業界動向
  • 公開日:2020.12.09

「病院薬剤師」の病棟業務とは?業務の内容や目的などを詳しく解説【薬剤師のお仕事ガイド】

「病院薬剤師」の病棟業務とは?業務の内容や目的などを詳しく解説【薬剤師のお仕事ガイド】

最近テレビドラマでも注目を浴びた病棟薬剤師。なかにはその仕事に興味をもち、もっと詳しく知りたいと思った方もいるのではないでしょうか。

昔から「薬剤師の花形」と憧れる人も多い病棟薬剤師ですが、その一方で「激務で身体が辛そう」「どんな業務があるのかよくわからない」といった声もあるようです。

そこで今回は、病棟薬剤師の実際の業務について詳しく解説していきます。なぜ薬剤師が病棟業務を行う必要があるのか、その背景についても知っておきましょう。

薬剤師の病棟業務における役割とは?

薬剤師の病棟業務における役割とは?

病棟業務における基本的な役割には、「入院患者に対して、最適な薬物療法を実施することで有効性・安全性の向上を目指すこと」があります。

さらに、 疾病の治癒・改善にも貢献し、患者さまのQOLの向上に努めることや、医薬品の適正使用を推進して副作用・薬害などのリスクから患者さまを守ること病棟での投薬過誤などのインシデントを未然に防ぐことなども求められます。

薬学の専門性を生かし、チーム医療の一員として職能を発揮することが病棟薬剤師には期待されているのです。

病院薬剤師の具体的な病棟業務を解説

ここでは具体的な病棟業務について解説していきます。

患者さま対応

病棟に入院される患者さま、入院中の患者さま、退院する患者さまなど、様々な状況に合わせた業務があります。たとえば、患者さまへの対応としては次のような業務があります。

  • 患者背景および入院持参薬の確認とその評価に基づく処方設計と提案
  • 患者状況の把握と処方提案
  • 副作用等による健康被害が発生した時の対応
  • 退院時における調剤薬局との連携
  • 薬剤師は薬剤の専門性を生かして、患者さまの薬に関する管理と服薬指導、他職種との協働による業務などを全般的に担当します。

    病棟薬剤師による他職種との連携

    病棟薬剤師が病棟業務に入ることで、他医療スタッフとも多くの連携が行われます。たとえば次のような業務では速やかに伝達や相談するなどの連携を行うことが求められます。

  • 医薬品の情報収集と医師への情報提供
  • 服薬中の薬剤による副作用のモニタリングと他医療スタッフの連携
  • 患者さまの病態や服薬状況による医師への処方提案や変更などの助言 など
  • 薬理学的に状態を推察しつつ、患者さまの変化を敏感に察知し、医師や看護師などに適切なアドバイスを行うなど、薬剤師ならではの視点が生かされる機会も多くあります。

    薬剤管理業務

    病棟でも薬局と同じような薬剤管理業務があります。病棟という特性からも、次のような薬剤管理業務が日常業務の多くを占めています。

  • 抗がん薬等の適切な無菌調製
  • 医療機関および病棟における医薬品の投与・注射状況の把握
  • 病棟における医薬品の適正な保管・管理
  • 病棟に係る業務日誌の作成等 など
  • 薬剤師は病棟で用いられる薬剤すべてに対して管理を行います。注射剤や点滴薬、抗がん剤など化学療法に用いる薬剤の混注など、薬剤師の基本的業務ともいえる調剤や管理に関する業務も多くあります。

    薬剤師が病棟業務を行うことによるメリット

    薬剤師が病棟業務を行うことによるメリット

    では、薬剤師が病棟で業務を行うことにより、どのようなメリットがあるのでしょうか?詳しく解説していきます。

    医師や看護師の負担軽減につながる

    前述にもあったように、薬剤師による病棟業務が拡大した背景には、医師や看護師が病棟における薬剤管理指導業務を行ってきたことがあります。薬剤師が専任で病棟に配置されることにより、医師や看護師の業務の負担が大きく減りました

    薬剤師が病棟業務に入るまでは、たとえば患者さまの入院持参薬の確認や服薬確認、さらに混注業務までを医師や看護師が担当するなど、本来の専門業務ではないことで負担が増えていました。薬剤師が病棟業務において薬剤管理指導業務に入ることで、医師は医師としての専門性を、看護師は看護の専門性をより発揮できるようになったのです。

    医療安全の観点からも期待

    薬剤のプロである薬剤師が臨床と近い場所に常駐することは、医療安全の面でもメリットがあります。たとえば、投与量ミスや薬剤の取り違えによる投薬過誤を防ぐことができる副作用のモニタリングをより専門的に行うことができるなど、様々な点で患者さまが安全な医療を受けられる体制整備につながっているのです。

    チーム医療により、よりよい医療の提供につながる

    チーム医療に薬剤の専門家である薬剤師が積極的に参加することは、質の高い医療を提供するためにも非常に有益です。診断と治療計画・治療行為を行う医師と、患者さまの日常的なケアを行う看護師、さらに薬剤のプロである薬剤師が一体となって連携することで、それぞれの専門性を生かした医療の提供が可能になります。結果的に医療レベルの発展にもつながり、患者さまにとっても大きなメリットがあるでしょう。

    臨床における薬剤師のスキルアップが期待できる

    病棟で勤務するということは、患者さまに一番近い場所で働けるということ。調剤室にこもっていては、患者さまが困っていること、辛いことなどの聞き取りはできません。薬剤の処方変更を提言するなど、患者さまの気持ちに寄り添った提案を行うことが、自身のやりがいやスキルアップにもつながるでしょう。

    また、臨床のスペシャリストである医師や看護師から学ぶことも多々あります。他職種の視点から新たな発見をしたり、ときには意見を交換し合うこともあるでしょう。そうした経験が身となり、さらに薬剤師としてスキルの幅を広げていけるはずです。

    病院薬剤師の「病棟業務」とは?業務拡大における背景

    病院薬剤師の「病棟業務」とは?業務拡大における背景

    薬剤師の病棟業務が拡大されることとなった背景には、医師や看護師など医療従事者の負担軽減・医療安全の向上があげられます。平成22年4月30日に「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」が出されるまでは、病棟における薬剤管理指導業務は多くの場合医師や看護師が実施していました。

    しかし、「薬剤師はまだ十分に病棟業務にて活躍できていない実態がある」という指摘がなされ、チーム医療に薬剤師がより積極的に参加することが医療において有益との見解が明確化されたのです。この方針が明らかになったことで、病院内での薬剤師の配置や業務の見直しが積極的に進められるようになりました。

    さらに、病棟薬剤師としての業務を実現させるために導入されたのが「病棟薬剤業務実施加算」です。努力義務という不明確なものではなく加算算定を認めることで、病院にとっても薬剤師の病棟業務を拡充することが利益になる仕組みが整備されました。

    保険医療機関に入院している患者について、薬剤師が病棟等において、病院 勤務医等の負担軽減及び薬物療法の有効性、安全性の向上に資する薬剤関連業務を実施している場合

    『病棟薬剤業務実施加算の原本』より引用

    という条件を満たすことで加算の算定が認められます。具体的には入院基本料に100点(週1回)の算定が可能です。

    ▽参考記事はコチラ
    病院での効果的な薬剤師業務の展開について
    病院薬剤師への招待
    薬剤師の病棟での業務について
    薬剤師の病棟業務の進め方

    まとめ

    今回は、病院薬剤師における病棟業務の内容についてご紹介させていただきました。薬剤師は、本記事でご紹介した業務以外にも、様々な役割を期待されています。

    それだけ活躍できる幅が広く用意されていて、期待値も高いということではないでしょうか。「薬剤師としてもっと深く医療に関わりたい」「患者さまやほかの医療従事者とスキルを高め合いたい」と考えている方は、ぜひ挑戦してみてくださいね。

    ファルマラボ編集部

    「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。

    記事掲載日: 2020/12/09

    あわせて読まれている記事