ゾフルーザ錠
Q |
何のお薬?処方目的は? |
A |
「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療およびその予防」の効能・効果を有します。ただし10mg錠には予防の適応がありません。 |
Q |
用法・用量・薬物動態は? |
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A |
通常、下記の用量を単回投与します。
10mg錠と20mg錠の生物学的同等性が示されていないため、10kg以上20kg未満の小児以外に10mg錠は使用できません。食前後の指定はありませんが、活性代謝物の薬物動態は食後では空腹時よりCmax、AUCともに減少します。 治療と予防で用いる量は同じですが、予防に関しては12歳未満且つ体重20kg未満の小児に対する適応を持たないことに注意が必要です。 主に肝臓で代謝・排泄され、重度の肝機能障害がある場合は慎重投与の必要があります。腎機能による制限はありません。 |
Q |
作用機序は? |
A |
本剤はプロドラッグで、体内で加水分解され活性代謝物となった後、インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性を阻害し、mRNA合成を妨げることでウイルス増殖抑制作用を発揮します。 |
Q |
注意すべき副作用は? |
A |
オセルタミビルと同じく下痢、悪心・嘔吐の報告があります。また、抗インフルエンザウイルス薬の服用有無や種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現した例が報告されている為、本剤でも注意喚起が必要です。 |
Q |
既存の抗インフルエンザ薬との違いは? |
A |
●ノイラミニダーゼ阻害薬全般
作用機序が異なることから、ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスにも本剤は有効であると考えられています。本剤との併用による相乗効果が報告されていますが、2020年時点では保険診療上、併用療法は認められていません。
●オセルタミビル(タミフル)
オセルタミビルは腎排泄型の為、透析など腎機能が大きく低下している場合には注意が必要(投与は可能)です。本剤は腎機能に応じた調節の必要はありません。
●ラニナミビル(イナビル)
どちらも単回使用で治療が完結しますが、ラニナミビルは吸入が困難な患者には向かないという問題があります。
●ファビピラビル(アビガン)
RNAポリメラーゼ阻害作用を持ち、本剤同様ノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスにも効果が期待できますが、胎児毒性の副作用懸念があり、季節性インフルエンザへの使用には制限がかけられています。本剤に催奇形性は認められていません。
日本感染症学会提言「抗インフルエンザ薬の使用について」
本剤は単回経口投与で治療が終了する簡便性から、2018-2019年シーズンに全国で約550万人に投与されたと推定され、一部の報告ではインフルエンザBでノイラミニダーゼ阻害薬より解熱までの時間が短かったとされています。
一方でアミノ酸変異が認められ、バロキサビル低感受性株が報告されています。本剤はノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスにも有効性が期待でき、新型インフルエンザ出現時の使用も期待されていますが、現時点では臨床データが乏しい為、推奨/非推奨は決められないと提言されています。特に小児は低感受性株の出現頻度が高いことを考慮し、慎重に投与を検討するとされています。今後の基礎および臨床のデータの蓄積と解析により、その使用方針に変更の可能性があります。
◆総評
総評として、従来のノイラミニダーゼ阻害薬耐性ウイルスにも有効性が期待でき、単回経口投与で治療が終了する、簡便性の高い薬剤です。一方でアミノ酸変異が認められ、耐性獲得に懸念が残ります。 |
掲載日: 2021/12/09
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります
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