業界動向
  • 公開日:2019.08.19

「ロボット調剤」によって仕事が減る!? 薬剤師への影響や導入のメリットとは

「ロボット調剤」によって仕事が減る!? 薬剤師への影響や導入のメリットとは

「全自動分包機」や「自動鑑査装置」など、調剤の現場で使われる機械は目覚ましい勢いで進化しています。調剤業務を効率的に行えるだけでなく、ヒューマンエラーを減らして調剤過誤を未然に防ぐこともできるようになりました。

中でも、自動搬入・払出装置や全自動一包化などを用いた"ロボット調剤"は、薬剤師の負担を大きく減少できると期待されています。しかし一方では、「薬剤師の仕事が奪われるのではないか...」と懸念する人も増えています。

そこでこの記事では、【ロボット調剤のメリットや薬剤師の仕事に対する影響】について詳しく解説していきます。

「ロボット調剤」とは?

薬剤師の仕事が無くなる?

秤量/配分/分割/分包といった調剤業務に専用のロボットを用いることを、「ロボット調剤」と言います。これまで薬剤師が行っていた業務をロボットが行うように。そうすることで、作業負担が減るだけでなく、待ち時間の短縮や調剤過誤の防止を実現し、患者さまのQOLを高めることもできると期待されています。

調剤の現場で用いられるロボットは様々な種類があります。人間が操作する必要があるもの、自立的に動作するAIが組み込まれたものなどがあり、ニーズに合わせて最適なロボットを導入することが業務効率化を促すでしょう

たとえば、「散薬調剤ロボット」は、処方箋のデータに基づいて、薬品の選択/秤量/配分/分包といった散薬秤量業務を自動的に行います。医薬品カセットの充填や鑑査は難しいものの、手間のかかる計量混合業務を短縮できるため、需要が高いロボットの一つです

「自動搬入・払出装置」は、調剤棚に医薬品を補充したり、調剤時に医薬品を取り揃えたりできるロボットです。処方箋の情報を基づいて、平均10秒ほどで自動的に払い出しすることができます。先入れ先出しにも対応し、使用期限などを踏まえた在庫管理も可能です

ほかにも、「抗がん薬混合調製ロボット」や「注射返品薬自動仕分け機」など、病院で用いられるロボットを中心に開発されています。ゆくゆくは、薬剤師が担う対物業務のほとんどをロボットがカバー出来るようになるかもしれません。

ロボット調剤の導入で考えられるメリット

『数分で作業を終える速さ』や『ロボットならではの正確さ』などが売りのロボット調剤ですが、薬剤師にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

最大のメリットは、調剤業務の効率化です。高齢の患者さまは10種類以上の医薬品が処方されることも珍しくなく、朝昼夕ごとに一包化が必要な場合もあります。さらに、小児の患者さまが多ければ、水剤の調剤業務を求められるでしょう。いずれも、人が調製していましたが、ロボット調剤の導入により作業の負担を大きく減らすことができるのです。

また、調剤過誤を未然に防ぐことも期待されています。医薬品カセットの充填や処方内容の入力に間違いがなければ、ミスが起こる可能性は小さいです。毛髪など異物混入のリスクも低下するので、衛生面においてもメリットがあります。さらに、ロボットに調製作業を任せれば、薬剤師は別の業務を行えるので、仕事の幅を広げることにもつながるでしょう。

薬剤師の仕事がなくなることはある?

ロボット調剤が導入されることにより、作業負担が大きく減少すると期待されて、現場からは喜びの声が上がっています。しかし、「仕事がロボットに奪われてしまうのでは...?」と不安に思う薬剤師も少なくありません。薬学部が次々に新設され、薬剤師の数が増え続けている背景もあり、薬剤師の将来性を危ぶむ声も聞こえてくるようになりました。

現実的には、ロボット調剤が導入されることで、薬剤師の仕事がなくなるということはありません。薬剤師に求められる役割は大きく、ロボットが対物業務を担うのであれば、薬剤師は対人業務をより充実させることが期待されています。調剤業務が効率化されると患者さまに接する時間を増やすことができるので、メリットは大きいと考えられるでしょう。

ロボット調剤と薬剤師のこれから

ロボット調剤と薬剤師のこれから

厚生労働省『患者のための薬局ビジョン』によると、これからは"かかりつけ薬局・薬剤師"としての活躍が求められています。処方内容のチェック/飲み合わせの確認/医師への疑義照会/丁寧な服薬指導/残薬解消などの業務に注力し、患者さまの健康維持・健康増進に貢献する。そのためにも、対物業務から対人業務にシフトする必要が説かれています。

しかしながら、実際の現場では対物業務に追われるあまり、対人業務に十分な力を注ぐことは困難でした。そんな中、ロボット調剤により調製業務が効率化されれば、対人業務を充実させることが出来ると期待されています。ロボット調剤が導入されているのは、現在では一部の施設に留まりますが、今後は多くの施設まで普及していくことが予想されています。

超高齢社会を迎えた日本では、薬や健康に関する相談を気軽に行える環境が不可欠です。身近な医療の専門家・薬剤師がいる薬局は、そのための施設として力を発揮していくことが求められています。だからこそ、薬剤師は患者さまの気持ちに配慮した上で、平易でわかりやすい情報提供を心掛けなくてはなりません。このようなコミュニケーション能力を高める取り組みも、これまで以上に求められているのです。

患者さまからの信頼を得るために

【ロボット調剤のメリットや薬剤師の仕事に対する影響】について解説しました。医療業界以外でも、AI化やロボット化が進められており、働き方が大きく変わろうとしています。一部の職場では、"ロボットに職を奪われてしまう"という事例もみられるようになりました。

薬剤師の仕事も散薬秤量業務を中心にロボットよる効率化が進んでいますが、すべての業務をロボットが担うことは不可能です。と言うのも、患者さまとのコミュニケーションが必要な服薬指導やモニタリング業務は、薬剤師が活躍すべき場面であると考えられています。

今後も薬剤師として活躍していくためには、コミュニケーション能力を高め、身近な医療の専門家として患者さまからの信頼を獲得していかなくてはなりません。かかりつけ薬剤師として、今のうちから取り組みを行うことが求められているのです。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/08/19

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