- 公開日:2021.09.24
<国試対策コラム>薬理学の勉強法
CBT対策から薬剤師国家試験対策まで支援している、薬学生の学習塾「薬進会様」監修!国試対策に活かせる科目別学習方法や過去問解説をご紹介します。今回は、近年の国試における難易度が、平易あるいは例年通りのいたって標準的なレベルとされる「薬理学編」!
科目別勉強法
現代国試の傾向
近年の国試における薬理学の難易度は、平易あるいは例年通りのいたって標準的なレベルです。その理由を3つご紹介いたします。
1.出題傾向の類似性
「出題される問題の傾向が読みやすい」という特徴が挙げられます。自律神経系から1問、受容体関連から1問、オータコイド関連薬から1問...という風に、薬剤師国家試験出題基準対応表(*)の分類から大きく逸脱することはありませんし、薬剤師国家試験出題基準対応表の分類の小項目ごとに確実に出題されます。また、各カテゴリーで出題される薬物も、既出の薬物をベースに構成されており、新薬ばかりが出題される問題は稀です。
(*)一般的に薬剤師国家試験出題基準対応表は、国試の参考書の巻頭に記載されています。
2.副作用より輸送担体
以前の国試は、薬物の副作用を把握しているか確認する問題が多かったのですが、近年は副作用も含めて作用機序を詳細に把握しているかを確認する問題が多く出題されています。
例えば、「作用する際の輸送担体から副作用を推察する」「作用点の構造や特徴から適応される疾患を把握する」など。薬物の構造、特徴、作用機序、適応、副作用など包括的に全体像を捉えた学習が求められるようになっています。
3.新薬の出題数の減少
1.の内容にも連動しますが、新薬だけで構成される問題は以前よりも出題が減少しています。代わりに、実践型薬剤師を育てたいという厚労省の思惑から、「現在汎用されている既存のメジャー薬物の知識を正確に持っているか」を確認する問題の出題が多くなっているのです。とはいえ、新薬を学ばなくてよいというわけではないので、実薬が見れる・手に取れる実務実習を活用して知識を深めましょう。
現代国試、得点への道
前述した通り、近年の国試における薬理学の難易度は平易です。つまり、正しく学習すれば、満点を取れる可能性も高いです。高得点化への道は、以下の3つになります。
1.正答になっていない選択肢の研究
「問題文中のこのキーワードをこう変えれば、解答は1番ではなく3番になる」のように、自分で問題を作り変えてアウトプット力を上げることが大切です。5つの問題文の中から正しいものをただ2つ選ぶだけの勉強法は、応用力がつきにくく考える力が養えません。「誤の問題文」を正確に「正の文章」に置き換えるトレーニングを行うことで、応用力や考える力を向上させていきましょう。
2.今日の治療薬・治療薬マニュアルはいつでも手元に
薬物のカテゴリー、作用機序、用法・用量、輸送担体、副作用など薬物ごとの特徴をその都度見直し、類似薬も一緒に把握するために便利な書籍が南江堂「今日の治療薬」や医学書院「治療薬マニュアル」です。この2冊の書籍は薬剤師になっても使います。学生のころから使いこなせるようにしておきましょう。
3.必要な情報のトリミング
実務実習中に、MSやMRなど薬学業界の人から話を聞く機会が多々あると思います。知らないことは、まずは自分で調べてみる。その上で、理解できない場合は指導薬剤師・先輩薬剤師に聞く。そのような流れで不明瞭なところはすぐに解消する癖をつけましょう。情報を得るポイントは、膨大にある情報の中から『自分に必要な知識は何か』『論点・要点は何なのか』を明確にすることです。つまり、自分に必要な情報をトリミングしましょう。
合格へのアプローチ
① 主要8疾患に付随した薬物を深く学ぶ
8疾患(高血圧症、循環器疾患、糖尿病、中枢神経系疾患、免疫系疾患・アレルギー系疾患、悪性腫瘍、感染症、脳血管障害)で処方されている薬物を確認し、その周辺知識も整理していきましょう。
[例題]第101回 薬剤師国家試験問題 問185
※引用元:第101回 薬剤師国家試験問題 1日目(3)一般問題(薬学理論問題)
【解法】
患者が高血圧症であること、血中のK値低下、レニン活性の低下、血漿アルドステロンの上昇が認められることからアルドステロン症であることが推察されます。また、レニン活性の低下から推察されるのは、副腎皮質本体の異常である原発性アルドステロン症であること。これらより、最適な治療は副腎摘出手術であることがわかるはずです。
その前段階での処置はアルドステロンの作用を減弱させる目的で、選択肢2のスピロノラクトンが該当します。
トリクロルメチアジド | 遠位尿細管前半部分でNa+―Cl-
共輸送系阻害。 →副作用に低K血症があるため不適切 |
アリスキレン | 直接レニン阻害薬であり、レニン活性が増大している疾患なら適切。 (本患者には不適切) |
バルサルタン | アンギオテンシン受容体遮断薬。本疾患でのレニンアンギオテンシン系の活性化は認められないため、受容体遮断薬では有効性に欠ける。 |
リシノプリル | アンギオテンシン変換酵素阻害薬。本疾患はレニンアンギオテンシン系の活性化は認められないため、有効性に欠ける。 |
できればここまで深掘りしてみて!
①トリクロルメチアジドで考えられる副作用は低K血症以外にどんな症状がある? ②バルサルタンとリシノプリルで共通する副作用と異なる副作用は?
② メジャー薬物から攻める!
出題頻度の高い薬物に限って、【出題範囲がボーダーレス】という現代国試の現状があります。出題カテゴリーにこだわりすぎると問題を解きにくい場合もあるので、科目ボーダーレス的考え方もマスターしておきましょう。
[例題]第105回 薬剤師国家試験問題 問250・問251-アセトアミノフェンの例-
※引用元:第105回 薬剤師国家試験問題 2日目(2)一般問題(薬学実践問題)
【解法】
設問より、患者はトラマドールの服用を開始し、増量してから体調不良を訴えています。これは、処方1での服用の問題でなく、処方2の服用での体調変化と考えるのが一般的です。
問250解法:トラマドールの作用機序が学習できているかを確認しよう
A1:オピオイドμ受容体刺激、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を有する A2:コデインに似た作用を有する A3:セロトニン症候群(不安、発汗、発熱、下痢、見当識異常など)のリスクがある A3より問250の解答が1であることがわかります。
Q2:副作用改善のために行うことはなにか。
問251解法:副作用はトラマドールによって引き起こされているため、トラマドールの中止は不可欠。トラマドールの切り替えの際にオピオイド作用は継続させていく必要があるため、4のトラマドールの中止とオキシコドンの切り替えを選択します。したがって解答は4です。
できればここまで深掘りしてみて!
①アセトアミノフェンの構造が書けるかチャレンジしよう(薬理から有機へシフト) ②アミトリプチリンの作用機序と適応症は覚えているか確認しよう(薬理から病態へシフト) ③mFOLFOXで使用される薬物を全て思い出せるか確認しよう(薬理から病態、実務へのシフト)
※実務実習中:添付文書で確認、いつも:『今日の治療薬』や『治療薬マニュアル』で確認
薬学生の学習塾「薬進会」(株式会社薬進会)
2009年創立。薬剤師国家試験対策の学習塾。講師は、教室での一斉授業に加え個別指導も行い、現場で薬剤師としても絶賛活躍中。 「わかるまでやる!できるまでやる!」を企業理念に、社会に貢献でき、そして人に優しい薬剤師を輩出することを目指し、その実現のために日々取り組むプロ集団。 現在は自社での講義に加え、大学での講義、企業内定者フォロー、薬学生の学習サポートとして学習コンサルティングなど種々のかたちで薬剤師国家試験対策に携わっている。2020年より「全ての学生が自由に学べる」をコンセプトに「YouTube薬剤師国家試験大学」を運営・配信している。