- 公開日:2021.10.22
<国試対策コラム>薬剤の勉強法
CBT対策から薬剤師国家試験対策まで支援している、薬学生の学習塾「薬進会様」監修!国試対策に活かせる科目別学習方法や過去問解説をご紹介します。今回は、「薬物動態学」「薬物動態学」「製剤の性質」「製剤設計」と大きく4つに分類でき、そのどれもがまんべんなく出題される「薬剤編」!
科目別勉強法
薬剤の傾向
国試における薬剤は、おおきく以下の4つに分類できます。
①薬物動態学(吸収、分布、代謝、排泄、非線形など) | 理解・暗記系 |
②薬物動態学(薬物速度論 | 計算系 |
③製剤の性質(粉体、溶解、レオロジー、高分子など) | 理解・暗記系、計算系 |
④製剤設計(製剤の特徴、試験法、DDSなど) | 理解・暗記系 |
上記①~④すべての範囲で、まんべんなく出題されるのが特徴となります。 つまり、どの範囲も手を抜けない科目です。近年は、図やグラフのデータ解析系問題が増加傾向、薬物の相互作用など実務との連携問題が増加傾向に。計算問題の出題の仕方は変化しています(後述)。まずは、「計算問題の出題の仕方が変化」をみていきましょう。
[過去の出題でよくみられた問題形式]第101回 薬剤師国家試験問題 問168
※引用元:第101回 薬剤師国家試験問題 1日目(3) 一般問題(薬学理論問題)
上記問題の選択肢を見てみましょう。選択肢は1~5まで数字を選ぶ形式になっています。
計算を行い、答えとなる数字が出たら、残りの選択肢は死の選択肢になるわけです(いわゆる選択死)。1問につき1つの流れで回答していく系統の問題なので、回答の流れさえ間違わなければ、時間をかけずに正答まで導くことが可能です。
[近年トレンドの問題形式]第103回 薬剤師国家試験問題 問173
※引用元:第103回 薬剤師国家試験問題 1日目(3)一般問題(薬学理論問題)
上記問題の選択肢を見てみましょう。選択肢が1~5まで独立した出題形式になっています。
計算を行い、選択肢1が正答となっても、他の選択肢2~5が選択死にならないのです。ということは、選択肢1~5まで1問×5回解いていく必要があるので、上記の問題よりもスピーディーに計算を解く計算力が必要になるのです。
薬剤の対策
では、上記(Ⅰ)の出題傾向に対して、どう対策を行っていくかをご紹介しましょう。
傾向 | 対策・日々のトレーニング |
---|---|
図やグラフのデータ解析系問題が増加傾向 | ①グラフに関しては、縦軸、横軸、傾き、切片を注意してみる。 ②選択肢から答えとなるグラフを選ぶのではなく、一旦、自分でグラフを書いてみる。 ③グラフは、フリーハンドで早く書けるように練習する。 ④正答となっていない図は、何を意味しているのか、今一度考えてみる。 |
薬物の相互作用など実務との連携問題が増加傾向 | ①薬理、実務で出題される薬物との連携を意識する。 ②意味をもって構造を見極める。 [有機化学的・物理化学的な見方] 1)骨格、官能基を見極める。 2)酸性薬物か塩基性薬物かを見極める。 [薬剤的・実務的な見方] 3)腎排泄型か肝代謝型かを見極める。 |
計算問題の出題の仕方が変化 | ①問題を読むスピードを上げる練習が必要。 ②計算をするスピード力が必要。 (電卓を使わない。本番で使えないので。) |
合格へのアプローチ
① 答えまで最短距離で突っ走る
計算問題を完答するためのポイントは、たったの『3つ』です。順番も大事なので、①→②→③と順を追ってみていきましょう。
① 問題を読み、最終的に何を求めるのかを確認しましょう。
最終的に何を出すのかだけ分かればOKです。
② 最終的に求めるものが関与する式を作りましょう。
・②ができれば③へ ・②ができなければ、解答に時間がかかったり完答できなかったりする可能性が高いです。他にかける時間が削られないように、一旦は次の問題にいきましょう。
③ ②の式の穴をひたすら埋めていくだけ!
実際の問題を使って、ポイント①②③を確認。使えるようにトレーニングしてみましょう。
[問題]
ある薬物を同一被験者に100mgを急速静脈内投与、あるいは200mgを経口投与した後の血中濃度を測定し、それぞれ表に示す結果を得た。ただし、この薬物は肝代謝のみで消失し、体内動態は線形性を示すものとする。肝血流速度を100L/hrとして、経口投与時の門脈血中へ移行する割合(消化管透過率)(%)に最も近い値はどれか。
※引用元:第91回 薬剤師国家試験問題 問163
② 過去問を覚える×。過去問を利用して知識を増やす〇。
[問題]第98回 薬剤師国家試験問題 問46
※引用元:第98回 薬剤師国家試験問題 1日目(1) 必須問題
単に答えを出すだけなら
投与量が増えると、AUCが増加するので、解答は2。これで終了。 ちなみに、関連する式は、AUC=DCLtotですね。式から判断しても、投与量DとAUCは比例とわかりますね。
折角、問題を解くなら他の選択肢も研究してみよう
1 吸収速度定数 → 定数kaなので一定値となる。投与量の影響は受けない...と考えられる。kaは、基本的に経口投与の話になるので、経口投与の範囲、MRTpo、MATの周辺も勉強してみましょう。
3 消失半減期 → t1⁄2=0.693ke 上記の式から消失半減期は、消失速度定数に反比例だと判断できます。となると、消失速度定数も消失半減期も薬物固有の値で一定となりますね。
4 全身クリアランス → CLtot=ke×Vd 線形1-コンパ―トメントモデルにおいて、消失速度定数keも分布容積Vdも一定値です。となると、一定(ke)×一定(Vd)となるので、CLtotも一定値となります。また、消失のパラメーターは、消失速度定数、クリアランスの他に消失速度もあるので、それぞれの違いや単位もあわせて確認してみると実力アップできますよ。
5 分布容積 ここは、①Vd=V血+V組×C組C血 ②Vd=V血+V組×f血f組 ③Vd=DC0 の3式が挙げられますね。
上記の①②は単発の問題で出題されやすく、③はポピュラーだけど一番使う式になります。もちろん、分布容積なので、単位はだいたいLかmLとなります。
[まとめ]
単に答えを出して終わりではなく、正答になっていない選択肢の研究もしてみてください。「使える知識」が獲得できますので、是非、実践してみましょう。
薬学生の学習塾「薬進会」(株式会社薬進会)
2009年創立。薬剤師国家試験対策の学習塾。講師は、教室での一斉授業に加え個別指導も行い、現場で薬剤師としても絶賛活躍中。 「わかるまでやる!できるまでやる!」を企業理念に、社会に貢献でき、そして人に優しい薬剤師を輩出することを目指し、その実現のために日々取り組むプロ集団。 現在は自社での講義に加え、大学での講義、企業内定者フォロー、薬学生の学習サポートとして学習コンサルティングなど種々のかたちで薬剤師国家試験対策に携わっている。2020年より「全ての学生が自由に学べる」をコンセプトに「YouTube薬剤師国家試験大学」を運営・配信している。