ファルマスタッフ薬学生
  • 公開日:2021.09.08

<国試対策コラム>衛生薬学の勉強法

<国試対策コラム>衛生薬学の勉強法

CBT対策から薬剤師国家試験対策まで支援している、薬学生の学習塾「薬進会様」監修!国試対策に活かせる科目別学習方法や過去問解説をご紹介します。今回は、図やグラフなどを解析し、知識と照らし合わせる暗記&解析科目「衛生薬学編」

科目別勉強法

衛生薬学の傾向

衛生薬学と言えば、「The暗記科目」というのも今は昔。近年の国試における衛生薬学の問題は、図・グラフ・表などを解析し、暗記している知識と照らし合わせて問題を解いていく必要がある「暗記&解析科目」へと進化を遂げています。薬学生にとって単なる暗記でよかったものが、「暗記&解析科目」になるのは困ったものですが、これは薬剤師の働き方の変化の影響を受けていると言っても過言ではないのです。

以前の薬学部は、対モノ。薬物について学ぶのが、薬学部という位置づけでした。しかし、薬学部も薬剤師も対モノから対ヒトへと対象が変わり、薬剤師の働き方も患者さまの問題点を発見・解決し、QOLの向上に努めることが求められています。そうした薬剤師でなければ生き残っていけない時代に突入している。だからこそ国試でも、図・グラフ・表などから問題を見つけ出し、適切な答えを導き出す「暗記&解析」系の問題が増えてきているのです。

衛生薬学を分析

1.国試における衛生薬学の重要性

国試の全問題数345問中、衛生薬学は40問出題されます。全体の11.59%。40問と言うと、物理20問+化学20問に匹敵します。ここで是非、「物理と化学の合計40問から得点する」のが楽か。それとも、「衛生薬学40問から得点する」のが楽か考えてみてください。

考えてみれば一目瞭然でしょう。物理と化学で正答率80%を超えるのは至難の業ですが、衛生薬学だと正しく学べば正答率80%は可能です。総得点が伸びないときこそ、衛生薬学を見直しましょう。衛生薬学で得点を最大化してから、リフレッシュ的に物理と化学を攻めていくのも一つの手段です。

2.ハズレがない科目

薬剤師国家試験出題基準対応表(*)の小項目に、「保健統計」「疫学」「感染症」「生活習慣病とその予防」「栄養」「食中毒と食品汚染」「化学物質による発がん」「地球環境と生態系」「水環境」「大気環境」・・・と色々記載がありますが、どの範囲も毎年出題される項目です。衛生薬学は勉強したのに問題が出ないことがほとんどありません、つまり、ハズレがない科目と言えます。ちなみに、ハズレが1番多い科目は「物理」。物理より衛生薬学を勉強してはいかがでしょう?合格する学生ほど、「物理はほどほど」に「衛生は綿密に」が実行できているのです

(*)一般的に薬剤師国家試験出題基準対応表は、国試の参考書の巻頭に記載されています。

3.オススメ図書

衛生薬学の解答力を上げるためには、とにかく使える知識の獲得が必要不可欠です。イチオシの書籍は、丸善出版「衛生薬学(健康と環境)」。この本は、単に要点をまとめた国試参考書と違い、理屈や理由などが詳しく記載されて読みごたえがあり、実力アップにはもってこいの一冊と言えます。

また、厚生労働統計協会から毎年出版される「国民衛生の動向」は、実際のデータがたくさん掲載されています。図やグラフなどデータ系対策として一役買ってくれるではないでしょうか。

合格へのアプローチ

① 問題を覚えるのではない。問題で覚える。

問題1「黄色ブドウ球菌は、グラム陽性の芽胞形成細菌である」

この問題は×の文章だが、どう直すのが正解でしょうか?いまから3人(A君・B君・C君)の登場人物がこの文章の直しを行っていきます。さて、あなたは何君?

(A君)簡単だよ。なんとなく過去問で同じような問題をみたことあるもんね。「黄色ブドウ球菌は、グラム陽性の芽胞形成細菌ではない」だね。これで×だよ。

(B君)細菌の分類は、勉強したから大丈夫。「黄色ブドウ球菌は、グラム陽性だけど、芽胞は形成しない細菌」で×だね。

(C君)細菌の分類と細菌性食中毒は頻出範囲だから、これは重要な問題で間違えたらヤバイ問題だね。以下の知識から「黄色ブドウ球菌は、グラム陽性だけど、芽胞は形成しない細菌」で×だね。

細菌の分類と細菌性食中毒

問題点と改善点
A君 基本的に、誤文を正文に直すことができていません。「○○でない。だから×」からの脱出を図りましょう。
B君 過去問自体は覚えています。全く同じ問題で出題されれば正答できますが、問題パターンを変えられると間違えてしまうパターン。過去問で黄色ブドウ球菌が出題されたら、その周辺知識もセットで確認していきましょう。
C君 一つのキーワードから使える知識を導き出すことに成功しています。問題文は覚えていないものの、過去の問題文から重要なキーワードを確実に導き出せているので、どんな問題パターンでも対応できます。

② データ解析系問題の攻略

近年、出題が増加傾向のグラフを用いたデータ解析系問題を使って、解法の流れを確認してみましょう。

[例題]第101回 薬剤師国家試験問題 問135

第101回 薬剤師国家試験問題 問135

※引用元:第101回 薬剤師国家試験問題 1日目(2)一般問題(薬学理論問題)

(1)問題文の要点・論点をつかむ

オゾン層破壊効果の強弱で、①群・②群・③群に分類されている。

①群は、1999年にはほぼ0になっている。①群の減少にともない、②群が増加している。近年は②群も減少し、③群に置き換わっている。

(2)次にグラフの解析を行う

グラフの縦軸は、二酸化炭素換算量である。二酸化炭素換算量が大きいということは、温室効果に大きく影響を及ぼしていることがわかる。

(1)(2)より①群・②群・③群は、以下の3つのどれかと推測できる。

CFC(クロロフルオロカーボン)HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)HFC(ハイドロフルオロカーボン)

(3)暗記している知識に問題で問われていることをアジャストさせる

選択肢1~5の各構造がどの物質か判断する。

オゾン層破壊効果温室効果特徴選択肢
CFC Clあり、Hなし 1、5 ①群
HCFC Clあり、Hあり 2,4 ②群【解答2,4】
HFC Clなし ③群

衛生薬学は雑学力がものを言います。"歴史的背景"からひも解くと・・・
モントリオール議定書により1996年までにCFCの生産は全廃となり(この時点で①群:CFC)、CFCの代わりにHCFCが使用され(②群:HCFC)、その後HFCに置き換わる(③群:HFC)。

【必要な能力と日々のトレーニング】

①問題読解能力 日頃から文章をたくさん読み、瞬時に要点・論点が何か判断でき、大事な箇所をトリミングできるように練習しましょう。
②視覚化能力 グラフからわかることを書き出してみましょう。
③判断力 正しく判断するため、正しい知識が多く必要です。
インプットしたら必ず問題を解いてアウトプットし、インプットした内容が使える知識に定着しているか確認しましょう。定期的に繰り返すと忘れにくい長期記憶に変わり、正しくかつ早く判断できるようになります。
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薬学生の学習塾「薬進会」(株式会社薬進会)

2009年創立。薬剤師国家試験対策の学習塾。講師は、教室での一斉授業に加え個別指導も行い、現場で薬剤師としても絶賛活躍中。 「わかるまでやる!できるまでやる!」を企業理念に、社会に貢献でき、そして人に優しい薬剤師を輩出することを目指し、その実現のために日々取り組むプロ集団。 現在は自社での講義に加え、大学での講義、企業内定者フォロー、薬学生の学習サポートとして学習コンサルティングなど種々のかたちで薬剤師国家試験対策に携わっている。2020年より「全ての学生が自由に学べる」をコンセプトに「YouTube薬剤師国家試験大学」を運営・配信している。

【各種リンク】公式サイトデジスタInstagramX(旧Twitter)YouTube

記事掲載日: 2021/09/08