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  • 公開日:2019.03.01
  • 更新日:2020-02-04

チーム医療における病院薬剤師の役割は?必須スキルや活躍事例など

チーム医療における病院薬剤師の役割は?必須スキルや活躍事例など

多職種のメディカルスタッフが働く病院では、「チーム医療」が注目を集めています。

病院薬剤師も、チーム医療に参加することは不可欠であり、医薬品の専門家としての職能を発揮することが期待されています。また、チーム医療では様々な職種と関わらなくてはならないため、医薬品の知識だけでなくコミュニケーション能力も求められます。

この記事では、【チーム医療の現状や問題点】に加えて、【チーム医療における薬剤師の役割】などについて解説します。

「チーム医療」とは?

「チーム医療」とは、一人ひとりの患者さまの状態に合わせて、多種多様な医療専門職が様々な場面で関わっていく医療の取り組みのことを指します。

近年では、医療の高度化や複雑化に対応するために、多職種が高い専門性を発揮し合うことにより、患者さまごとの状況に適切な医療を提供することが求められています。入院中や外来通院中の生活の質(QOL)の維持・向上を実現して、患者さまの人生観を尊重した治療を行う。そうした医療の実現に期待が寄せられています。

厚生労働省は、2009年8月から2010年2月にかけて「チーム医療の推進に関する検討会」を開催。2010年3月には、報告書『チーム医療の推進について』をまとめました。さらに、同年5月には「チーム医療推進会議」を立ち上げ、2013年10月まで全20回にわたりチーム医療の推進について検討を行いました。

チーム医療で見込める効果

チーム医療に参画するメンバーが、多方面の専門的な立場で職能を発揮すれば、患者さまの疾病の早期発見や回復促進が期待できますし、重症化予防や生活の質の向上などに繋がるきめ細かく良質な医療を提供できるようになります。さらに、それぞれの職種から見た患者さまの情報を幅広く共有することにより、治療の効果や回復の過程をしっかりと把握できるため、医療ミスを防止する手段にもなり得ます。

医療提供者側のメリットは、医療の効率性の向上による負担の軽減をはじめ、医療安全の確保や専門性の向上などです。チーム医療の促進・活用は国をあげての課題となっており、それぞれの職種が垣根を越えて力を発揮していくことが何よりも大切だと言えるでしょう。

チーム医療の現状と問題点

チーム医療の重要性が叫ばれる一方で、難しさも指摘されています。互いの職種の専門分野や仕事内容をよく把握していないことによって、業務範囲を明確にすることが出来ず、チーム医療に支障をきたす場合があるのです。

チームで協働して、患者さま個々のニーズに応えるには、情報共有のためのカルテづくりやカンファレンスに時間を割く必要があります。しかし、十分な時間を確保できないことから、すべての病院でチーム医療が導入されているわけではありません。その他、マンパワー不足を理由にチーム医療が活用できていなかったり、診療報酬などの評価が十分でないことを理由に単なる業務負担増と捉えられていたりすることも問題と言えるでしょう。

チーム医療における薬剤師の役割

病院薬剤師の仕事内容は多岐にわたりますが、従来の調剤業務や製剤業務に加えて、チーム医療に参画することもあります。チーム医療は、医師や薬剤師、看護師、管理栄養士などの多種多様な医療スタッフが互いの専門性を尊重し、最大限の能力を引き出し合うことによって最善の治療を行うことが目的です。

最適な薬物治療には、薬剤師による投与設計や適正使用の促進、副作用のモニタリングが不可欠です。薬物療法は急激な進歩を遂げており、高い有効性を持っている反面、十分な知識を有した上で使用しないと悪影響を与えてしまうケースも珍しくありません。

関わり方の例として、「リハビリテーションチーム」では医師や看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などと、「緩和ケアチーム」では医師やがん看護専門看護師、医療ソーシャルワーカー、心理士などと関わることが多いでしょう。他の職種からアドバイスを求められることも多く、医薬品の専門家である薬剤師の役割は大きくなりつつあります。

薬剤師に期待される業務の具体例

薬物療法の高度化や後発医薬品の種類の増加などを背景に、チーム医療において薬剤師に期待される役割はこれまで以上に高まっています。薬剤選択をはじめ、投与量や投与方法、投与期間などの処方提案。さらには、薬剤の取り扱いについて他の職種にアドバイスをしたり薬物の血中濃度や副作用のモニタリングなどの結果に基づいて副作用の発現状況や有効性の情報を共有したりと、薬の専門家としての様々な業務が求められています。

在宅医療をはじめとする地域医療においても、薬剤師に期待される業務はたくさんあります。たとえば、入院患者の持参薬の確認・管理や退院後の薬剤の服薬指導、外来で治療を受けている患者さまに対する薬学的管理などが挙げられるでしょう。

病院薬剤師に求められる必須スキル

病院薬剤師に求められるスキルとして、「幅広い業務に対応できる薬剤師経験と、医薬品の専門家としての高度な知識」が挙げられます。「調剤業務や病棟業務、院内製剤業務、注射業務、医薬品情報業務などのスキル」は不可欠です。

近年では、診断結果に基づいて薬剤師が処方設計や提案を行い、それを踏まえて医師が処方するといった手順も見られるようになってきました。従来の調剤業務だけでなく、より安全で質の高い薬物治療が実施されるよう積極的なアプローチが求められています。

また、チーム医療によって様々な職種の方と関わるようになった今日では、「コミュニケーション能力」も必須スキルの一つと考えられています。他部署と連携するための提案能力や、業務の調整を円滑に進めるための調整能力を身につけましょう。

相手の職能をきちんと理解することも重要なので、普段から良好な関係を築いておくことも重要です。他職種に圧倒されることなく、医薬品の専門家として自信を持って提案できる薬剤師が、今後活躍の場を見出していくことでしょう。

チーム医療において活躍する薬剤師の事例

栄養サポートチームの取り組み例

栄養サポートチームでは、栄養障害の状態にある患者さま、またはそのハイリスク患者さまに対して、複数の専門職種が協力してサポートを行います。必要な時に必要な対応を行うことで、患者さまの生活の質を高めるだけでなく、原疾患の治療効果の促進および感染症等の合併症を予防し、患者さまの早期退院に繋げることが期待されています

そうした中で薬剤師の役割は、重症病棟を中心に病棟配属され、薬剤を用いた栄養サポートを実施すること。食べ物との相互作用や薬剤による副作用を評価したり、患者さまの栄養状態に応じた投与経路を設計したりすることもあるでしょう。カンファレンスに参加して情報共有を行うことも大切な仕事です。

抗菌薬適正使用推進チームの取り組み例

病気の治療の場である病院は、多様な病原体が集まる場所。院内感染が課題の一つとされています。とくに、抗菌薬や消毒薬の多用によって薬剤耐性菌が発生することが知られており、これらの適正使用の必要性が訴えられています。

抗菌薬適正使用推進チームは、感染対策や薬剤耐性菌監視などの院内感染対策活動を行うことによって、院内感染を未然に防ぐ役割があります。抗MRSA薬使用症例および血液培養陽性症例を対象に病棟ラウンドを実施して、抗菌薬の選択や投与量、投与期間、血中薬剤モニタリング(TDM)などの相談指導も行われています。

そうした中で薬剤師の役割は、抗菌薬使用状況や生化学検査、血液検査のデータを収集して、患者さまごとのラウンド資料を作成すること。抗菌薬の投与設計やアドバイスを行うこともあります。

周術期(集中治療)におけるチーム医療の取り組み例

集中治療の対象となる患者さまは重度の疾患を抱えているだけでなく、心機能、腎機能、肝機能、呼吸機能などの機能が低下しています。そうした患者さまに対する急性期治療では、薬物療法の占める割合も大きいため、薬剤師の活躍する場面も幅広いでしょう。

治療法が進歩していく中で、急激な作用をもつ薬剤の多種併用や、患者さまの状態に応じたきめ細かな投与薬剤、また様々な医療機器が使用されるようになっており、チーム医療において各職種の医療スタッフがその専門性を発揮することが求められています。

そうした中で薬剤師の役割は、医師が行う時間単位での薬物治療の処方サポートや適切な投与経路の提案、予想される副作用を中心とした患者さまのモニタリングなどが挙げられます。医薬品管理についても、緊急時に必要な薬剤の期限確認を行い、医師や看護師と協働して必要とされる薬剤の選定や在庫数の設定、簡潔な薬剤管理システムの構築を行います。

薬剤のプロとして医療の現場で力を発揮する

チーム医療の現状や問題点に加えて、チーム医療における薬剤師の役割などについて解説してきました。

病院では、医師や薬剤師をはじめとした様々な医療系職種が働いており、それぞれの専門分野が存在しています。割りあてられた領域の仕事をこなすことはもちろんですが、現在では複数の医療系職種がチームを形成して業務にあたることが一般的になりつつあります。

薬剤師は医薬品の専門家としてアドバイスを求められることも珍しくありません。チームの中で活躍できるように、スキルを高めましょう。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/03/01

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