- 公開日:2020.12.30
- 更新日:2024-07-24
【先輩薬剤師に聞く】仕事で大変だと思うことは?やりがいは?
薬剤師として働いてみて「思っていたよりも大変だった」「想像していたのと職場環境が違った」など、理想とのギャップを感じている方もいるかもしれません。
傍から見ているよりも、薬剤師は大変な仕事だと感じることが多いようです。調剤薬局、病院、ドラッグストアなど、業種によっても大変と感じるポイントに違いがあります。
今回は、どんなときに仕事が大変だと感じるのか、また先輩薬剤師から学ぶ仕事のやりがいもご紹介します。仕事に厳しさを感じ、壁にぶつかっている方はぜひ参考にしてください。
- 薬剤師の仕事が「大変」と感じる原因は?
- 業種別に考える「仕事の難しさ」
- 先輩薬剤師に聞いた、仕事で「辛かったこと」
- 薬剤師の仕事は大変なこと以上に「やりがい」もある
- 先輩薬剤師に聞いた、仕事で「やりがいを感じたこと」
薬剤師の仕事が「大変」と感じる原因は?
薬剤師の仕事のどのようなところが「大変」だと感じるのでしょうか?その原因を確認しながら、今のご自身の状態を改めて認識してみましょう。
ミスが許されない
薬剤師の仕事の辛さにおいて、大きな割合を占めるのは精神的な緊張感ではないでしょうか。小数点以下のグラム単位での調剤に、規格の多い薬剤のピッキング調剤、処方箋の読み取り、薬剤の名称の多さ。さらに、患者さまへの服薬指導にいたるまで小さなミスでも許されません。ほんの少しのミスが大きなトラブルにつながることもあるからです。
一日中、張り詰めた状態で多くの業務を抱えながらでは、精神的にも疲れきってしまいます。また、ミスを起こしてしまうと罪悪感に苛まれたり、失敗した自分を必要以上に責めてしまったり...。継続的に精神的なダメージを引きずってしまうケースもあります。
業務量が多い
少人数で仕事をしている職場も少なくありません。人数に見合わない業務量は、ストレスの原因になります。仕事が忙しいのに薬剤師の人数が増えず、残業もしないように言われるといった環境で働いている薬剤師は珍しくありません。このような状況では、疲れやストレスがたまり体調を崩してしまうこともあるでしょう。
知識のアップデートが必要とされる
「薬剤師の仕事は安定している」とよくいわれるように、資格は更新しなくても失効することがありません。しかし、常に知識のアップデートを行わなければ、現場で働く薬剤師として知識不足とみなされてしまうこともあるのです。
日々新しい薬が発売され、医学的な知識や治療のトレンドなども変化していきます。古い情報のまま業務を行っていると、最悪の場合は医療過誤を起こす可能性も...。常に最前線で働き続けるためにも、薬剤師は日々知識と経験を磨くことが求められます。しかし、現実的に業務の傍らでは十分な勉強時間を捻出できず、プライベートな時間を削らなければならないこともあるでしょう。
業種別に考える「仕事の難しさ」
薬剤師と一言でいっても、業種によって業務内容も異なれば、大変に感じるポイントも違います。ここではどんな時に仕事が大変だと感じるのか、業種別に詳しくみていきましょう。
調剤薬局
調剤薬局で働く場合にストレスを感じやすいのが職場の人間関係です。調剤薬局では狭い空間で同じスタッフと一緒に過ごすことが多いため、ほかの業種と比べて人間関係が密になりやすくトラブルが起こりやすい環境でもあるのです。
また、疑義照会をする際になかなかうまくコミュニケーションが取れずに悩むこともあります。十分な連携をはかれないために業務が滞ってしまう場合もあり、その状況にストレスを感じる人もいるでしょう。
病院薬剤師
病院は、薬剤師の仕事のなかでも業務の幅が広く、とくに医学的な最新知識も求められる業種です。医師、看護師、臨床検査技師、理学療法士、医療事務など様々な医療従事者と関わる必要があるため、それぞれの専門分野に関する理解や細やかな対応、高いコミュニケーション能力が求められます。
とくに大学病院の場合は、医学と薬学に関して高度な知識が必要です。論文作成、学会や研究会への参加など、学術的なことに時間を割く場面も多くなります。通常業務と並行して行わなければならないため、労働時間が増えてしまうことも多いでしょう。
ドラッグストア
地域に根ざしたドラッグストアの仕事は、幅広い品目を取り扱うため、最新かつ豊富な商品知識を身につける必要があります。店舗によっては調剤に専念できる場合もありますが、OTC医薬品の販売や、化粧品や日用品などについても対応を求められる場合があります。
来店する人の多くは、誰が薬剤師か店員かの見分けがつきません。そのためすべてにおいて精通していることが求められます。また、スタッフが不足している場合や繁忙期は、品出しなど重い物を運ぶ重労働や雑務もこなさなければなりません。
在宅薬剤師
近年の高齢化により需要が大きく拡大している在宅医療。その中で働く薬剤師は、調剤した薬剤を患者さまの自宅に運ぶだけではなく、自宅内での服薬指導や薬剤の管理、健康に対するアドバイスを行うことが仕事です。
外来の患者さまとは違って、業務の計画を立てやすい利点がある一方で、24時間体制で対応を行う場合も。さらに、訪問による仕事や調剤以外に、薬歴などの在宅患者訪問管理指導料を算定するための書類作成が大きな負荷になってしまうこともあるでしょう。
先輩薬剤師に聞いた、仕事で「辛かったこと」
では、実際にこれまで長年働いてきた先輩薬剤師は、どのようなときに辛さを感じてきたのでしょうか。具体的な例を参考にしてみましょう。
薬剤師の仕事で辛いと感じたこと<調剤薬局>
調剤薬局勤務 Aさんの場合
チェーン薬局ではスタッフの交代や異動もありますが、個人経営の薬局では人間関係が固定されやすいため、合わない人がいると仕事がやりにくく感じます。また、小さな薬局では薬剤師が2人しかいない場合もあり、休めないプレッシャーもありました。1人薬剤師になる時間帯はチェックも自分1人で行う必要があるため、間違えられないというストレスを強く感じました。
調剤薬局勤務 Bさんの場合
処方箋の内容を医師に問い合わせるのが苦手でした。相手の顔が見えない状態でのコミュニケーションが難しく、相手の忙しさも電話越しに伝わってくるようで...。ときには処方箋を書いた医師のミスを指摘しなければならない場面もあって、話し方や説明の仕方に困ることもありました。いつも電話をするときは緊張していた気がします。
薬剤師の仕事で辛いと感じたこと<病院薬剤師>
病院勤務 Cさんの場合
患者さまをはじめ、医師や看護師、そのほかの医療従事者の方たちとのやりとりが多く、仕事が辛いと感じたことがあります。病院勤務では、関わる人が多い分得られる情報量も多いです。それが自分のスキルアップにつながると分かってはいるものの、そんな状況に疲れを感じていました。
病院勤務 Dさんの場合
夜勤もあり体調管理やスケジュール管理が難しいと感じました。とくに夜間は容体が急変した患者さまに対する業務が発生することもあり、1人で間違いなくすべて対応しなければならないプレッシャーを感じました。
薬剤師の仕事で辛いと感じたこと<ドラッグストア>
ドラッグストア勤務 Eさんの場合
お客さまから多くの健康相談を受けるので、幅広い知識を身につける必要があり、対応に苦慮することが多かったです。お客さまの話だけでは症状の原因を判断しきれないケースもあり、OTC医薬品を選ぶ難しさを感じました。様々なことにアンテナを張る必要があることも大変でした。
ドラッグストア勤務 Fさんの場合
売り場スタッフの年齢も10代から60代までと幅広く、それぞれ雇用形態も経験も異なっているので、人間関係には苦労しました。関わる人数も多いので、スタッフ同士でトラブルが起きると放っておくわけにもいきません。
薬剤師の仕事は大変なこと以上に「やりがい」もある
ここまでご紹介した内容を見ると、薬剤師の仕事は大変なことばかりのよう...。しかし、厳しさとやりがいは表裏一体の関係でもあり、辛さを乗り越えたからこそ生まれるやりがいもあります。
大変だと感じるかどうかは環境や周りのスタッフとの関係性もありますが、それ以上に自分の心の持ち方も大きく影響しています。ポイントは「できごとの一部だけを切り取って判断する」のではなく、その先にどのようなスキルアップや成長が待っているのかも考えてみること。
あまりモチベーションの上がらないことも、ひとつずつ積み重ねていくことで、揺るぎない自信や実力となってあなたを成長させてくれるはずです。
先輩薬剤師に聞いた、仕事で「やりがいを感じたこと」
ここでは、仕事で感じたやりがいについて先輩薬剤師に伺いました。どのような経験から楽しさ、面白さ、成長を感じられたのかをぜひ参考にしてみてください。
薬剤師の仕事でやりがいを感じたこと<調剤薬局>
調剤薬局勤務 Gさんの場合
調剤薬局の薬剤師は、患者さまにとって"薬を渡すだけの人"という印象が強いのかなと思っていましたが、思っている以上に頼りにされていると感じることが増えてきました。とくに「お医者さんには話せなかったんだけど...」と、患者さまが本音を話してくれたときは、調剤薬局の薬剤師だからこその強みがあるなと感じます。
調剤薬局勤務 Hさんの場合
医師の処方ミスを見つけられたときに、自分がやっている仕事の責任や重要性を感じます。患者さんの副作用のモニタリングにおいても地域の調剤薬局が担っている責任は大きく、やりがいを感じています。
薬剤師の仕事でやりがいを感じたこと<病院薬剤師>
病院勤務 Iさんの場合
病院では重篤な症例を扱うことも多く、さらには治療計画から参加できるなど、薬剤師としての力量を最大限に発揮できる職場だと思います。 医師とも対等に話せる高度な知識を求められるので大変ですが、自分自身のスキルアップにつながったことは確かです。とくに患者さまが笑顔で退院されたとき、回復が見られたときなどは、治療効果が目に見えて感じられるため、薬剤師でよかったなと思います。
病院勤務 Jさんの場合
確かに大変なこともいっぱいあるし、挫折もたくさんしてきましたが、やっぱり「人のために自分が勉強してきたことを役立てられている」と実感できることが何よりもやりがいになっています。病院では患者さまとの距離が近い分、それを間近に感じられる機会が多いと思います。学生の頃に学んだ勉強が身になっていると感じられたときに、この勉強をしてきてよかったと心から思えます。
薬剤師の仕事でやりがいを感じたこと<ドラッグストア>
ドラッグストア勤務 Kさんの場合
ドラッグストアでの勤務は、「まちの健康相談窓口」としてお客さまからの期待も高まっているのを感じています。お薬のことで不安があると相談しにきてくださったり、自分のことを覚えてくださっているお客様もいたり...。とくに「ありがとう」と言われたときは、お客さまの役に立てている実感がわいてきます。
ドラッグストア勤務 Lさんの場合
OTC医薬品を販売して、お客さまから「この前の薬効いたよ!」なんて報告を受けたとき。調剤薬局と違って、相談にのったOTC医薬品をご提案することで成果が見られたときにやりがいを感じます。
薬剤師は大変な仕事。しかし、薬剤師にしかできないことがある
薬学部で数々の難題に取り組み、難しい試験をクリアしてきた薬剤師。だからこそ今できることがあり、それぞれの職場には薬剤師にしかできない仕事があります。
どの職種に就いたとしてもそれぞれの厳しさがある薬剤師の仕事。そのなかで壁にぶつかることもあるでしょう。しかし、それを乗り越えると自分の成長につながります。
ただし、今の職場でやりがいを感じられない、悪いところに目がいってしまう場合は、ほかの職場を探してみるのもひとつの選択です。現状を思い悩むのではなく、幅広い視点をもってキャリアを見つめ直すことで、薬剤師として活躍できる職場を見つけられるかもしれません。
仕事の違いについては十分な情報収集を行うことも大切です。情報収集を行う際は、"薬剤師の転職のプロ"であるコンサルタントに相談し、充実した毎日を送りながらも薬剤師としてキャリアアップを目指していきましょう。
ファルマラボ編集部
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