- 公開日:2019.05.13
AI時代の到来で薬剤師の仕事がなくなる?現場が考えるこれからの生存戦略
AIとは人工知能のことで、人間の脳が行う知的な作業を模倣したコンピュータプログラムなどをあらわします。昨今では、このAIの急速な進歩により「多くの仕事がAIに奪われてしまう」と話題にあがるようになりました。
薬剤師の仕事においても電子化や機械化が進んでいますが、いずれはAIによって薬剤師の仕事がなくなってしまうのではないかと不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、「薬剤師の仕事におけるAIの影響」について解説していきます。さらに「今後の薬剤師に求められる役割」についても、考えていきましょう。
- 薬剤師の代表的な業務とは?
- 正確性が求められる事務処理ではAIが活用され始めている
- 服薬指導などの対人業務は、薬剤師の力が圧倒的に勝る
- 患者様とのコミュニケーションを重視する薬剤師は、必要とされ続ける
薬剤師の代表的な業務とは?
AIについて考えていく前に、薬剤師の業務内容にはどのようなものがあるのか、あらためて整理してみましょう。薬局薬剤師を例にあげると、「調剤業務」「服薬指導」「薬歴管理」という3つの業務が中核を担っています。
①調剤業務
調剤業務は、薬剤師の中心的な業務となりますが、医師の処方箋にもとづいて医薬品を正確に取り揃える業務で、軟膏や水剤の調製や一包化もこの調剤業務に含まれます。
②服薬指導
服薬指導は、薬剤師が患者さまに対して提供する医薬品の情報提供のことをあらわします。薬剤師として働く上で重要な業務の一つであり、かかりつけ薬剤師において最も重視しなくてはならないポイントでもあります。
③薬剤管理
薬歴管理では、医薬品を安心安全に使用してもらえるように服薬指導の記録を残します。服薬指導の重要性はご説明したとおりですが、充実した服薬指導を行うためには、薬歴がきちんと整備されている必要があります。
④その他
OTCの販売や相談、在宅医療など様々な業務がありますが、今回の記事では「調剤業務」「服薬指導」「薬歴管理」を中心にご説明していきます。
正確性が求められる事務処理ではAIが活用され始めている
AIの進化は目覚ましく、人間を超える日も近いと言われています。実際に囲碁やチェスの分野では、AIが人間の名人に勝ったというニュースも出てきており、一部の仕事においてもAIが活用されるようになりました。
このように、人間に比べて優れていると言われることの多いAIですが、全ての面において勝っているわけではありません。
AIの得意分野として「大量かつ正確なデータ処理」や「データに基づいた単純作業」、「統計処理」などがあげられます。薬剤師の主な業務内容で考えると、「調剤業務」や「薬歴管理」などが該当するでしょう。
最新の薬歴システムでは、AIの技術を用いた音声入力や予測変換も導入されており、これらの分野は今後もさらに発展していくと考えられています。
服薬指導などの対人業務は、薬剤師の力が圧倒的に勝る
AIの苦手分野としては、「人間とのコミュニケーション」や「共感・協調のスキル」、「創造的な作業」などがあげられます。薬剤師の業務内容で考えると、服薬指導に代表される「対人業務」です。
体調が悪いときにAIに心配されても、「なんだかなぁ」と思ってしまうものです。AIと仲良くなることや、気心が知れるということも難しいでしょう。患者さまとのコミュニケーションにおいては、薬剤師に勝るものはありません。
また、近年の薬剤師をとりまく環境の変化にも注意が必要です。
薬剤師に求められる役割として、かかりつけ機能や健康サポート機能などが注目されるようになりました。在宅で療養を行っている患者さまに対する在宅医療も、今後の医療制度の中では中核を担っていきます。
医療スタッフはもちろんのこと、地域住民との密なコミュニケーションが求められるため、薬剤師が力を発揮していくことが期待されています。
患者様とのコミュニケーションを重視する薬剤師は、必要とされ続ける
薬剤師の世界では、調剤業務や在庫管理、薬歴管理などにおいてAIが導入されつつあります。しかし、患者さまとのコミュニケーションが鍵を握る分野においては、人間の医療従事者が必要なくなることはありえないのです。
また、事務的な業務にAIが用いられることによって従来の雑務が減り、患者さまとのコミュニケーションに時間を割けるようになることも期待されています。
薬剤師とAIが上手に業務を分担することができれば、薬剤師は今よりさらに効率よく業務を進められるようになるでしょう。
ただし、服薬業務においてただ薬の用法と用量を説明するだけでは、患者さまとのコミュニケーションとは呼べません。
AIが発展しても必要とされる薬剤師は、医薬品の専門家としての高度な知識を持つことはもちろん、「コミュニケーションのスキルや共感・協調のスキル」をあわせ持つ薬剤師であると考えられています。
患者さまの服薬に責任を持ち、気持ちや様子をくみとったコミュニケーションで、精神面も支えることができる薬剤師を目指しましょう。
AIと人間、お互いの得意分野を活かして働こう
薬剤師の仕事におけるAIの影響と、今後の薬剤師に求められる役割について解説していきました。
単純な事務作業やデータ処理、解析作業においては、人間がAIに勝つことは困難です。しかし、対人コミュニケーションや共感・協調というスキルにおいては、AIではまだまだ不十分といえますね。
薬剤師の業務においても、調剤業務や薬歴管理などはAI化がすすむことは避けられませんが、その一方でかかりつけ業務や在宅業務においては、薬剤師が大きく力を発揮していくと考えられています。
今後求められる薬剤師となることができるように、コミュニケーションの能力を高めていきましょう。
ファルマラボ編集部
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