- 公開日:2021.03.03
- 更新日:2022-02-17
薬局の「0410対応」は恒久化へ。「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」との違いを解説
薬機法に基づくオンライン服薬指導は、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として不十分であることから、厚生労働省は2020年4月に「0410対応」によるオンライン服薬指導の実施を通達しました。
これは、医薬品業界に大きなインパクトを与えました。2020年9月に実施された「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」の要件が、特例的かつ時限的に大幅に緩和され、情報通信機器のみならず電話を用いても実施が可能に。さらに2021年度内には、「0410対応」に基づくオンライン服薬指導が恒久的に薬機法として実施される予定です。
この記事では、「0410対応」の概要をはじめ、「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」との違い、「0410対応」の流れや実施時の注意点、薬剤師に求められる役割などについてご紹介します。
「0410対応」とは?
2020年4月10日、厚生労働省より『新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて』が通達されました。新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的に、オンライン診療および電話や情報通信機器を用いたオンライン服薬指導の実施を時限的・特例的に認める方針が明確にされたのです。
「0410対応」は、2020年9月からの施行を予定していた「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」の内容を大きく緩和し、薬局での接触感染を防ぐための措置として厚生労働省から通達という形で始められました。
そして2021年6月、時限的・特例的措置であった「0410対応」の恒久化が閣議決定され、同年12月にこれを2021年度内に薬機法にて実現することが決まりました。
オンライン服薬指導のメリット・デメリット!導入前に確認しておくこと
「0410対応」と「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」の違い
「0410対応」と「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」の目的は異なります。前者の目的は対面での接触を減らし、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐことです。一方、後者は医療体制が整っていない離島やへき地に住む方、または何らかの理由によって通院・来局が困難な患者さまなどに最良な医療を提供することでした。
両者には、次のような違いがあります。
「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」は『外来診療は不可』『初回は不可』『音声のみ不可(電話不可)』『調剤には処方箋の原本が必要』などの制限が。一方で、「0410対応」はそれらが緩和されています。実際に、電話や情報通信機器による服薬指導は、2020年5月から8月にかけて10万件以上実施。およそ99%が、「0410対応」によるものでした。
さらに、「0410対応」に基づくオンライン服薬指導の恒久化については、受診から薬の受け取りまでをオンラインで完結するため以下の内容が示されています。
そのほか、紙から電⼦処⽅箋への転換や在宅での服薬指導も検討されています。
遠隔(オンライン)服薬指導とは? 2020年解禁に向けて薬剤師ができること
「0410対応」の流れをおさらい
新型コロナウイルス感染症の終息目処が立たない今、感染症対策は長期戦を強いられています。患者さまや医療関係者の感染リスクを下げるためにも、「0410対応」は欠かせません。
それでは、現時点の「0410対応」の流れを改めて確認しておきましょう。
「0410対応」の流れ
1.患者さま側が電話や情報通信機器を用いた服薬指導を希望する旨を医療機関に申し出て、薬局を指定する
2.医療機関が、一般患者の場合は「0410対応」、軽度な感染者であれば「CoV自宅・CoV宿泊」と処方箋に明記し、調剤薬局にFAXなどで送付(適宜、処方箋の原本も薬局へ送付する)
3.患者さまから薬局へ連絡する。連絡がない場合は、薬局から患者さまに連絡する
4.薬剤師が電話や情報通信機器などで必要な服薬指導を実施する
5.薬局から患者さまの自宅に薬剤を発送、受領確認を行う(薬局従事者の配達、家族による来局も可能)
6.必要に応じて服用期間中のフォローアップおよび医師に必要なフィードバックを実施
「0410対応」時の注意点
通常の対面で行う服薬指導と電話や情報通信機器を用いた服薬指導では、業務内容と流れが大きく異なります。ここでは、「0410対応」の注意点を解説します。
注意点1:通信環境や情報リテラシーに配慮する
患者さまの通信環境や情報リテラシーによっては、情報通信機器を用いた服薬指導への適応が難しいことも予測されます。とくにスマートフォンやPCに慣れていない高齢者や、手指が不自由なパーキンソン病の方や目がみえづらい方などは、端末操作が困難となるでしょう。
地域によっては、安定した通信環境が整っていない可能性もあります。患者さまの年齢や疾患、状況などにも配慮した、適切な服薬指導が必要です。
注意点2:対面に比べて伝えられる情報に限りがあると理解する
対面では患者さまの様子や心情、身体の状態など、視覚的に得られる情報は少なくありません。一方、電話や画面越しでの対応では、そうした情報が制限され、患者さまの様子や細かな変化を感じ取ることも難しいかもしれません。
さらに、吸入指導を行いたい場合などでは、対面ならデモ機を使って一緒に吸い込みながら指導ができるところ、電話ではそれも難しくなります。電話や情報通信機器を用いても、対面と同様に、情報収集や服薬指導ができるように心がけましょう。
また、聞き取りやすい音量や音質で指導の要点をわかりやすく伝えること、患者さまの話をよく聞き確認することなどのコミュニケーション技術の習得も必要です。
注意点3:配送の費用・リスクがあることを理解する
「0410対応」では、調剤した医薬品を配送する必要があるため、別途、費用がかかります。また、配送時の保管状況(室温保存、冷所保存など)は薬剤ごとに十分に配慮し、患者さまの手元に届くまで医薬品の品質を確保するのも薬剤師の責務です。
配送時に遅れが生じる可能性もあるため、残薬の状況を事前に確認することも重要になります。生じ得る不利益は患者さまに事前に説明し、トラブルを未然に防ぎましょう。
注意点4:薬歴への記録
「0410対応」では薬歴の記載に関して、次の要件を定めています。
薬剤の配送に関わる事項を含む、生じうる不利益等のほか、配送及び服薬状況の把握等の手順について、薬剤師から患者に対して十分な情報を提供し、説明した上で、当該説明を行ったことについて記録すること
つまり、配送時の不利益なども十分に説明した旨を薬歴に記録することが大切です。
「0410対応」で薬剤師に求められる対応と役割
終わりが見えないコロナ禍、そうした中で始まった0410対応がきっかけとなり、今後も電話や情報通信機器を用いたオンライン服薬指導の重要性は増していくと考えられます。
薬剤師は、電話などを用いた服薬指導を推進していかなければなりません。患者さまのニーズに可能な限り応え、時代の流れに合わせた柔軟な対応が求められます。
また、電話や画面越しであっても、対面と変わらない十分な情報収集・提供が行える仕組み作りや信頼関係の構築、処方箋の不正入手に関する防止対策、薬局の環境整備、オンラインに即した知識とコミュニケーション技術の習得など、薬剤師としてできることを模索していきましょう。
日経DIオンライン「0410対応」の電話等服薬指導は当面継続
オンラインが当たり前の時代が到来
この記事では、「0410対応」の概要や「改正薬機法に基づくオンライン服薬指導」との違い、「0410対応」の流れ、注意点、薬剤師の役割などについて解説しました。
電話や情報通信機器を用いた服薬指導は「0410対応」をきっかけに広がり、今後は社会的なニーズに応じて普及することが予測されます。薬剤師としてその機能を十分に活用できるよう、早めの情報収集と準備を心がけましょう。
監修者:前原雅樹(まえはら・まさき)さん
有限会社杉山薬局小郡店(福岡県小郡市)勤務。主に精神科医療に従事し、服薬ノンアドヒアランス、有害事象、多剤併用(ポリファーマシー)などの問題に積極的に介入している。
2019年、英国グラスゴー大学大学院臨床薬理学コースに留学(翌年、同コース卒業)。日本病院薬剤師会精神科専門薬剤師、日本精神薬学会認定薬剤師。
そのほか、大学非常勤講師の兼任、書籍(服薬指導のツボ 虎の巻、薬の相互作用としくみ[日経BP社])や連載雑誌(日経DIプレミアム)の共同執筆に加え、調剤薬局における臨床研究、学会発表、学術論文の発表など幅広く活動している。