- 公開日:2020.07.03
ジェネリック使用率80%達成へ緊急策!薬剤師にできることとは?
医療費の削減を叶えることができる「ジェネリック医薬品」。厚生労働省はこれまでもジェネリック医薬品使用の推奨を続けており、令和2年9月までに80%以上の使用率を達成するよう目標を掲げています。
期限が迫りつつある今、ジェネリック医薬品の使用状況はどのようになっているのか、ジェネリック医薬品使用率アップのために薬剤師ができることなどをご紹介していきます。
ジェネリック医薬品ってどんな薬?
ジェネリック医薬品は「後発医薬品」とも呼ばれ、特許期間が切れた(新薬)と同じ有効成分を含む薬のことです。ご存じの通り、新しい薬を一から研究・開発するには、多くの時間と費用が必要。一般的な開発費は数百億~数千億円にものぼるとされています。
そのため、新しい薬を開発した製薬会社には、最大で25年の特許期間が認められており、その間に別の製薬会社は同一の成分を含む薬を販売することが禁じられています。この特許期間が満了した後は、別の製薬会社も同一の有効成分を使用した薬を製造・販売することができるようになるのです。薬の効果・安全性などはすでに新薬が販売されている段階で立証されていますので、新たな開発に係る費用は概ね一億円程度と大幅なコストダウンが可能に。そのため、ジェネリック医薬品は新薬に比べ、価格を抑えて市場に流通しており、医療費削減に大きく寄与していると言えます。
また近年では、新薬と同じ成分を含みながらも、独自に味や形に改良を加えているジェネリック医薬品も少なくありません。さらに、「オーソライズド・ジェネリック(AG)」と呼ばれる、新薬メーカーから許諾を得て、原薬や添加物および製法等が新薬と同一のジェネリック医薬品も増えてきています。これらは新薬と同等の効果を持つか否かは厚生労働省によって厳しく審査されていますので、安全に使用することができると考えてよいでしょう。
ジェネリック医薬品の使用状況は?
新薬の2~7割ほどの価格で流通するジェネリック医薬品は、かねてから医療費削減につながるとして、世界中で使用が推奨されてきました。しかし、日本は先進国の中で使用率が低く、平成26年10月から翌年9月までの日本全国での使用率は48.7%。同時期の諸外国との使用率と比べると、アメリカ92.1%、ドイツ83.1%、イギリス73.1%と日本はジェネリック医薬品がまだ浸透していなかったことが分かります。そこで平成27年に閣議決定されたのが、29年の使用率70%達成、令和2年9月までに80%達成を目指す取り組みです。
国を挙げて様々な取り組みがされるなか、協会けんぽの公表によれば、2019年12月末時点での全国のジェネリック医薬品使用率は78.2%に達したとのこと。以前に比べれば使用率は大きく上昇したとはいえ、ここ最近では使用率の伸びは停滞傾向。この状況では、2020年9月に使用率80%を超えるのは困難であると考えられています。
一方で、すでに使用率80%の目標を達成したのは15都道府県あり、トップは沖縄県(88.3%)です。しかし、未だに使用率が低い都道府県も多く、徳島県では69.1%と平成27年に閣議決定された中間目標の70%に届かないケースも見られます。このようなデータ上の数値からも、ジェネリック医薬品の使用率は地域格差が大きいことが伺えます。
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▼参考資料はコチラ後発医薬品の使用割合の推移と目標
ジェネリック医薬品使用率アップのための対策とは?
では、ジェネリック医薬品の使用率向上を促すために、現在どのような対策が行われているのかを詳しく見てみましょう。
診療報酬上の評価
ジェネリック医薬品の使用率をアップさせるには、医療機関の理解と協力が不可欠です。そこで厚生労働省は、ジェネリック医薬品を積極的に導入することで診療報酬をアップさせるなど改定を行いました。
具体的には、「外来後発医薬品使用体制加算」などを新設。さらに、従来の一般名処方加算、後発医薬品調剤体制加算やDPC病院機能評価係数Ⅱの後発医薬品指数などに必要なジェネリック医薬品使用割合の引き上げなども行われました。それに伴い、多くの医療機関はジェネリック医薬品の積極的な導入を行っており、近年ではジェネリック医薬品がある薬剤は原則として新薬を処方しないとする医療機関や保険薬局も増えています。
情報提供・普及啓発
日本国内で流通しているジェネリック医薬品は、厚生労働省によるいくつもの厳しい試験をパスし、新薬と同等の効果があると認められたもののみです。しかし、患者さまのなかには「新薬の方が効果も高く安全である」と考えている方も少なくありません。そこで、一般の方々に対してポスターやリーフレット、広報番組などでジェネリック医薬品に対する正しい知識の普及啓発を厚生労働省などが行っています。
また、健康保険の保険者には、新薬とジェネリック医薬品との差額を通知する書面を送付しています。協会けんぽでは、これまでこのような減額通知の対象者を20歳以上の方としていました。しかし、2020年9月の目標達成が厳しい状況であることを鑑み、対象年齢を15歳に引き下げるという緊急策を2020年2月から実施しています。さらに、後発薬の使用割合が低い医療機関と薬局への訪問指導や情報提供なども実施していくとのこと。そのほか、医療従事者には後発医薬品の情報を発信する「メディナビ」などの配信サービスを用いた情報提供が進められているところです。
安全供給・品質の信頼性確保
ジェネリック使用率向上のためには、ジェネリック医薬品自体の信頼性を高め、安定した供給体制を整えていくことが大切です。そのため、厚生労働省は「ジェネリック医薬品品質情報検討会」の開催、製薬会社による品質の情報開示などを推奨しています。また、供給不安を避けるために、現在ではコスト増要因とならない規格揃えの範囲を製薬会社に通知するなど、対策が講じられています。
ジェネリック医薬品使用促進のため薬剤師にできること
医師から発行された処方箋に従って調剤を行う薬剤師は、ジェネリック医薬品使用率向上に最も関与していると言っても過言ではありません。では、具体的にどのようなことに注意すればよいのでしょうか?
まず、「一般名処方」された薬剤は、可能な限りジェネリック医薬品を採用すべく、患者さまに説明するようにしましょう。「一般名処方」では新薬・ジェネリック医薬品を保険薬局が自由に選択することができます。薬剤師が取りこぼしなくジェネリック医薬品を採用することで、使用率を大幅にアップさせることが可能です。
しかし、新薬の処方箋に変更不可とする記載がある場合は、ジェネリック医薬品を処方することができません。慌ただしい業務のなか、急いで処方箋を発行する医師も少なくないので、変更不可とする処方箋が多い医療機関に関しては、薬剤師から積極的な呼びかけを行っていきましょう。また、新たなジェネリック医薬品の販売が開始されたときは、医師が把握していないこともありますので、情報提供することも必要です。
ジェネリック使用率向上のカギは、薬剤師が握っている
患者さまのなかには「新薬の方が優れている」との先入観があり、ジェネリック医薬品を強く拒否するケースもあります。医学的な知識のない患者さまに安心して使用してもらうためには、ジェネリック医薬品の正しい情報を伝えられるかが重要なカギを握っています。
とくに薬剤師は、薬におけるプロフェッショナルであり、患者さまと最後に対面する医療従事者。リーフレットなどを上手に活用し、患者さまの抱える不安を解消するために、普段から準備をしておくことが大切です。新薬を強く希望する方に対し、いかにしてジェネリック医薬品の採用に促せるかは、薬剤師の腕の見せ所だと言えるでしょう。
【執筆者プロフィール】
医師ライター・成田亜希子
一般内科医として幅広い分野の診療を行っている。保健所勤務経験もあり、感染症や母子保健などにも精通している。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。
ファルマラボ編集部
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