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  • 公開日:2021.08.11

【薬剤師向け】アセトアミノフェンの効果や副作用は?薬剤師が知っておくべき基礎知識

【薬剤師向け】アセトアミノフェンの効果や副作用は?薬剤師が知っておくべき基礎知識

新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が進んでいます。2021年2月からは医療従事者などへ、4月からは今年度中に65歳をむかえる高齢者への優先接種が開始され、6月からは59歳以下の年齢層にもワクチンの接種に必要なクーポンの配布がはじまりました。一方で、ワクチンの接種後に発熱や痛みなどの副反応があらわれたという声も多く、不安に感じている方も少なくありません。

この記事では、解熱薬として用いられることの多いアセトアミノフェンについて、効果や副作用、正しい使い方などについて再確認していきます。アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬である、ロキソプロフェンやイブプロフェンについても、あわせてみていきましょう。

品薄が続く解熱鎮痛薬

品薄が続く解熱鎮痛薬

新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種が広がるなかで、ドラッグストアや調剤薬局を中心に、アセトアミノフェンをはじめとする解熱鎮痛薬が品薄になっています。ワクチンを受けたあとの発熱や痛みに対して、市販の解熱鎮痛薬の使用が可能である旨が厚生労働省から通知されたためです。

現在、国内で接種が進められているワクチンには、ファイザー社とモデルナ社のものがありますが、いずれも接種後に注射した部分の痛みや頭痛、筋肉や関節の痛み、発熱などの副反応が報告されています。医療機関からこれらの症状に対する治療薬が処方される場合もありますが、市販の解熱鎮痛薬での対応を求められるケースも多く、需要が高まっているのです。

▼参考記事はコチラ
厚生労働省「新型コロナワクチンQ&A

アセトアミノフェンの効果や副作用は?

アセトアミノフェンの効果や副作用は?

アセトアミノフェンの効果や副作用、注意すべき点には、どのようなものがあるのでしょうか。

効能・効果

アセトアミノフェンは解熱・鎮痛効果を有しており、体温調節や痛みを感じる脳の中枢への作用によって、熱を体外へ逃がしたり痛みを抑えたりします。プロスタグランジンの産生を抑える効果はほとんどないため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有する抗炎症作用は非常に弱いことが特徴です。そのため子どもや妊娠中・授乳中の方も服用できます。

副作用

おもな副作用として、過敏症や嘔吐、食欲不振、血小板機能低下などが報告されています。また、ショックやアナフィラキシー、顆粒球減少症、間質性肺炎、急性腎障害、肝機能障害などの重篤な副作用があらわれることもあり注意が必要です。

注意事項

アセトアミノフェンが配合された医療用医薬品カロナールの添付文書においても、警告として重篤な肝機能障害があらわれる恐れがあることが報告されています。アセトアミノフェンは市販の風邪薬などにも配合されている場合が多く、併用により副作用があらわれやすくなるため、市販薬を含めて現在服用中の医薬品がないか確認が必要です。

アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬の種類

アセトアミノフェン以外の解熱鎮痛薬の種類

アセトアミノフェンの品薄問題を受けて、イブプロフェンやロキソプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)もワクチン接種後の発熱や痛みに使用できることが、厚生労働省のホームページにより通知されています。それぞれの効果や副作用、注意すべき点についても確認していきましょう。

イブプロフェン

効能・効果

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される医薬品で、解熱・鎮痛効果を有する成分の1つです。痛みや熱の原因となるプロスタグランジンの産生を抑え、熱を下げたり痛みをやわらげたりします。そのほか、抗炎症作用も有しています。

副作用

おもな副作用として、吐き気・嘔吐、食欲不振、黄疸、発疹、紫斑などが報告されています。また、まれに呼吸困難、ショックやアナフィラキシー、消化性潰瘍、間質性腎炎、中毒性表皮壊死融解症などの重篤な副作用があらわれることもあるため注意しましょう。

アセトアミノフェンとの違い

アセトアミノフェンは脳の中枢に作用することで解熱効果を発揮しますが、イブプロフェンでは熱や痛みの原因物質であるプロスタグランジンを抑制することで解熱効果を発揮します。

プロスタグランジンは胃粘膜の保護作用を兼ねているため、胃に負担がかかることに注意が必要です。また、妊娠後期の方には投与できません。そのほかの妊婦や授乳中の方、子供の服用にも注意が必要です。

ロキソプロフェン

効能・効果

イブプロフェンと同様に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される医薬品の一つで、解熱・鎮痛効果を有しています。熱や痛みの原因物質であるプロスタグランジンの産生を抑えることで熱を下げ、痛みを緩和します。イブプロフェンと同じく抗炎症作用も有しています。胃にある段階では作用せず、体内に吸収・代謝されてから活性化するプロドラッグであるため、胃腸障害の副作用が少ないことも特徴です。また、前述のイブプロフェンと比較して鎮痛作用は強くなります。

副作用

胃腸障害の副作用が少ないといってもゼロではありません。また、発疹や腎機能・肝機能の低下、腹痛、吐き気、食欲不振などにも注意が必要です。重い副作用として、まれにショックやアナフィラキシー、消化性潰瘍、心不全、重い皮膚・粘膜障害などがあらわれることもあります。

注意事項

プロドラッグであるロキソプロフェンでは、胃腸障害の副作用は他の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と比べると少ないことが知られていますが、胃・十二指腸潰瘍を治療中の方などでは注意が必要です。アスピリン喘息や腎機能障害を有する方が服用することも、避けなければなりません。また、妊娠後期の婦人やインフルエンザおよび水ぼうそうに罹っている小児の服用は、禁止されています

アセトアミノフェンとの違い

アセトアミノフェンは脳の中枢に作用することで解熱効果を発揮しますが、ロキソプロフェンでは熱や痛みの原因物質であるプロスタグランジンを抑制することで解熱効果を発揮します。抗炎症作用による鎮痛効果も期待できますが、副作用の頻度も増える可能性があります。また、妊娠後期の方や子供の服用は避けなければなりません。そのほかの妊婦や授乳中の方の服用にも注意が必要です。

それぞれの効果や副作用を知り、適切な対応を

この記事では、解熱薬として用いられることの多いアセトアミノフェンやロキソプロフェン、イブプロフェンについて、効果や副作用、正しい使い方などについて確認していきました。

これらの成分は医療用医薬品としても使用経験が豊富であり、安全性も比較的高いことが知られていますが、患者さまによっては服用が適していない場合もあります。激しい痛みや高熱などで症状が重い場合や症状が長く続いている場合、ワクチン接種後としては典型的でない症状がみられる場合には注意が必要です。

OTC医薬品を扱うドラッグストアなどでは、薬剤師の判断で服用する医薬品の選択や受診勧奨を行う必要があります。この記事を参考に、新型コロナウイルス感染症および使用できる解熱鎮痛薬の知識を身につけておきましょう。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/08/11

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