- 公開日:2020.12.29
薬剤師の調剤薬局常駐廃止?考えられる薬剤師への影響とは
2020年10月9日の日本経済新聞に「薬剤師常駐」の規制を撤廃するという内容の記事が掲載されました。押印廃止や書面・対面の撤廃など、新政権下で政府が進める規制改革は様々ですが、そのひとつに「調剤薬局における薬剤師の常駐廃止」が掲げられているのです。規制の撤廃が認められると新しい形態の調剤薬局が増えることも期待されています。
この記事では、調剤薬局における薬剤師の常駐廃止の概要や、認められた場合のメリット・デメリット、薬剤師の働き方における影響について解説していきます。
薬剤師の調剤薬局常駐廃止とは?
2020年9月16日より、菅義偉首相による新しい政権が発足し、政府は「行政デジタル化」に取り組むことを表明しています。工程表によると、①押印廃止、②書面・対面の撤廃、③常駐・専任義務の廃止、④税・保険料払いのデジタル化の4段階で進めるとされています。行政や民間における各種手続きを簡略化し、生産性やサービスを向上させることが目的ですが、薬剤師および薬局業界にも関連しています。
なかでも、第3段階における「常駐・専任義務の廃止」は、調剤薬局に大きく関係する内容であると考えられています。現在の制度下では、調剤薬局には薬剤師が常駐し、処方箋医薬品の交付時に薬剤師による服薬指導を行うことが義務付けられています。改正医薬品医療機器等法(薬機法)において、服薬指導のオンライン化の解禁が盛り込まれたものの、初回は対面を原則とするなどの一定の条件が残っていました。
これらの規制が撤廃されれば、薬剤師は必ずしも調剤薬局に常駐する必要はなくなります。調剤や製剤など一部の業務を除いて、必ずしも調剤薬局に出社せずとも、自宅において服薬指導や調剤後のフォローアップを行えるようになると考えられています。常駐撤廃の条件については今後の検討が必要ですが、薬剤師や薬局に大きな影響を与えることは必至といえるでしょう。
調剤薬局常駐廃止によるメリット・デメリットは?
規制の撤廃が認められると、調剤薬局で働く薬剤師にとってどのような影響があるのでしょうか。ここでは、薬剤師や薬局側のメリット・デメリットを中心にみていきましょう。
メリット
調剤薬局における薬剤師の常駐廃止に加えて対面撤廃が実現すれば、服薬指導や調剤後のフォローアップにおいて、テレワークの利用が可能になると期待されています。地方における医療アクセスの改善や、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザをはじめとする感染症の罹患リスクを軽減させるのはもちろん、通勤時間の短縮や勤務地を選ばずに就労できるようになるメリットがあります。
デメリット
全国に6万軒を超えるといわれる調剤薬局は、薬剤師にとって最大の職場のひとつです。薬剤師の常駐が廃止されれば、これまで以上に薬剤師余りが加速する可能性があります。また、テレワークでは設備の整った調剤薬局とは異なり、服薬指導の質を確保することの難しさもデメリットのひとつといえるでしょう。患者側においても、身近な医療の窓口である調剤薬局において薬剤師が常駐しないことは、薬や健康についての相談がしづらくなるデメリットがあります。
薬剤師の働き方への影響は?
調剤薬局における薬剤師の常駐廃止が認められると、薬剤師の職場環境や働き方にも大きな影響を与えます。ここでは、具体例をあげながらみていきましょう。
オンライン服薬指導におけるテレワークの実現
薬剤師の常駐廃止が認められることで、今までの調剤薬局の形態にとらわれる必要がなくなると考えられています。オンライン服薬指導においても、現時点では薬剤師が勤務先の調剤薬局に出勤して、職場から服薬指導を行うことが一般的ですが、将来的にはテレワークを利用して自宅から服薬指導が可能になる可能性があります。
在宅医療の効率化
在宅医療を受ける患者さまは年々増加しており、薬剤師が活躍する場面も増えています。患者さまの自宅に訪問して服薬指導や薬剤管理を行う機会も増加傾向にありますが、常駐廃止や対面撤廃により業務が効率化されることも期待されています。24時間対応を行う薬局においても、常駐廃止により薬剤師が自宅からケアを行えるようになれば、担当する薬剤師の負担軽減にもつながります。
ワークライフバランスの改善にも
薬剤師の常駐廃止によってオンライン服薬指導やフォローアップの際にテレワークが活用できるようになれば、薬剤師のワークライフバランスの改善にもつながります。育児や介護と仕事を両立したいと考える薬剤師にとっては、自宅で勤務できるようになるメリットは非常に大きいといえるでしょう。
時代の変化に対応できる薬剤師になるには
薬剤師の働き方が変化するなかで活躍するためには、どのような薬剤師になる必要があるのでしょうか。ここでは、必要なスキルや価値観について解説していきます。
ITリテラシーが高くデジタル化に迅速な対応ができる
「ITリテラシー」とは、ITに関連する各種サービスや機器、テクノロジーについて理解し、使いこなす能力をあらわしています。薬剤師の業界においても、電子薬歴やオンライン服薬指導をはじめ、大きな変化がもたらされています。ITリテラシーが高く、デジタル化に対応できることは、薬剤師として今後も活躍するための必須条件といえるでしょう。
他職種(医師やケアマネジャーなど)と積極的に関わる姿勢
薬剤師としての専門性を高めることは大切ですが、「自身の専門領域」だけでレベルアップするのではなく、医師やケアマネジャーなどの他職種と積極的に関わることも不可欠です。地域の勉強会や近隣医療施設のカンファレンスに参加するなど、積極的に薬局の外に出て、コミュニケーションをとる機会を増やすようにしましょう。
高い意欲や向上心を持っている
薬剤師を取り巻く環境は大きく変化していますが、いつの時代においても変わらず必要とされるのは、高い意欲や向上心をもって、仕事に前向きに取り組む姿勢です。積極的に情報や知識を得ようとする姿勢を習慣にできれば、自らの成長にもつながります。規制の撤廃や新しいシステムの導入についても、日頃からしっかりと情報収集を行いましょう。
薬剤師の調剤薬局常駐廃止は、メリットも大きい
この記事では、調剤薬局における薬剤師の常駐廃止の概要や、認められた場合のメリット・デメリットなどについて解説していきました。「薬剤師の常駐廃止」と聞くと、薬剤師そのものが必要なくなると誤解されてしまいがちです。しかし、薬局に常駐する必要がなくなることで、オンライン服薬指導や在宅医療など様々なメリットが期待されています。
一方で、薬剤師には地域における医療の窓口としての役割も期待されており、健康サポート薬局のように薬剤師が常駐する施設の需要も、これまで以上に高まると考えられています。今後も薬剤師して活躍することができるよう、時代の変化に対応できる薬剤師を目指しましょう。
ファルマラボ編集部
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