- 公開日:2020.12.04
【薬剤師向け】「アビガン(ファビピラビル)」とは?効果や副作用、薬価など解説
「アビガン®」は、新規作用機序をもつ抗インフルエンザウイルス薬のひとつで、2014年3月に条件付きの製造販売承認が行われました。胎児に対する催奇形性の可能性が指摘されていたため、通常のインフルエンザに用いられることはありませんが、近年では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化を防ぐ薬剤のひとつとして期待され、大きな話題を呼んでいます。
この記事では、「アビガン®」の効果や副作用、薬価などについて解説していきます。また、服薬指導の方法(抗インフルエンザウイルス薬として用いる場合)についても、詳しくみていきましょう。
アビガン®とは?新型コロナウイルス感染症の治療薬としても注目
「アビガン®(一般名:ファビピラビル)」は、すでに国内では抗インフルエンザウイルス薬として製造販売承認を取得している薬剤。ウイルスのRNAポリメラーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を防ぐメカニズムを有しています。既存の抗インフルエンザウイルス薬であるノイラミニダーゼ阻害剤は、ウイルスを細胞内に閉じ込めることで効果を発揮しますが、「アビガン®」はウイルスの遺伝子複製そのものを阻害し効果を発揮するため、薬剤耐性を生じないことが特徴です。
当初は、タミフルに代わる新しいインフルエンザ治療薬として研究が進められていましたが、動物実験で胎児に対する催奇形性の可能性が指摘されたため、条件付きの製造販売承認が行われました。催奇形性の危険性を有しながら承認が行われたのは、これまでの抗インフルエンザウイルス薬とは作用機序がまったく異なり(※1)、既存薬に耐性を示すウイルスが蔓延した場合の備えになると期待されたためです。
※1:ウイルスの遺伝子複製そのものを阻害する抗インフルエンザウイルス薬としては、のちにキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬のゾフルーザが発売されましたが、耐性ウイルスが生じやすいという懸念があるため、使用に慎重な医療機関も増えています。
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▼ゾフルーザの詳しい記事はこちら
【薬剤師向け】インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」とは? 効果や副作用、耐性、薬価を解説
現在では、ほかの抗インフルエンザウイルス薬が無効・効果不十分な新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、本剤を用いると国が判断した場合にのみ使用が検討される制限が設けられています。しかし、インフルエンザウイルスと同種のRNAウイルスである新型コロナウイルス感染症に対する効果が期待され、各国で研究・治験が開始されたという経緯があります。
「アビガン®」を発売する富士フイルム富山化学株式会社は、2020年9月23日、新型コロナウイルス感染症を対象に実施した 「アビガン®」の第3相臨床試験で、主要評価項目を達成したことを発表しています。156例を解析対象とした主要評価項目の中央値は、「アビガン®」投与群では11.9日、プラセボ投与群では14.7日。非重篤な肺炎を有する新型コロナウイルス感染症患者に「アビガン®」を投与すると、早期に症状を改善することが確認されています。
アビガン®の効果とは?
「アビガン®」の効能・効果は、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、ほかの抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る)です。
ほかの抗インフルエンザウイルス薬が無効・効果不十分な、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症が発生し、当該インフルエンザウイルスへの対策に使用すると国が判断した場合にのみ、患者さまへの投与が検討されると規定されています。
服用方法
1日目は1回1,600mg(8錠)を1日2回、2日目から5日目は1回600mg(3錠)を1日2回、合計5日間服用します。1日目の初回服用から2回目の服用までは、できる限り4時間以上あけて服用することが求められています。
※こちらは、新型または再興型インフルエンザウイルス感染症に用いる場合の服用方法です。新型コロナウイルス感染症に用いる場合では、効能・効果や、用法・用量が異なる可能性があります。
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アビガン®錠の服薬指導にあたって
アビガン®の副作用
「アビガン®」の副作用は、国内臨床試験および国際共同第Ⅲ相試験(承認用法および用量より低用量で実施された試験)において、安全性評価対象症例501例中、副作用が100例(19.96%)に認められました。主な副作用としては、血中尿酸増加や下痢、好中球数減少、AST(GOT)増加、ALT(GPT)増加などがあげられます。ほかの抗インフルエンザ薬と同様に、異常行動などのリスクについても注意が必要です。
また、動物実験において、初期胚の致死および催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人への投与が警告されています。精液中へ移行することから、男性患者に投与する際においても、その危険性について十分に説明したうえで適切な指導を行うことが求められています。
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アビガン®錠200mg
アビガン®の薬価と添付文書
現在のところ、「アビガン®」は薬価基準未収載の医薬品であるため、薬価は決められていません。また、添付文書は富士フイルム富山化学株式会社のホームページから確認することができます。インタビューフォームや医薬品リスク管理計画(RMP)についても、あわせて確認しておきましょう。
- ▼「アビガン®」に関する情報は以下をチェック>
富士フイルム富山化学株式会社ホームページ
アビガン®を服用する患者さまへの服薬指導の方法
「アビガン®」の確実な治療効果を得るためには初回服用直後から十分な血中濃度を維持すること、および5日間継続して服用することが必要であるため、コンプライアンスを意識した服薬指導が重要です。途中で症状が改善しても中止せず最後まで服用することを指導します。
服用し忘れた場合の対応として、気がついたときに1回分をできる限り早く服用する(ただし、次の服用時間が近い場合には1回とばして、次の服用時間に1回分を服用する)ことや、2回分をまとめて服用しないことを指導します。万が一、未服用薬が残った場合には、あとで服用したり家族やほかの人と共有したりせずに医師や薬剤師に相談のうえ返却するように指導することも重要です。
また、「アビガン®」は胎児に対する催奇形性の可能性が指摘されているため、以下の3点については、必ず実施しなくてはなりません。
説明用資材「アビガン®錠を服用される患者さんへ」や、医薬品リスク管理計画(RMP)によって求められる「アビガン®錠を投与する際の事前チェックシート」の活用に加えて、文書による同意(同意書への記入)を得ることも必要です。
「アビガン®」の正しい知識を身につけよう
この記事では、「アビガン®」の効果や副作用、薬価、服薬指導の方法などについて解説していきました。条件付きの製造販売承認が行われていることから、一般的なインフルエンザに用いられることはありませんが、薬剤師としておさえておくべき薬剤のひとつです。
2020年10月22日現在では、すでに新型コロナウイルス感染症の治療薬として承認されている米ギリアド・サイエンシズ社の「ベクルリー(一般名:レムデシビル)」と並び、「アビガン®」にも高い期待が寄せられています。有効性や安全性については、様々な角度から検証が行われている最中ですが、今後の臨床応用が期待されています。
ファルマラボ編集部
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