- 公開日:2019.09.27
厚生労働省が示した「医療におけるICTの利活用」とは?概要や活用事例などを解説
2019年6月12日の中央社会保険医療協議会(中医協総会)にて、『医療におけるICTの利活用について』といった議題で、「遠隔(オンライン)診療」や「情報共有・連携」などの現状と課題が整理されました。
遠隔診療は指針を改訂。対面診療の例外規定にて柔軟に対応できるように。薬局によるオンライン服薬指導も、薬機法改正で緩和させていく方向性が打ち出されました。
そこでこの記事では、【医療におけるICTの利活用/薬剤師にどういった影響があるのか】などをまとめます。将来を見据えて情報収集しませんか?
医療におけるICTの利活用について
『ICT』とは、Information and Communication Technologyの略称で、「通信技術を活用したコミュニケーション」を表す言葉です。「IT(Information Technology)」と似た言葉ですが、ICTにはコミュニケーションの要素が加えられています。この技術は、IT産業や通信産業だけでなく、医療の世界においても積極的な活用が求められているのです。
そうした中で、2019年6月12日の中医協総会で、『医療におけるICTの利活用について』という議題が挙がり、「遠隔(オンライン)診療について」と「情報共有・連携について」に関するICTの利活用の現状と課題が整理されました。
「遠隔(オンライン)診療について」は、医療の質に係るエビデンス等を踏まえて、評価を検討していくことが提案されました。オンライン診療は、対面診療を補完する限定的なものとされていましたが、今後は医療の質の向上を促すとして様々な場面での活用が期待されています。また、離島やへき地などは、特別な運用を行うことが提案されました。
「情報共有・連携」については、柔軟な働き方の実現や業務の効率化を促すものとして評価されています。そのため、適切な活用を妨げないように、必要な対応を検討することが求められるのではないかと話し合われました。
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▼参考記事はコチラ>医療におけるICTの利活用について | 厚生労働省
ICTの活用事例(1):遠隔(オンライン)診療
愛知県の篠島(国家戦略特区)にて、オンライン診療と遠隔服薬指導を組み合わせて、離島の患者さまに医療を提供できた例が報告されています。
遠隔診療を導入する前は、通院負担を考慮して3か月ごとの対面診療が行われていました。しかし、オンライン診療を活用することによって、より適切な間隔で診療を行うことができました。きめ細かな医学管理や、患者さまの安心感の向上に繋がったことから、離島におけるオンライン診療の評価が高まっています。
そのほか、在宅医療での活用も期待されており、従来の緊急往診に代わるツールとして、ビデオチャットを用いたオンライン診療が活用された事例も報告されています。
ICTの活用事例(2):電子版お薬手帳
服用歴を経時的に管理できる「電子版お薬手帳」。健康管理に役立つだけでなく、医師・薬剤師の確認することで、相互作用防止や副作用回避にも貢献できるでしょう。
電子版お薬手帳のメリットはいくつもあります。たとえば、【①スマートフォンなどを利用するため受診時や来局時に忘れにくいこと】、【②データ容量が大きいため長期にわたる服用歴の管理が可能であること】、【③アプリケーションに運動記録や健診履歴など追加機能を備えられること】などが挙げられるでしょう。
平成30年度に厚生労働省によって行われた調査では、電子版お薬手帳の所持率は約11%。今後のさらなる普及が期待されている状況です。
薬剤師を取り巻く環境はどう変わるのか
ICTの利活用が進むことで、薬剤師を取り巻く環境は大きく変わろうとしています。
たとえば、これまで情報の伝達は、添付文書や薬剤師会の会報などの書面や、MRの訪問や講演会の参加などの対面でした。しかし今後は、ICTを利用した情報の伝達が標準になると考えられています。インターネットを介した電子的な情報提供、日本薬剤師会生涯学習支援システム(JPALS)、e-ラーニングによる研修制度への参加などが普及していくでしょう。
身近な所では、地域の医療機関の間で患者情報の共有が進んでいます。病名や既往歴などが把握でき、これまで以上に医師の処方意図に則した服薬指導の実現が期待されています。
また、薬剤師の仕事内容も、ICTの利活用が進むことで変化しつつあります。離島やへき地など国家戦略特区における遠隔服薬指導は、「①遠隔診療が行われ」「②対面での服薬指導が困難な場合(薬剤師・薬局の数が少なく、患者宅と薬局との距離が離れている場合など)」に限り、テレビ電話等による服薬指導(遠隔服薬指導)も行われるようになりました。
こうしたことから、薬剤師のICT化への対応は必須になりつつあると言えるでしょう。しかし、デジタル・デバイド(情報格差)が生じると、業務に影響を及ぼすことが懸念されています。薬学的資質とは関係ない要素で、業務の品質に格差ができることは避けなければなりません。情報格差の解消に向けたサポート体制の整備も、課題の一つとされています。
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▼参考記事はコチラ>薬剤師の将来ビジョン | 公益社団法人 日本薬剤師会
将来を見据えて情報収集を
【医療におけるICTの利活用/薬剤師にどういった影響があるのか】などを解説しました。
すでに多くの企業で、ICTを活用した新しいサービスが提供されています。医療におけるICTの活用は、国民全体の健康維持に貢献できると期待されているのです。
十分に普及しているとは言えませんが、ICTの活用は着実に広まりつつあり、薬剤師の業務も変わりつつあります。将来を見据えて、今から情報収集しましょう。
ファルマラボ編集部
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