- 公開日:2023.01.26
「薬剤師はいらない」といわれる理由は?必要とされる薬剤師になるためのポイントを解説
薬剤師は、調剤薬局やドラッグストア、病院など薬に関わる現場で活躍する専門職。患者さまやお客さまがお薬に困らない環境は、薬の専門家である薬剤師の活躍があって作られるといっても過言ではないでしょう。
ところが、さまざまな理由から「薬剤師はいらない」という薬剤師不要論がたびたび噂されることがあります。そこで本記事では、「薬剤師はいらない」といわれる原因を解説します。より多くの方に求められる薬剤師になるためのヒントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
「薬剤師はいらない」といわれてしまう理由
「薬剤師はいらない」といわれてしまう原因は複数あります。ここでは代表的な理由を解説します。
DX化やICTなどデジタル技術の活用が進んでいる
デジタル技術の活用は医療分野を含めた社会全体で進みつつありますが、薬剤師業界ではたとえば処方箋の電子化やオンライン服薬指導、調剤ロボットなどが浸透しつつあります。さらに最近では医療分野のDX化も進められており、2022年3月には厚生労働省より『第2回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 薬局薬剤師DXの推進について』が公開され、データヘルス改革によるICT活用の概要と薬局薬剤師に期待されている役割、目指す将来像などが示されました。
こうしたデジタル技術の進歩により、今まで薬剤師が担ってきた業務は、より正確かつ効率的に行えるようになりました。本来あってはならない調剤過誤や個人情報漏洩などのミスも、デジタル技術の積極的な活用で改善が期待できるでしょう。「薬剤師はいらない」という誤った認識は、こうした背景が生み出したと言えそうです。
他職種や患者さまから業務内容がわかりにくい
「薬剤師はいらない」といわれてしまう理由の一つに、他職種や患者さまから見て薬剤師の業務内容がわかりにくく、薬剤師の存在意義が理解されていないことがあります。
薬剤師は処方箋を預かったら、薬歴管理、調剤、監査、内容に不明点や確認事項があれば医師への疑義照会を行うこともあります。ところが、調剤室の外からでは薬剤師が何をしているのかがわかりにくく、薬に関する知識を提供する場も少なかったことから「医師が処方した薬の用意をするだけでは?」と思われてしまうケースも少なくありませんでした。
対物業務が占める割合が多かった
そもそもこれまでの薬剤師業務では、医薬分業の推進から調剤や監査などの対物業務を中心に行うことが求められてきました。しかし、対物業務は単調に感じやすい傾向があり、そうした薬剤師の仕事に意義を見出せなくなってしまう方も少なくありません。
また、2019年には厚生労働省から『調剤業務のあり方について』が出され、非薬剤師でもピッキングや患者さまへの薬の郵送といった調剤に直接関わらない業務を行えるようになりました。こうした経緯も後押しし、「薬剤師の担っていた役割が脅かされている」「薬剤師はいらないのでは」と薬剤師の将来に不安を抱える方が後を立たないのです。
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「薬剤師」は本当に必要ないのか?
結論として、薬剤師は決していらない存在ではありません。ただし、今後は薬局・薬剤師に求められる役割はこれまでと大きく異なるため、求められる薬剤師像をしっかりと把握しておきましょう。
これから求められる薬剤師像
これからの薬剤師・薬局のあり方と求められる役割は、平成27年に厚生労働省から出された『患者のための薬局ビジョン~「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ~』のなかで示されています。
1.立地から機能へ
いわゆる門前薬局など立地に依存し、便利さだけで患者に選択される存在から脱却し、薬剤師としての専門性や、24時間対応・在宅対応等の様々な患者・住民のニーズに対応できる機能を発揮することを通じて患者に選択してもらえるようにする。
2.対物業務から対人業務へ
患者に選択してもらえる薬剤師・薬局となるため、専門性やコミュニケーション能力の向上を通じ、薬剤の調製などの対物中心の業務から、患者・住民との関わりの度合いの高い対人業務へとシフトを図る。
3.バラバラから一つへ
患者・住民がかかりつけ薬剤師・薬局を選択することにより、服薬情報が一つにまとまり、飲み合わせの確認や残薬管理など安心できる薬物療法を受けることができる。
薬剤師・薬局が調剤業務のみを行い、地域で孤立する存在ではなく、かかりつけ医を始めとした多職種・他機関と連携して地域包括ケアの一翼を担う存在となる。
つまりこれからの薬剤師には、薬と健康に対する幅広い知識や豊富な経験を活かし、AIによる自動化やIT化では実現できない対人業務における活躍が期待されています。そのために薬剤師は専門性やコミュニケーション能力を磨き、かかりつけ薬剤師として患者さまや地域住民の健康サポートに貢献することが求められているのです。
薬剤師の担う役割は大きな転換期を迎えており、徐々に起こる変化に不安を感じている声もあります。しかし、それは「薬剤師がいらない」のではなく、薬剤師のもつ薬の深い知識をさらに生かすための変化であることを覚えておきましょう。
かかりつけ薬剤師・薬局とは?|日本薬剤師会
より求められる薬剤師になるためには
前章で解説した通り、薬剤師に求められる役割は大きく変化しました。ここでは、周囲からより求められる薬剤師になるためのポイントをご紹介します。
コミュニケーション能力を磨く
対物業務から対人業務へとシフトチェンジが進むなか、コミュニケーション能力が今まで以上に必要とされることは間違いありません。コミュニケーションを円滑にするためには、相手の性格や理解度に応じた言葉選び、傾聴の姿勢、相手の考えに共感を示すことも大切です。また、目線や相槌などの仕草、会話以外の配慮も重要な要素でしょう。
相手と信頼関係を築くうえで、日々のコミュニケーションは欠かせません。患者さまやご家族はもちろん、医師や看護師などの医療従事者、他職種・他機関のスタッフと信頼関係を築くことが、結果的に質の高い医療の提供につながるでしょう。
資格を取得しスキルアップを目指す
患者さまによって必要とされる知識は異なるため、ニーズにあわせて自身の知識もアップデートしていかなければなりません。また、高度な薬物治療を要する患者さまを担当する場合には、自らもより専門性を高めていく必要があります。「認定薬剤師」や「専門薬剤師」を取得することで、スキルアップを目指すのもおすすめです。
認定・専門資格は、その領域に関する一定の知識を持つ薬剤師であることの証明になります。薬物治療以外でも興味のある分野があれば自主的に学んでも良いでしょう。こうした取り組みが、自分だけのキャリアや強みをもつ一歩になるはずです。
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かかりつけ薬剤師として患者さまをサポートする
副作用や効果を継続的に確認し、多剤・重複投薬や薬物相互作用などを防ぐためにも、かかりつけ薬剤師・薬局にはさまざまな機能を備えていくことが求められています。なかでも患者さまの服薬情報の一元的・継続的管理や薬学的管理および指導は最たるものと言えるでしょう。また、開局時間外に求めに応じた調剤業務や在宅対応を行うことも重要です。
それ以外にもかかりつけ医や医療機関には、患者さまから得た情報を必要に応じてフィードバックしたり、処方提案を実施したりすることが求められます。とくに服薬状況や副作用の有無、飲み残しがある場合には残薬管理と処方の変更提案も含めて行い、患者さまの健康をサポートしていきましょう。
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薬剤師の業務は対物業務が重視されてきた経緯から、薬剤師以外の方から見て具体的な業務内容がわかりにくく、「薬剤師はいらない」と考えられてしまうことがありました。しかし、近年は対人業務へのシフトチェンジが進んでいるため、世間が抱く薬剤師のイメージは少しずつ変化していくでしょう。
しかし、対物業務と対人業務そのどちらにおいても、薬剤師がもつ薬への深い知識があってこそ成り立つということを忘れてはいけません。薬剤師として研鑽していく姿勢を忘れず、今後は薬剤師のもつ専門知識を対人業務で発揮し、各方面から必要とされる薬剤師になりましょう。
ファルマラボ編集部
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