コララン錠
Q |
何のお薬?処方目的は? |
A |
「洞調律かつ投与開始時の安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全。ただし、β遮断薬を含む慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る。」を適応症とします。
洞調律・心房細動
洞結節からの電気信号が正しく伝わり、収縮リズムが正常な状態を「洞調律」と呼びますが、電気興奮が不規則に起こり、リズムが不規則な状態を「心房細動」と呼びます。
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Q |
用法・用量・薬物動態は? |
A |
通常、1回2.5mgを1日2回食後経口投与から開始します。忍容性に応じて2週間以上の間隔で段階的に用量を増減します。1回投与量は2.5mg、5mg、7.5mgのいずれかとし、1日2回食後経口投与とします。空腹時では食後よりCmax、AUCともに減少します。 主にCYP3Aで代謝される薬剤で、重度の肝機能障害(Child-Pugh C)がある場合や、CYP3Aを強く阻害する薬剤を服用中の場合は本剤の血中濃度上昇の恐れがあり禁忌です。中等度のCYP3A阻害作用に加えて心拍数減少作用を持つベラパミルやジルチアゼムも併用禁忌に設定されています。 |
Q |
作用機序は? |
A |
本剤は、洞結節にあるHCN(過分極活性化環状ヌクレオチド依存性)チャネルを阻害する新規作用機序の慢性心不全治療薬です。海外では2012年から慢性心不全の治療で使用され、本邦では2019年に承認を取得しました。活動電位の拡張期脱分極相における立ち上がり時間を遅延させ、その結果血圧には影響せず、心拍数だけを減少させます。ただし、高度の低血圧(収縮期血圧90mmHg未満または拡張期血圧50mmHg未満)には使用経験がないことから禁忌と設定されています。
心拍数について
慢性心不全を含む多くの心疾患では、その予後と心拍数との間に負の相関関係が認められており、心拍数が心血管系イベントの独立したリスクファクターとして重要です。一方で、低心拍もまた予後に悪影響を及ぼすことが示唆されています。そのため目標とする安静時心拍数は50~60回/分とされ、この値を超える場合は本剤の増量を、下回る場合や徐脈関連症状(めまい・倦怠感・低血圧等)が現れる場合には減量を行います。
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Q |
注意すべき副作用は? |
A |
徐脈や光視症(視野の一部に一過性にまぶしい光を感じるなど)が副作用の中では頻度が高く、自動車の運転等危険を伴う機械の操作をする際には十分な注意が必要です。光視症は投与後3か月以内に現れることが多いとされています。また、心房細動を起こす恐れがあり、発現した場合には本剤を中止することとされています。 |
Q |
慢性心不全の標準的な治療薬とは? |
A |
●β遮断薬
β1受容体を遮断することで心拍数を低下させるとともに降圧効果も示し、左心室の拡大抑制効果も持ち、生命予後改善効果が示されています。一方で気管支喘息を合併していたり、低血圧の懸念があったりすると、投与しにくい・増量が難しいという側面があります。本剤はこのような患者さまに有用と考えられます。
●ACE阻害薬、ARB
慢性心不全では交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が賦活化されることで左心室拡大と収縮性の低下(リモデリング)を起こしています。ACE阻害剤やARBはこれらを阻害して心不全の入院を抑制し、生命予後を改善することが明らかになっている一方で、高カリウム血症や低血圧を招く恐れがあります。このような理由で増量が難しい場合には本剤が有用ではないかと推測されます。
●ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
スピロノラクトンおよびエプレレノンは抗アルドステロン作用を持ち、大規模臨床試験で有用性が確認されていることから収縮不全の心不全に対して投与が推奨されています。こちらも高カリウム血症には注意が必要です。
◆総評
総評として、血圧を下げずに心拍数のみを低下させ、心不全での入院リスク低下が期待できる薬剤ですが、徐脈、心房細動などの副作用があり、重度の肝機能障害や併用禁忌薬の確認が必須となります。 |
掲載日: 2021/11/25
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります
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