服薬指導に活かす医薬品情報

ツムラ五苓散エキス顆粒(医療用)

Q

何のお薬?どのような方に適している?

A

五苓散の"五"は本剤の構成生薬が5種類であることを意味し、そのうちの主薬である猪苓の"苓"の字と合わせて名付けられています。適応症は「口渇、尿量減少するものの次の諸症:浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病」です。味は「わずかに辛い」とされています。 むくみをはじめ、頭痛、めまい、下痢等は、漢方では気血水の「水」が滞った「水滞(すいたい)」を原因とする症状と考えられており、本剤はこの水滞を改善する代表的な処方です。本剤は、虚実間証を中心に比較的幅広い患者さまに用いられます。虚実間証とは、虚証(体の線が細く青白い顔色で疲れやすいタイプ)と実証(体格がよく体力のあるタイプ)の中間にあたります。

Q

作用機序は?

A

近年、本剤がアクアポリン(Aquaporin:AQP)を阻害することがわかり、注目されています。AQPは細胞膜に存在する膜タンパク質で、水チャネルとして水の透過性に関与するほか、炎症のシグナル伝達を亢進し炎症反応を強める働きも有しています。 本剤はAQPを阻害することで浮腫状態では利尿作用を、脱水状態では抗利尿作用を発揮し、体内の水分代謝異常を改善します。この作用は西洋薬の利尿薬とは異なり、血漿中の電解質濃度を変化させることなく尿量を増加させます。 また、AQPのうちERK(細胞外シグナル調節キナーゼ:Extracellular Signal-regulated Kinase)のリン酸化を亢進させる作用を持つAQP3,4,5が、炎症反応の増強に関わっていると考えられています。本剤はERKのリン酸化を抑制することでサイトカインの産生を抑制し、抗炎症作用を発揮します。

Q

類似した方剤とその使い分けは?

A

猪苓湯の使用意図は本剤と同様ですが、排尿痛や排尿時の不快感等を伴う場合に良いとされています。

八味地黄丸は中高年の口渇や、頻尿、多尿、排尿痛、夜間尿等の排尿異常、倦怠感、腰部の冷え・痛み等がある場合に良いとされています。

呉茱萸湯は四肢の冷感や、発作性の強い頭痛とそれに伴う嘔吐が見られる場合に良いとされています。

半夏白朮天麻湯は四肢の冷感や頭痛、めまい等があり、疲れやすく、食欲不振等の消化器症状を伴う場合に良いとされています。

苓桂朮甘湯は頭痛やめまい(特に立ちくらみ)を訴え、口渇や嘔吐が顕著でない場合に良いとされています。

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派遣薬剤師のススメP
掲載日: 2020/11/26
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