- 公開日:2019.12.04
- 更新日:2020-02-04
遠隔(オンライン)服薬指導とは? 2020年解禁に向けて薬剤師ができること
遠隔服薬指導とは、パソコンやスマートフォンなどの端末を用いて、薬剤師が離れた場所から患者さまに薬の飲み方を説明する仕組みです。これまでは一部の地域に限り認められていましたが、2019年度の医薬品医療機器等法(薬機法)改正により、一定の要件のもと全国的に解禁されることとなりました。
そこでこの記事では、【遠隔服薬指導の概要や将来の課題など】について解説します。
遠隔(オンライン)服薬指導とは
服薬指導について、現状では薬剤師法および医薬品医療機器等法により、薬剤師が対面で指導することが原則として義務付けられています。遠隔(オンライン)診療において院外処方が行われた場合は、患者さまやその家族が、郵送された処方箋の原本を薬局に持参して、対面での服薬指導を受けなくてはなりません。そのため、診察からお薬の受け取りまでを自宅で完結できず、遠隔診療のメリットを十分に活かせないことが課題とされていました。
こうした遠隔診療の課題を踏まえて、2019年度の医薬品医療機器等法(薬機法)改正では、「テレビ電話等による場合であって薬剤の適正な使用を確保することが可能であると認められる場合」には、処方箋薬剤交付時の対面服薬指導義務の例外として、テレビ電話等による服薬指導が認められるようになりました。
今後は専門家によって適切なルールが検討され、厚生労働省令等において具体的な方法が定められる予定です。ルールの基本的考え方としては、以下が例示されています。
① 患者側の要請と患者・薬剤師間の合意
② 初回等は原則対面
③ かかりつけ薬剤師による実施
④ 緊急時の処方医・近隣医療機関との連携体制を確保
⑤ テレビ電話等の画質や音質の確保 など
国家戦略特区内の実証事業として実施
2018年7月の中医協において、国家戦略特区(愛知県/兵庫県養父市/福岡県福岡市)に限り、遠隔服薬指導時に薬剤服用歴管理指導料の算定を暫定的に可能とすることが了承されました。これにより、国家戦略特区法の一部を改正する法律(2016年法律第55号)にもとづき、薬剤師による対面での服薬指導義務の特例が定められることとなりました。
特区内で実証的に、①離島、へき地に居住する者に対し、②遠隔診療が行われ、③対面で服薬指導ができない場合に限り、④テレビ電話による服薬指導(遠隔服薬指導)が可能となったのです(国家戦略特区におけるいわゆる遠隔服薬指導への対応について(案))。
遠隔服薬指導は、これまでにいくつかの企業や団体が登録を受けています。2018年8月16日には、大手チェーン調剤の日本調剤が、福岡県福岡市の国家戦略特区において遠隔服薬指導に参入したことを発表しました。同年11月22日には、日本調剤瀬戸薬局(愛知県瀬戸市)が、愛知県の国家戦略特区にて遠隔服薬指導の事業者として認可を受けています。
遠隔服薬指導は特区での実証事業として行われており、2019年3月31日時点では登録薬局数28件(患者数9人)にとどまっていました。しかし、2019年度の医薬品医療機器等法(薬機法)改正により、一定の要件のもと特区以外にも拡大していくことが見込まれます。
遠隔服薬指導に必要な「電子お薬手帳」
遠隔服薬指導において患者さまの服薬状況などを正確に把握するためにも、「電子お薬手帳」の活用が求められます。電子お薬手帳とは、スマートフォンやタブレットなどの端末にお薬の情報を保管し、紙のお薬手帳と同様に活用できるシステムです。従来のお薬手帳の機能はそのままに、オンライン上で診察や投薬を行う医師や薬剤師が閲覧できるため、オンライン診療や遠隔服薬指導の際にも役立つことが期待されています。
事業者認定を受けた日本調剤は、『お薬手帳プラス』を活用しています。無料で利用できるスマートフォン用アプリで、紙のお薬手帳の代わりになるだけでなく、処方箋の事前送信サービス、家族のお薬情報の管理、来院日管理などの機能があります。血圧や体重などのデータも一元的に把握できることが特徴で、これらの情報は同社のクラウドサーバー上に保管されるため、遠隔服薬指導を行うケースでも許可を得た薬剤師が情報を閲覧可能です。
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対面時と同水準を実現することが課題
これまで、遠隔服薬指導は一部の地域に限り認められている制度であり、全国的な導入に向けて様々な課題があると考えられていました。
テレビ電話などを用いて行う遠隔服薬指導は、対面の服薬指導に比べて得られる情報が少ない上に薬剤師の指示も伝わりにくく、対面での服薬指導の場合と同水準の理解を確保することが課題と言えるでしょう。また、お薬が患者さまの手元にない状態で服薬指導を行うため、処方変更や複雑な手技を要する薬剤が追加された際は、服薬ミスのリスクが高くなってしまう可能性も否めません。手元にお薬が届いたあとに改めて確認するなど、服薬指導が複数回にわたることも想定されます。
お薬を患者さまの手元に届けるための方法も、課題の一つとされています。「配送料金は誰が負担するのか」「どのような方法で運ぶのか」など。また、配送中の温度・湿度管理や品質保全などには、細心の注意を払わなくてはなりません。そのほかにも、情報セキュリティ対策を講じる必要があることや、高齢の患者さまに対してシステム操作のサポートをする必要があること、さらに薬剤師側のデジタル・デバイド(情報格差)についても、企業を超えたレベルでサポートしていくことが求められています。
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遠隔服薬指導が本格化する前に。今のうちから情報収集を
以上、遠隔服薬指導の概要や実例に加えて、将来の課題について解説していきました。
超高齢社会を背景に、「在宅医療」を必要とする患者さまの数は爆発的に増えています。限られた医療資源を活用するには、オンライン診療や遠隔服薬指導を組み合わせることが必要ですが、現在ではこれらが実施されている医療施設や薬局は一部にとどまります。
遠隔服薬指導が解禁されることにより、患者さまの利便性が高まるだけでなく、薬剤師の働き方も大きく変化していくでしょう。今後は、専門家によって様々な観点からの議論が重ねられ、具体的方法やルールが定められる予定です。薬局がテレビ電話等による遠隔服薬指導を行う場合には、明確化される要件に対応していかなくてはなりません。薬剤師として力を発揮していけるように、今のうちから情報収集を心掛けましょう。
ファルマラボ編集部
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