- 公開日:2021.01.05
【薬剤師向け】「ポビドンヨード液」とは?効果や副作用、注意点などを解説
ポビドンヨード液を使ってうがいをすることで、新型コロナウイルスのPCR検査の陽性率を下げられる...という根拠に足る発言がテレビで報道されたのはご存知の方も多いはず。
報道の結果、薬局やドラッグストアにはうがい薬を求める方が殺到し、欠品が続くほどにまでなりました。あれから数ヵ月経った今でも、報道の影響でポビドンヨード液を不必要に買い占める方は少なくありません。
薬剤師として患者さまに正しいアドバイスができるよう、ポビドンヨード液の効果や副作用、正しい使い方などについて確認していきましょう。
「ポビドンヨード液」とは?
ポビドンヨード液とは、ポリビニルピロリドンとヨードを組み合わせた消毒液のことです。一昔前まではヨードチンキが使われていたものの、刺激が強いデメリットがあったため、現在はポビドンヨード液の使用が主流になっています。
ポビドンヨード液は、うがい薬としてはもちろん、傷口や粘膜、手術部位の消毒にも使われるなど使い勝手がよいことでも有名です。抗微生物作用があるほか、インフルエンザウイルスやアデノウイルスなど一部のウイルスに対しても効果を示すことが知られています。
新型コロナウイルス感染症への効果は?
結論からお伝えすると、現段階でポビドンヨード液が新型コロナウイルスの感染や重症化の予防に効果があるかどうかは明らかになっていません。しかし、ポビドンヨード液が一部のウイルスに対して効果を示すことが明らかになっているため「新型コロナウイルスにも効果があるのでは?」と考える方もいるかもしれません。
実際に"うがい薬発言"の報道で発表された「大阪はびきの医療センターにおける新型コロナウイルスへの取り組み」のデータを見てみると、ポビドンヨード液でうがいをしたグループでは、うがいをしないグループと比べて確かにPCR検査での陽性率が低下しています。しかし、比較対象が「うがいをしないグループ」になっている点で、ポビドンヨード液に効果があったのか、それともうがいをすること自体に効果があったのかがわかりません。
仮に正しくポビドンヨード液の検証ができていたとしても、そもそも唾液中の新型コロナウイルスを減らせたところで、感染や重症化の予防につなげられるとはいいがたいでしょう。
ところが、報道を見た一般の方によるうがい薬の大量購入が発生し、本当にポビドンヨード液を必要としている方や手術などで必要としている医療機関へ十分に供給されない事態となってしまいました。とくに医療用の消毒液の供給については、不必要な大量発注を避けるよう厚生労働省からも通達が出ています。
ポビドンヨード液の効果
ポビドンヨード液には、主に次のような効果があります。
殺菌力に優れており、しかも粘膜の消毒にも使えることからうがい薬の成分として広く用いられていることが特徴です。抗微生物作用をもつことから、細菌や真菌だけでなくウイルスにも効果を示します。ただしウイルスに関しては、どの種類にも効果が認められているわけではありません。
現時点では次のようなウイルスに対して効果が認められています。
使用方法
ポビドンヨード液2~4mlを取り、約60mlの水で薄めて1日に数回うがいをします。15~20mlのうがい液を口に含み上を向いて15秒ほどうがいをした後、再び15~20mlのうがい液を含み、のどまでうがい液が届くようにすると効果的です。ポビドンヨード液を使ってうがいをする場合は、正しく希釈して使う必要があります。薄すぎても濃すぎても十分な効果が発揮されないため、服薬指導をする際はその旨を伝えることが大切です。
ポビドンヨード液の副作用
ポビドンヨード液にはどのような副作用があるのかを確認しておきましょう。うがい薬の副作用としては、次のものが知られています。
「イソジン®ガーグル液7%(ムンディファーマ)」では、全1,166症例のうち何かしらの副作用が発現したのは11例(0.94%)でした。そのうち嘔気が4例、口内刺激が3例、その他の不快感や口内の荒れなどが1例報告されています。
ポビドンヨード液の薬価と使用上の注意
うがい薬として用いられるポビドンヨード液の薬価、使用上の注意についても確認しておきましょう。
ポビドンヨード液の薬価
うがい薬の薬価は、ムンディファーマのイソジン®ガーグル液7%だと1mlあたり3.1円、ポビドンヨードガーグル7%「日医工」やポビドンヨードガーグル液7%「ケンエー」だと1mlあたり2.2円です。 ※2020年12月時点
ポビドンヨード液の使用上の注意
ポビドンヨード液は、甲状腺機能に異常がある患者さまには慎重投与となります。また、うがい薬の場合は口腔内に使用することもあり、ポビドンヨード液やヨウ素に対して過敏症の既往歴がある方には禁忌なので注意しましょう。
ポビドンヨード液を使用する患者さまへの服薬指導【注意点】
それでは最後に、服薬指導をする際に伝えておきたいこと、確認しておきたいことをチェックしておきましょう。
希釈は正しい濃度で行う
ポビドンヨード液は、抗微生物作用を示しやすい濃度が決まっています。そのためより効果を出そうと濃く希釈しても意味がありません。また味が苦手だからと薄めすぎても効果が弱くなってしまいます。
皮膚の消毒には使わない
皮膚の消毒に使われるポビドンヨード液もありますが、消毒に使う場合とうがいに使う場合とではポビドンヨード液の濃度が異なります。うがい薬として用いられるポビドンヨード液を皮膚に塗っても消毒効果は得られないため、使用しないよう伝えましょう。
口の中がヒリヒリしたり、荒れたりした場合は使用を中止する
人によってはポビドンヨード液の成分が合わずにひりつきを感じたり、口内が荒れたりする可能性があります。そのまま無理に使用すると症状の悪化につながるほか、ショックやアナフィラキシーにつながる可能性もあるので使用を中止するように指導します。
妊娠中や授乳中の方は長期間にわたって使用しないよう注意する
妊娠中や授乳中の方でもポビドンヨード液は使用できますが、基本的には数日間の使用に限られます。長期間にわたって使用すると、胎盤や母乳を介して赤ちゃんや子どもの甲状腺機能に影響が出る可能性があるためです。
使用が不安な様子があれば、水のみでのうがいでも十分に効果があることを伝えるか、アズレンやグリチルリチン酸などが入ったうがい薬を代わりに勧めましょう。
正しい知識と使い方は、薬剤師が積極的に伝えていこう
テレビでの報道により、ポビドンヨード液でのうがいが新型コロナウイルスの感染や重症化を防ぐ可能性があると広められました。ところが現状では、ポビドンヨード液が新型コロナウイルスに効果があるとはいえない状況です。
しかし、風邪やインフルエンザウイルスの予防としてうがいを習慣づけるのはとてもよいこと。実際に新型コロナウイルス感染症の流行により感染対策への意識が高まったことで、今季のインフルエンザ流行が抑えられているのではとの見解もあります。
患者さまが、新型コロナウイルスに効果があるかどうかはまだわからないこと、正しく使用しないと十分な効果が得られないことなどを理解したうえで使えるよう、薬剤師がしっかりと情報提供をしていく必要があるでしょう。
ファルマラボ編集部
「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。