- 公開日:2021.08.27
<国試対策コラム>物理の勉強法
CBT対策から薬剤師国家試験対策まで支援している、薬学生の学習塾「薬進会様」監修!国試対策に活かせる科目別学習方法や過去問解説をご紹介します。今回は、薬剤師国家試験の中で最も攻略が難しい科目「物理編」!
科目別勉強法
国試最大の難敵
物理が大好きな学生・物理がすこぶるできる学生を除いて、薬剤師国家試験の中で最も攻略が難しい科目が「物理」になります。「物理」を難しく感じる原因は3つあります。
1.出題範囲が広い
「物理」と一言でいっても、結合・相互作用など有機化学がらみの範囲、分析法の原理など機器分析がらみの範囲、放射化学、物理化学、定量分析と出題範囲が非常に広いです。大学の低学年で習う面倒くさい科目の詰め合わせパック、それが「物理」なのです。
2.得点化するまでに時間がかかる
「衛生」や「法規・制度・倫理」は、知っているだけで解ける問題もあります。しかし、物理は知っているだけで解ける問題が非常に少ないです。物理は、「知っている→理解している→考えて問題が解ける」と得点化するまでに要する時間がかかるので厄介です。
3.勉強したのに出題されない
「物理」で一番困るのが、頑張って広い範囲を相当な時間をかけて勉強したのに、出題されない範囲が広いということです。たくさんあります。
「衛生」「薬理」「薬剤」は、薬剤師国家試験出題基準対応表(*)の小項目に従って、どの範囲も毎年出題されます。しかし「物理」は、毎年出題される項目が入れ替えられるため、勉強すればするほど点が取れるとはならないのです。そもそも、「物理」は、出題範囲が広いにも関わらず、出題される問題数が20問しかないので、必然的にやってもやってもコンスタントに得点化されない科目なのです。
(*)一般的に薬剤師国家試験出題基準対応表は、国試の参考書の巻頭に記載されています。
物理の攻略法
出題範囲が広く、得点化するまでに時間がかかり、勉強したのに出題されない、そんな残念な科目「物理」をどう攻略するのか。「物理」の学ぶべき範囲と取り組み方をご紹介いたします。
1.優先順位を決める
「物理」は、やみくもに勉強しても点数は上がらない科目。そのため、出題頻度が高い範囲と他の科目にも応用が利く範囲を中心に勉強していくことが大事です。
優先度 | 範囲 | 特徴 |
---|---|---|
非常に高い | ①放射線と放射能 | 放射化学は、割と簡単に理解しやすく、得点化されやすい範囲です。物理だけではなく、衛生でも実務でも出題されるので得点効率が高い範囲です。 |
②束一的性質 | 10年間で7回出題される頻出範囲です。束一的性質との関連項目として、等張溶液や等張化の計算などもあるので、必ずマスターしないといけない範囲です。 | |
③反応速度 | 物理化学の範囲で一番メジャーな範囲が反応速度になります。反応速度を勉強しておかないと薬物動態学の計算問題も解けないので早めに潰しておきたい範囲です。 | |
④酸・塩基平衡 | 酸・塩基、pH関連、ヘンダーソン式、緩衝液など単発で比較的理解しやすい頻出範囲です。 | |
⑤定量分析 | 中和滴定、キレート滴定、沈殿滴定、酸化還元滴定など、「滴定シリーズ」としてまとめて勉強すると全体像が見えやすく理解しやすいです。覚え・理解系、計算系どちらも出題される範囲です。 | |
⑥クロマト グラフィー |
薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィーなど、「クロマトシリーズ」としてまとめて勉強すると全体像が見えやすく理解しやすいです。クロマトグラフィーは毎年出題される頻出範囲なので得点化できるように潰しておきましょう。 | |
⑦NMR | 10年間で9回出題される頻出範囲です。物理でも化学でも出題されるので必ず勉強しておきましょう。 | |
高い |
⑧熱力学 | エンタルピー、エントロピー、ギブスエネルギー、ファントホッフプロットなど出題形式は多岐にわたりますが、<優先度:非常に高い>の範囲が終わったら手をつけたい範囲です。あまり深入りしないように注意しましょう。 |
⑨分光分析法 | 紫外可視吸光度測定法、蛍光光度法、原子吸光光度法の原理は、物理で学び化学で使うので、<優先度:非常に高い>の範囲が終わったら手をつけたい範囲です。化学の該当範囲とセットで勉強していくと二度おいしい範囲です。 |
2.深追いをしない
上記で出題頻度が高い範囲と他の科目にも応用が利く範囲を紹介しました。「物理」の取り組み方として、はじめに「優先度が非常に高い」の①~⑦、次に「優先度が高い」の⑧⑨の範囲を終わらせましょう。その他の範囲は、そもそも出題頻度が低く難易度も高いので、「衛生」「薬理」「薬剤」「病態・薬物治療」「法規・制度・倫理」「実務」がある程度終わって、総得点を上げ終わってから取り組んでも問題ないです。
「物理」を学ぶコツは、物理ができないからといって深追いしないことです(得点すべき範囲で得点し、あとはあきらめる。余った時間を他の科目に回すことが大切)。あくまで345問中の20問。国試全体でみると「物理」の出題%は5.79%しかないのです。そう思って気楽に勉強するとモチベーションを落とさずに取り組むことができます。
合格へのアプローチ
① 急がば回れ
前述した通り、「物理」は出題範囲が広く、得点化するまでに時間がかかる割には出題数が少ない。勉強した範囲が出題される可能性は低い残念な科目でした。となると、得点化するためには、基本に忠実に取るべき問題をいかに落とさないかが重要になってきます。例として、次の問題をみてみましょう。
[例題]第104回 薬剤師国家試験問題 問97
【解法を分析】
この問題は、イオン強度を求める問題です。過去の国試には、「イオン強度の定義」を問う問題も出題されています。つまり、「イオン強度の定義」に従って求めていけば容易に正答することができる問題です。しかし、実際の国試での正答率は、なんと30%以下なんです。なぜ、簡単な問題なのに正答率が低いのでしょうか?
国試をよくわかっていない講師・学生ほど、"受験テクニック"を使いたがります。この問題の場合はこうです。
これは、裏技でも何でもない単なる経験則です。これを覚えることで解ける問題も確かにあります。ただし、問題が解けるのは、①電解質が1価-1価の組み合せ、②電解質が2価-1価の組み合せ、③電解質が2価-2価の組み合せ、のたった3パターンのみです。
しかし、今回、国試で出題されたのは、ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸カリウム(K4[Fe(CN)6])の1価-4価からなる電解質の問題なのです。基本に忠実にを心がけ、確実に得点する解法は次の通りです。
「急がば回れ」という言葉があるように、リスクある近道より、遠回りではあるが、安全で確実な方法を選ぶ方が得策になりやすい科目、それが「物理」なのです。
① "想像力"が"応用力"を強化する
「物理」は、特に得点化するのが難しいため、受験生のほとんどがこう思っています。「過去問類似問題だけは落としたくない」と。では、過去問類似問題を得点化するためには、どういったスキルが必要か解説していきます。実際の国試の問題を活用していきましょう。
まずは、何も考えずに普通に問題を読んで、普通に解答したパターンです。
きちんと解答できれば悪くはないですが、類似問題がでることを想定した解答ではないですね。次に"想像力"を働かせながら解答してみましょう。
過去に出題された問題の類似問題が出るかも!?と"想像力"を働かせながら解答するパターンは、周辺知識も含めて解答していますし、どこの範囲を自分が深堀して学ぶ必要性があるのかが明確にわかります。常に考えているので、応用力がつきやすくケアレスミスを減らすことができます。この解き方は、1問解いただけなのに2~3問分を解いた価値があります。つまり、過去問を深く学ぶと類似問題に強くなるのです。
薬学生の学習塾「薬進会」(株式会社薬進会)
2009年創立。薬剤師国家試験対策の学習塾。講師は、教室での一斉授業に加え個別指導も行い、現場で薬剤師としても絶賛活躍中。 「わかるまでやる!できるまでやる!」を企業理念に、社会に貢献でき、そして人に優しい薬剤師を輩出することを目指し、その実現のために日々取り組むプロ集団。 現在は自社での講義に加え、大学での講義、企業内定者フォロー、薬学生の学習サポートとして学習コンサルティングなど種々のかたちで薬剤師国家試験対策に携わっている。2020年より「全ての学生が自由に学べる」をコンセプトに「YouTube薬剤師国家試験大学」を運営・配信している。