するの?

中等症〜重症の急性中耳炎では、抗菌薬の投与が必要で、5日間服用します。また、抗菌薬投与後の3~4日目には病態を観察します。症状が改善されなければ、別の抗菌薬に切り替えたり、鼓膜に孔をあける「鼓膜切開」が実施されたりします。

なお、軽症の急性中耳炎では3日間は抗菌薬を投与せず、鎮痛薬で経過を観察することがありますが、痛みが続く、鼓膜の状態が悪いなどのケースでは抗菌薬が使用されます。

Q. 治ってもまたすぐ中耳炎になるのはなぜ?

子どもが中耳炎を繰り返す理由は、抗菌薬で殺傷できなかった細菌が鼻や耳にまだ残っている可能性や、子どもであるため免疫機能が不十分であることなどが考えられます。

何度も繰り返す場合は、予防接種(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン)を受ける、漢方薬(十全大補湯)を飲む、鼓膜換気チューブ留置術を受けるといった方法もあります。

鼓膜換気チューブ留置術とは、鼓膜を切開して、小さなチューブを挿入する手術です。鼓室にたまった液体や中耳の換気が可能になります。

Q. 中耳炎の抗菌薬は市販でも買える?

中耳炎の治療薬である抗菌薬は、処方箋医薬品であり、市販では販売されていません。症状が続き耳に違和感を訴える場合は、早めの受診・治療をこころがけましょう。

急性中耳炎に対して適切な服薬指導をしよう

急性中耳炎とは、細菌感染によって中耳に炎症が起き、耳痛や発熱、耳漏、耳閉感などの症状を伴い、子どもに多く見られる疾患です。とくに子どもにとって、ズキズキした激しい耳の痛みは我慢できるものではありません。

治療には、抗菌薬を使用しないこともありますが、症状の程度に応じて抗菌薬が処方され、第一選択薬としてはペニシリン系のアモキシシリンを使用することが推奨されています。また、治療効果がなければ投与量を増やしたり、他の抗菌薬に変更することもあるでしょう。

本記事で紹介した子どもの急性中耳炎の抗菌薬治療を十分に把握し、急性中耳炎に対して適切な服薬指導ができるように努力しましょう。

前原雅樹さんの写真

監修者:前原雅樹(まえはら・まさき)さん

有限会社杉山薬局小郡店(福岡県小郡市)勤務。主に精神科医療に従事し、服薬ノンアドヒアランス、有害事象、多剤併用(ポリファーマシー)などの問題に積極的に介入している。

2019年、英国グラスゴー大学大学院臨床薬理学コースに留学(翌年、同コース卒業)。日本病院薬剤師会精神科専門薬剤師、日本精神薬学会認定薬剤師。

そのほか、大学非常勤講師の兼任、書籍(服薬指導のツボ虎の巻、薬の相互作用としくみ[日経BP社])や連載雑誌(日経DIプレミアム)の共同執筆に加え、調剤薬局における臨床研究、学会発表、学術論文の発表など幅広く活動している。

記事掲載日: 2023/07/24

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