- 公開日:2022.02.02
帯状疱疹に悩む患者さまへの対処方法は?治療方法や市販薬の有無も解説
帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスによって起こる皮膚の病気で、年々増加傾向にあることが知られています。抗ウイルス薬による薬物治療が効果的であるため、症状があらわれたらなるべく早いうちの服用開始が必要です。
なお、現在のところ市販薬は販売されておらず、帯状疱疹が疑われる場合には受診勧奨が求められます。
この記事では、帯状疱疹の原因や症状、治療方法、市販薬の有無、患者さまへの対応方法について解説していきます。
帯状疱疹の原因や症状は?
帯状疱疹とは、体内の水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスと呼ばれるヘルペスウイルスの一種によって引き起こされる感染症です。
小児期などに、このウイルスにはじめて感染すると水ぼうそうを発症しますが、このとき、おもに皮膚にあらわれた発疹から神経を経由して神経節内にウイルスが潜伏します。
その後、疲労やストレス、加齢などが引き金となって免疫機能が低下すると、神経節内に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスは再び活発化する場合があります。再活性化したウイルスが神経を伝わって皮膚に戻り、時に痛みを伴う発疹を発生させます。これが帯状疱疹です。
帯状疱疹の症状は、ピリピリと刺すような痛みを伴う多数の赤い斑点と水ぶくれが、体の左右どちらかの神経に沿って帯状に生じるのが特徴です。多くは上半身にあらわれますが、頭部や顔、目の周りにあらわれるケースもあります。
頭部や顔に症状があらわれた場合には、合併症として耳鳴りや結膜炎、顔面神経麻痺などを伴う場合もあります。50~60代の女性に好発することがわかっており、80歳までに約3人に1人が発症すると言われている病気です。
帯状疱疹の治療方法
帯状疱疹の治療には、原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスを抑える抗ヘルペスウイルス薬の内服を用いるのが一般的です。
抗ヘルペスウイルス薬はウイルス増殖に必要なDNA複製を阻害し、ヘルペスウイルスの増殖を抑えることにより、急性期の皮膚症状や痛みなどをやわらげ、治るまでの期間を短縮する働きがあります。治療の開始が遅れ重症化してしまった場合には、点滴による入院治療が必要となる場合もあるため注意が必要です。
痛みをやわらげる目的でアセトアミノフェンやNSAIDsなどの消炎鎮痛剤が併用される場合も。NSAIDsは内服薬だけでなく、外用剤も用いられることが多いです。
また、ウイルスによって傷ついた神経の修復を助けることを目的に、ビタミン剤の一種であるメコバラミン(おもな商品名:メチコバール®)や、皮膚のただれがひどいケースには、傷口から細菌の感染を防ぐ目的で抗生物質が用いられる場合もあります。
帯状疱疹後神経痛の治療
帯状疱疹では、神経の損傷によって皮膚の症状が治ったあとも痛みが残る場合があります。とくに3ヶ月以上にわたり痛みが続くものは、「帯状疱疹後神経痛(Postherpetic neuralgia:PHN)」とよばれており、焼けるような持続性の痛みやズキンズキンと疼くような痛みが特徴です。
帯状疱疹後神経痛の治療では、薬物療法や局所療法などの様々な治療法を組み合わせて症状の改善を目指します。薬物療法では、神経伝達物質の放出を抑制する働きのあるプレガバリン(おもな商品名:リリカ®)やミロガバリン(おもな商品名:タリージェ®)のほか、抗うつ薬や弱オピオイドのトラマドール(おもな商品名:トラマール®)などが用いられています。
帯状疱疹の市販薬はある?
帯状疱疹は、ウイルスが増殖しながら神経に沿って帯状に広がっていく病気です。ウイルスには神経を攻撃する特徴もあるため、治療が遅れてしまうと神経に重大なダメージを与えてしまい、つらい痛みが長引く「帯状疱疹後神経痛」などの後遺症につながる場合もあります。重症化させないためには、早めに医療機関を受診して、抗ウイルス薬による治療を開始することが重要です。
帯状疱疹の治療に用いられている抗ウイルス薬には、アシクロビル(おもな商品名:ゾビラックス®)やバラシクロビル(おもな商品名:バルトレックス®)、ファムシクロビル(おもな商品名:ファムビル®)、アメナメビル(おもな商品名:アメナリーフ®)などがありますが、これらの成分が配合された市販薬は現在のところ販売されていません。
帯状疱疹が疑われる患者さまから市販薬の利用について相談があった場合には、早期の適切な治療が重要であることを伝え、専門の医療機関への受診勧奨を行いましょう。
受診勧奨の前に、帯状疱疹が疑われる患者さまへの対応
帯状疱疹が疑われる患者さまを対応した際は、以下の確認やお声がけを行います。
確認すべきこと
帯状疱疹のおもな症状として、ピリピリ、チクチクするような痛みや発疹があらわれますが、虫刺されやかぶれとの鑑別が難しい場合も多いため、水ぼうそうの既往歴や免疫低下などの帯状疱疹の要因について確認します。
また帯状疱疹では、左右のどちらか片側に症状が出ることや、発疹が細長い帯のような形に集まること、離れた場所にあらわれないことが特徴であるため、発症部位についての確認もポイントです。
伝えるべきこと
市販薬での治療は難しいことや早期の治療が必要であることを伝え、皮膚科など専門医への受診勧奨を行いましょう。治療が遅れると、帯状疱疹後神経痛などの合併症を発症する危険性が高くなる点にも言及します。
なお、帯状疱疹として人にうつることはありませんが、乳幼児など水ぼうそうにかかったことのない人には、水ぼうそうとしてうつる可能性があるため、接触を避けるように伝えるとよいでしょう。
帯状疱疹の最新動向にも注目
この記事では、帯状疱疹の原因や症状、治療方法、市販薬の有無、患者さまへの対応方法について解説していきました。
帯状疱疹は早期の治療開始により、症状の緩和や合併症の軽減につながることが期待されています。一方で、初期症状が軽度である場合も多いため、医療機関を受診せず市販薬で治療しようと考える患者さまも少なくありません。
対応した患者さまに帯状疱疹が疑われる場合には、積極的に受診勧奨を行いましょう。また、近年では50歳以上の方に対する帯状疱疹の予防に対して、水痘ワクチンが使用できるようになりました。最新動向を把握し、患者さまに適切な情報提供ができるようにしましょう。
監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん
2004 年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012 年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。
主な著書に『OTC医薬品 どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』