- 公開日:2018.12.05
「福業」で薬剤師の魅力を再発見。響野ユカさんインタビュー【薬剤師+シンガーソングライター】
薬剤師として働かれている方の中には、「もっと趣味を生活に取り入れたい」「薬剤師の仕事をしながらその他の活動もしてみたい」と思っている方が多くいらっしゃることでしょう。
最近では薬剤師の間でも、自分がやりたいと思った活動に励み、日々を充実させている方が増えています。様々な雇用形態や副業解禁など、自由な働き方ができるようになった今、自分らしく働く方の人生を知ることで、新たな発見があるのではないでしょうか?
「今後のキャリアに悩む薬剤師の方のロールモデルとなれば」という思いから、副業をされている薬剤師の方にお話をお聞きするインタビュー企画が始まりました。
今回は第1弾。シンガーソングライターをはじめ、コンサルタントやヘルスケアブランドの運営など、幅広く活動を広げる【響野ユカさん】にお話をお伺いしました。
薬剤師とシンガーソングライターの両立
大学卒業後、約3年間MRとしてお仕事をされていたそうですが、なぜそのようなファーストキャリアを選択したのでしょうか?
就職活動の時にMRの仕事を知って、色々な人と関われるのが楽しそう!と思って、MRの仕事をファーストキャリアとして選択しました。実際に働いてみると、人と話すことや自分で考えて動く仕事であることが楽しくて。新卒時代は、やりがいを持って働くことができていました。
一方で、当時はMRの仕事をしながら薬剤師の国家試験の勉強をしていたのですが、なかなか受からず...。結局、MRの仕事を3年で辞めて薬ゼミに半年通いました。その後、薬剤師の資格を取得したのをきっかけに、調剤薬剤師に転職することを決めたんです。
同時に、MRや薬剤師の仕事と並行して、シンガソングライターとしての活動もしていました。現在では、ヘルスケアブランドの運営やコンサルタントといった幅広い活動をしながら、様々な調剤薬局にて薬剤師の仕事を経験させてもらっています。
響野さんがシンガーソングライターとして活動しだしたのは、社会人になってからだそうですね。始めたきっかけは何だったのでしょうか?
音楽活動を始めたのは社会人2年目の時です。何か趣味を見つけようと思ってたまたまフリーペーパーを見ていたら、パッと目に入ったのが「あなたの鼻歌をかたちにします」という音楽スクールの宣伝で。今まで書きためていた詩を曲にしたい!という思いが湧き、そこから音楽を始めました。
大学時代のときも軽音楽部と吹奏楽部の活動はしていたのですが、卒業後は音楽から離れていました。音楽で生きていきたいと思った時期もありましたが、夢を追うの恥ずかしいことだと思って、周りに出さないようにしていたんです。
社会人になっても音楽をやるつもりはなかったのですが、心のどこかでは、また音楽をやりたいという気持ちが眠っていたのかもしれません。
2014年にはメジャーデビューを果たしていますね。音楽活動が活発になっていく中で、薬剤師の仕事との両立は大変だったのではないでしょうか。
2014年は響野ユカとしてシンガーソングライターの活動を本格化し、ライブを行ったり、ラジオに出演したりしました。そんな中で、「キラメクセカイ」という曲でメジャーデビューをさせて頂いたんです。
薬剤師とシンガーソングライターの両立が、大変だと思ったことは特にないです。1週間のスケジュールとしては、当時は常勤だったので週5は薬剤師として働き、土日にライブを詰めていました。さらにボイストレーニングと曲作りを週に1回。早番だと17時に仕事が終わるので、その後の時間などを使っていました。忙しくても、自分のやりたいと思うことができていたため、とても楽しく、熱中していましたね。
音楽活動との両立よりも、MRから調剤薬剤師に転職をしたことによる環境や働き方、調剤薬剤師の仕事そのもので悩んでいました。薬の勉強量が多かったり、もともと忙しい薬局だったりしたので、どうしても大変だと思うことに目が行きがちになってしまって。「私はMRの仕事の方が向いているんじゃないか」と、前職と比較して後ろ向きになったこともありましたね。
当時は日々の忙しさに追われるばかりでしたが、この薬局で4年間たくさん勉強させてもらった経験があるからこそ、今様々な患者さまに向き合えています。この期間のありがたみは、様々な薬局や薬剤師以外の活動をしていくうちに気づいたんです。
母のガンで「健康」を見直し、活動の幅を広げる
2015年以降、音楽活動の他にコンサルタントなど、活動の幅を広げたきっかけは何でしょうか?
母が喉のガンになってしまったんです。いつも通り薬局で働いている時に、母から電話がかかってきて、「お母さん、死んじゃうかも」と。母はもともととても元気な女性だったのですが、ある日突然健康が奪われてしまったことにショックを受けました。
この一件で、「健康に生きる」とはどういうことなのかを深く考えさせられました。私自身も、20代の時は体が弱く毎日薬を飲んで過ごしていたので、自分自身の健康も見直さなければいけないと思ったんです。「健康」について考えていた際に、しっくりきたのがWHO憲章が掲げている「健康」の定義でした。
「健康とは、肉体的にも精神的にも社会的にもすべてが満たされた状態のこと」心と体と社会的に満たされている自分にもなりたいし、そのような場を提供したり周りにアドバイスしたりできる自分にもなりたい。そう思い、トータルした「健康」をサポートするために、以降はファイナンシャルプランナーや健康経営アドバイザーなどソーシャル領域の資格もとりました。
様々な知識をもとに「健康」のサポートに取り組まれているんですね。現在は薬剤師とそれ以外の仕事をどのようにされているのでしょうか?
現在の薬剤師の仕事としては、シフトの融通がある程度効く薬局にて、非常勤薬剤師として働いています。1ヶ月ごとに薬剤師のシフトをまず決めて、空いた時間に自分のビジネスを入れる形で。
薬剤師以外の仕事では、最近は自分と同年代の女性の健康をトータルでサポートする活動が多いです。例えば、週1で女性限定のカウンセリングを行う「Salon de はっぱ」や、漢方やアロマなどの未病対策ブランド「響-sinfonìa-」の運営などがあります。
アロマや漢方は病気になる前の不調を治すために有効なんですね。特に同年代の女性の健康を支えたいと思うようになったのはなぜですか?
薬剤師シンガーソングライターとして音楽活動をしていた際、女性から風邪、花粉症、生理痛など病院ではなかなか話せないちょっとしたお薬相談をされることが多かったんです。悩みに対するアドバイスをすることに、とてもやりがいを感じたのがきっかけとなっています。
迷ったり悩んだりしている女性にアドバイスができるようになりたいと思っているのは、自分の曲が女性から共感されて嬉しかった経験に紐づいています。音楽活動をやっていたからこそ、自分のやりがいに気づけたのかもしれません。
過去の音楽活動があったからこそ、悩んでいる人にアドバイスしようと活動されているんですね。では今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?
女性が綺麗になれるトータルヘルスケアのスペースを作りたいと考えています。
女性を支えたいという思いだけでなく、「品格美人」をつくり出していきたいです。体の先端まで気を遣えるような心持ちの女性であり、そういう女性ならば、明るく楽しく生涯美しく生きていける。私は、誰でも「品格美人」になれると思っています。
今は、髪・肌・瞳・唇・爪という5つの先端が綺麗になる品格漢方茶を通じて、「品格美人」をつくり出すプロジェクトを進行中です。女性が欲しいものといえば美容。美しさが手に入れば、自然と健康も手に入ると思うんです。
「健康」を幅広く捉えて、女性の美を支え、少しでも多くの「品格美人」をつくっていければと。そのような女性が増えることで、私自身もイキイキと働いていきたいと思っています。
やりたいことがあるなら思い切って挑戦してほしい
最後に、今後のキャリアを悩む薬剤師に向けて一言お願いします。
薬剤師には資格はとても大きな糧であり、薬剤師は他の職業に比べて恵まれている職業です。挑戦したいことがあるなら、思い切って挑戦して欲しいです。
最近では雇用形態も様々で、働き方が選べる時代。副業解禁の流れもありますよね。私の場合は「福業」として「複業」をしています。他の仕事をやったことで、薬剤師の魅力を再発見したり、自分のやりがいを見つめ直せたり。様々な環境で働くことを経験したことで、自分がどれだけ恵まれているか気づくことができたこともありました。
薬剤師をしながらそれ以外の活動にチャレンジするのも良いですし、もちろん薬剤師の仕事の中で可能性を広げるのもありです。薬剤師の仕事は、やりたいことをやれる可能性が無限にあると思っています。
将来のことは誰しも迷い悩むもの。困った時は、一人で抱え込まず先輩など周りの人に相談した方が良いです。私もたくさん周りに助けられてきたので。うまく周りを頼ってくださいね。
- 響野ユカ(きょうの ゆか) さん
昭和薬科大学卒業後、アストラゼネカ株式会社でMRとして従事。
その後、常勤薬剤師の経験を経て、現在は独立系薬剤師として様々な場所で勤務。
2009年から開始した音楽活動では2014年にUniversal Musicよりリリースした楽曲『キラメクセカイ』でメジャーデビュー。
以後、本来の健康とは?を考えるようになり、薬剤師・音楽家・コンサルタントの独自目線でヘルスケア窓口の活動を開始。
未病ケアブランド『響-sinfonìa-』立ち上げ、プライベートサロン『Salon de はっぱ』運営。
現在は女性が輝ける社会に貢献すべく、「1日1杯の漢方茶で品格美人を作り出す」漢方の専門家として活動の幅を広げている。