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  • 公開日:2021.05.17

処方カスケードとは?ポリファーマシーとの関係や薬剤師に求められる対応

処方カスケードとは?ポリファーマシーとの関係や薬剤師に求められる対応

超高齢社会の到来や診療科の細分化により、1人の患者さまが複数の医療機関を受診する機会も増えるようになりました。多剤併用によるポリファーマシーが問題となることもありますが、ポリファーマシーが起こる要因の1つとして、薬による有害事象を新たな病状として誤認してしまう、「処方カスケード」が知られています。

この記事では、処方カスケードとは何か、起きる原因、実際にあった事例などについて詳しく解説していきます。処方カスケードの解消のため、薬剤師に期待されている役割についても触れていきます。

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処方カスケードとは?

「処方カスケード(Prescribing Cascade)」は、服用している薬による有害事象が新たな病状として誤認され、それに対して新たな処方が生まれる処方の連鎖をあらわしています。カスケードとは「小さな連なる滝」を意味しており、1つの薬による副作用が生じ、新たな薬による対処が生まれていくことを図示すると、小さな連なる滝のように描かれることが語源となっています。

処方カスケードとは?

▼参考記事はコチラ>厚生労働省高齢者の 医薬品適正使用の指針(総論編)を参考に作図

処方カスケードが起きる要因

処方カスケードが起きる要因

処方カスケードが起きる要因には、どのようなものがあるのでしょうか。ここではいくつかの項目に分けて、それぞれ解説していきます。

処方薬が漫然と投与されている

以前に罹った疾患の治療薬で、すでに症状が安定している場合、もしくは治癒している場合では、薬の服用が必要なくなっている場合も少なくありません。

しかし、Do処方により無意味に薬が投与され続けるなど不必要な薬の服用継続により有害事象があらわれ、処方カスケードが引き起こされるケースもあります。

服薬アドヒアランスが低下している

処方された薬を患者さまがきちんと服用しておらず、アドヒアランス低下をきたしている場合にも注意が必要です。医師が状況を把握できておらず、処方薬の効果が出ていないととらえた場合には、現在処方中の治療薬の増量やさらなる薬の追加が行われることもあります

医療機関と薬局、薬局間の連携が取れていない

処方カスケードは、患者さまが複数の医療機関を受診しており、医師が薬の処方状況を把握できていないケースで起きやすくなります。これはかかりつけ薬局やお薬手帳の活用により解消に向かいますが、それだけでなく医療機関と薬局の連携や、薬局間の連携も今後さらに重要度を増していくでしょう

ポリファーマシーとの関係は?

ポリファーマシーとの関係は?

ポリファーマシーとは、「poly(複数)」+「pharmacy(調剤)」からなる言葉で、必要以上の薬剤が投与されている、または不必要な薬剤が処方されている状態をあらわします。処方カスケードは、ポリファーマシーが起きる原因の1つです

ポリファーマシーでは、複数の医療機関受診による足し算的な処方が原因の1つとして考えられていますが、処方カスケードは1つの医療機関、1人の医師の処方によっても起こりうることが特徴です。歳を重ねるほど複数の疾患をかかえやすく、処方される薬剤の数も増える傾向にあります。処方カスケードを防ぐとポリファーマシーの解消にも近づくため、高齢者の薬物療法における安全性を高めるために、近年注目を集めています

処方カスケードを防ぐために薬剤師にできること

処方カスケードを防ぐために薬剤師にできること

処方カスケードを防ぎポリファーマシーを解消するため、薬剤師には何ができるのでしょうか。

患者さまの服用状況を把握

まずは、患者さまの服用状況を把握する必要があります。薬歴やお薬手帳を確認するだけでなく、ほかの医療機関や薬局の利用有無、OTC医薬品やサプリメントの服用歴についても確認しましょう。

処方カスケードが起きていないかどうかを判断するために、患者さまとの信頼関係を構築した、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師が力を発揮することが期待されています

お薬手帳の活用

お薬手帳は患者さまの服用状況を把握するための重要なツールです。単なる飲み合わせの確認だけではなく、医療機関を超えた連携・協働ツールとしても活躍し、オンラインでの活用を推奨する地域も増えています。

また、現在導入が進められているオンライン資格確認では、本人から同意を得たうえで、マイナンバーカードを用いた薬剤情報や特定健診等情報の閲覧が可能です。こちらも患者さまの服薬状況の把握に大いに役立つことが期待されています。

処方医へのフィードバックや処方提案

服薬指導では、通常行われる服薬管理に加え、薬物有害事象が疑われるような症状があらわれていないかを確認すること、症状の原因が薬剤性である可能性を丁寧に吟味しましょう。処方カスケードが疑われる場合には、服薬情報提供や疑義照会などを通して、原因薬剤の減量や中止を提案し、負の連鎖を断ち切ることが求められます

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処方カスケードを防ぎ、ポリファーマシーの解消を目指す

この記事では、処方カスケードとは何か、起きる原因、実際にあった事例、解消のために薬剤師に期待されていることなどについて、詳しく解説していきました。

処方カスケードやポリファーマシーの問題を解決するためには、ただ単に医薬品の数を減らせばよいというだけでなく、処方医やかかりつけ薬剤師、コメディカルなどの複数の医療スタッフがそれぞれの立場から得られた情報を共有し、医薬品の適正使用をすすめることが重要です

薬剤師には、医薬品のスペシャリストとしての役割が期待されているため、日頃からほかの医療従事者や患者さまとの信頼関係を構築し、服薬情報提供や疑義照会などを通じて、積極的な介入を心がけましょう。

▼▼ ポリファーマシー研究の第一人者 溝神文博さんのインタビュー一覧


第1回 「ポリファーマシー」の現状と課題から考える、薬剤師にできること
第2回 ポリファーマシー対策における多職種連携の重要性「泥臭い活動を続けていく」
第3回 ポリファーマシー真の目的は「患者さまの希望に寄り添う薬物療法の提供」

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/05/17

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