服薬指導に活かす医薬品情報

サイバインコ

Q

何のお薬?処方目的は?

A

効能・効果は「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」です。

ステロイド外用剤やタクロリムス外用剤等の抗炎症外用剤による適切な治療を一定期間施行しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に用いることとされています。

Q

用法・用量は?

A

通常、成人及び12歳以上の小児には、100mgを1日1回経口投与します。なお、患者の状態に応じて200mgを1日1回まで増量が可能です。

腎機能に応じた用量調節が必要なので注意してください。


腎機能 通常用量 増量上限
通常 100mg/日 200mg/日
中程度の腎機能障害(30≦eGFR<60) 50mg/日 100mg/日
重度の腎機能障害(eGFR<30) 50mg/日 不可


Q

作用機序は?

A

JAKのATP結合部に本剤が結合することで、ATPがJAKへ結合するのを阻害します。これにより、転写因子であるSTATのリン酸化を阻害します。本来、STATがリン酸化されると二量体を形成し核内へ移行、T細胞増殖や炎症性サイトカイン産生増加に寄与しますが、本剤はその流れを止めます。JAKファミリーにはJAK1の他にJAK2やJAK3、TYK2がありますが、本剤は既存のJAK阻害剤に比べてJAK1に特に高い選択性を持つとされています。

JAK1はアトピー性皮膚炎の病態形成に関係している複数のサイトカインシグナルに共通する分子ですが、例えばJAK2は赤血球増産等にも関わっており、阻害されることで貧血等の副作用に影響することがあります。

Q

併用注意は?

A

本剤はCYP2C19及びCYP2C9にて代謝されるため、これらを強く阻害或いは誘導する薬剤の併用には注意が必要です。

また、P-gp阻害作用を有するため、P-gpの基質となる薬剤の併用にも注意が必要です。


Q

投与禁忌患者は?

A

感染:重篤敗血症等の患者、活動性結核の患者

血液:好中球数1,000/mm3未満、リンパ球数500/mm3未満、ヘモグロビン値8g/dL未満、血小板数50,000/mm3未満いずれかに該当する患者

重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)患者

妊娠又は妊娠している可能性のある女性(胎児毒性の報告あり)


Q

治療上の注意点

A

原則として、本剤投与時でも保湿外用剤を継続使用することとされています。また、アトピー性皮膚炎の病変部位の状態に応じて抗炎症外用剤も併用することが推奨されています。

ただし、アトピー性皮膚炎に適応を持つ生物学的製剤や他の経口JAK阻害剤、シクロスポリン等の免疫抑制剤(局所製剤以外)との併用はしないこととされています。

本剤による治療効果は通常投与開始から12週までには得られるとされているため、12週までに治療反応が得られない場合には投与中止を考慮する必要があります。



アトピー治療におけるJAK阻害剤

2008年にシクロスポリンが承認されて以来、長く新しい内服治療薬が発売されてこなかったアトピー性皮膚炎領域ですが、2020年12月にバリシチニブ(オルミエント)の本疾患に対する適応追加を皮切りに、ウパダシチニブ(リンヴォック)の適応追加、サイバインコの発売と次々に選択肢が広がりました。

現在内服薬でアトピー性皮膚炎に適応を持つJAK阻害剤は上記3種類であり、加えて外用剤のデルゴシチニブ軟膏(コレクチム)があります。内服薬は基本的にJAK1/2を選択的に阻害するのに対し、コレクチムはJAKファミリーすべてを阻害するという違いがあります。


掲載日: 2023/05/18
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