- 公開日:2018.08.22
- 更新日:2023-11-13
薬剤師が知っておきたい!「服薬指導」5つのポイントと会話例
薬はただ渡せばいいというわけではありません。患者さまにきちんと薬を飲んでもらい、適切な薬物治療を行うためには、薬剤師の「服薬指導」が欠かせません。
しかし、服薬指導を行うには、患者さま一人ひとりの症状や体調を把握すること、しっかりとした薬剤の知識をもつことが求められます。またコミュニケーションがうまく取れないと、患者さまに内容が伝わらなかったり、クレームを受けてしまったりすることもあるでしょう。薬剤師にとって服薬指導は重要な業務ですが、経験の浅い新人薬剤師にとっては、とても難しい仕事でもあります。
「ちゃんと指導できるかな?」「失敗したらどうしよう...」「いつも上手に説明できない...」そうした不安や悩みをもつ新人薬剤師や服薬指導が苦手な方のために、【服薬指導の基本やコツ】を解説していきます。
- 服薬指導のおさらい
- 服薬指導の際、患者さまに説明すべきポイント
- 先輩薬剤師が教える服薬指導のコツ5選!
- 服薬指導時における会話例
- 服薬指導に大切なのはコミュニケーション
- 服薬指導後のSOAP(ソープ)薬歴の書き方
服薬指導のおさらい
「服薬指導」とは、薬剤師が患者さまに対して処方された薬の情報を提供すること。複雑な服用方法が定められた薬剤も多く、正しい方法で服用しなければ重大な健康被害をまねいてしまうこともあります。このような事態を防ぐために、薬剤師はしっかりと薬の説明をして、薬物療法への理解を得なければなりません。
厚生労働省が定める「患者のための薬局ビジョン」においても、「モノから人へ」と服薬指導の重要性が挙げられています。また、薬剤師法第25条の2にも示されており、服薬指導は法的根拠に基づいた義務ともいえるのです。服薬指導の重要性をしっかりと認識したうえで、業務にあたるようにしましょう。
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▼参考資料はコチラ
厚生労働省『患者のための薬局ビジョン』(平成27年10月23日公表)
服薬指導の流れ
薬局ごとに服薬指導の方法やルールは異なりますが、服薬指導には基本となる一連の流れがあります。それは、<①お声がけ→②症状の聞き取り→③医薬品の説明→④質問事項の確認→⑤クロージング>という5つの行程です。
また、すべての患者さまに対して同じ服薬指導を行うのではなく、年齢や疾病、体調、既往歴、併用薬などにより、重視するポイントを変えることが大切とされています。以下の記事でも詳しく解説しているので、確認してみてください。
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▼参考記事はコチラ
服薬指導の流れとポイントを徹底解説。先輩薬剤師が答える【お悩みQ-A】
服薬指導の際、患者さまに説明すべきポイントは?
薬剤師は服薬指導において、薬や治療について様々な情報を患者さまに提供しなくてはなりません。効果や服用方法だけでなく、起こり得る副作用や飲み忘れたときの対応、薬の保管方法など、伝えなければならない情報は多岐にわたります。
説明すべき内容の一例を挙げてみました。服薬指導をする際のチェックリストとして、活用してください。
- 薬の名称
- 薬の効能、効果
- 薬の用法、用量
- 起こる可能性のある副作用について
- 飲み忘れたときの対応
- 副作用が起こったときの対応
- 治療完了後の薬の取り扱い
- 飲み合わせについて
先輩薬剤師が教える服薬指導のコツ5選!
ここからは、長年経験のある薬剤師が教える、服薬指導のコツをご紹介していきます。
コツ① 一方的に話をせず、患者さまの話を聞く
新人薬剤師にありがちな服薬指導として、薬の説明を"一方的に"してしまうことが挙げられます。薬の情報を伝えたいという姿勢は素晴らしいものですが、コミュニケーションが一方的になってしまうのは良いことではありません。しっかりと患者さまの話を聞き、それに回答するというスタンスで服薬指導をすすめましょう。「対話」を意識することが重要です。
コツ②「気づき・気配り」で患者さまに寄り添う
薬剤師にとって重要なのは、「相手の立場に立ってものを考えること」です。たとえば、足の不自由な患者さまがいればお席でお話したり、耳の遠い患者さまがいれば大きな声で話したり、薬袋の文字を指し示しながら説明したり...。患者さまの立場に立てば、どうすれば喜ばれるのかがわかるはず。
手が空いていれば待合室にも気を配り、小さいお子さんを連れたお母さんにぬいぐるみを渡してあげたり、何かを探している方にお声がけしたりするなど、積極的に周囲に気を配りましょう。こうした気配りがホスピタリティにつながり、患者さまに寄り添った服薬指導ができるようになります。
コツ③ 服薬指導の長さは、臨機応変に
薬の服用方法で悩みを抱えている患者さまに対して簡潔すぎる服薬指導をしてしまうと、不安な気持ちにさせてしまいます。一方で、急いでいる患者さまや、ずっと待たされてイライラしている患者さまに丁寧すぎる服薬指導をしてしまうと、クレームのもとになってしまいます。もちろん伝えなくてはならない内容を省くことはできませんが、患者さまの状況を見ながら、服薬指導のボリュームをコントロールしましょう。
コツ④ 一度の服薬指導で完結する必要はない
新人薬剤師のうちは、あれもこれもと伝えたい情報をすべて詰め込んだ服薬指導をしてしまいがち。しかし、患者さまの中にはご高齢の方も多く、一度ですべてを理解してくれるとは限りません。「いろいろ聞いたけれど結局よくわからない」と患者さまに思われてしまうのは、服薬指導としては失敗です。
まずは、重要なことを中心に伝えましょう。そして次の来局時に、前回の復習を行いながら新しい情報を入れてあげるなど、伝え方を工夫しながらお話すると、患者さまも理解しやすくなります。
コツ⑤ 指導箋など使えるものはしっかり活用する
服薬指導は、すべてを口頭で済ませる必要はありません。メーカーが作成している指導箋を用いたり、ときには自作の説明書を活用したりと、臨機応変に対応しましょう。
食前に飲むお薬であれば、薬袋に大きく「食前」とマジックで書いたり、薬情(お薬の説明書)に蛍光ペンで色を付けたり...。患者さまがあとから見てもすぐにわかるようにすることが大切です。このようにほんの少し気配りをするだけでも、患者さまにとっては大きな違いとして伝えられるのです。
服薬指導時における会話例
服薬指導では、オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを適切に使い分けることで、患者さまとの会話をスムーズに進めることができます。
特に初回服用の薬については、副作用の初期症状や自覚症状、起こりやすいタイミングなどを具体的に説明し、副作用が発現しても自己判断で服用を中断せず、主治医や薬剤師に相談するようにお伝えしましょう。また、服薬指導の際にはお薬の飲み忘れがないか残薬の有無や服薬状況を確認したうえで、服薬アドヒアランスの向上をサポートすることが大切です。
ワーファリン錠を服用中の患者さま
(会話例)
薬剤師:「お薬を服用されていて、歯ミガキの時に歯茎から血が出たり、青あざができやすかったりするようなことはありませんか?」
患者さま:「特にぶつけたわけじゃないけど、足に青あざができてしまっているよ」
薬剤師:「ワーファリン服用中は青あざができやすくなりますが、このような比較的軽度の皮下出血はお薬が効いている証拠になりますので、安心して服用ください。反対に血便や血尿、黒色便などがあった場合はすぐの受診が必要になりますので、トイレに行った際には、毎回便や尿の状態の確認をしてくださいね」
患者さま:「そうなんだね。これからチェックするように心がけるよ」
薬剤師:「お薬も飲み忘れがないようですし、継続して服用できているので病状も安定していますね。また何か気になることがございましたら、いつでもご相談ください。」
服薬指導に大切なのはコミュニケーション
充実した服薬指導を行うために求められるのは、患者さまとの円滑なコミュニケーションです。コミュニケーションの第一歩として、患者さんの状態を見極め、話に耳を傾けましょう。たとえば、「専門用語を使わない」、「聞き取りやすいペースで話す」など、患者さまの目線で物事を考えることも大切です。
現在注目されている「ファーマシューティカルケア」は、薬剤師の行動の中心に患者さまの利益を据えるという行動哲学のこと。薬剤師は患者さまのQOL(生活の質)を向上させるために、責任をもって薬に関するケアを提供していかなくてはなりません。服薬指導を通して悩みや問題を解決し、薬物治療の効果を最大限に発揮させることが期待されています。
服薬指導後のSOAP(ソープ)薬歴の書き方
服薬指導のあとは、薬歴を記入しなくてはなりません。現在は電子薬歴の普及により、パソコンやタブレット端末を用いて薬歴を記載することがほとんど。
そのため、最近の薬歴の多くは「SOAP(ソープ)形式」と呼ばれるフォーマットで記入されます。SOAP形式で服薬指導をまとめておくと、情報が整理整頓されるため、あとで何かあったときにも探しやすくなるのです。
また、薬局によっては、「C(Care)」などが追加されたものや、「P」が「EpやCp(Ep=提供・指導したこと、Cp=患者さまに対して行ったこと)」に細分化されている場合も。
ここでは、基本的なSOAPの項目について説明していきます。
- S → Subjective Data(主観的情報):患者さまの主訴や、話の内容など
- O → Objective Data(客観的情報):検査の結果や患者さまの客観的情報
- A → Assessment(評価):SやOをもとにした、薬学的な考察
- P → Plan(計画):S~Aを踏まえた上での治療計画、今後行うケアの予定
服薬指導によって、SOAPの4つの項目を意識しながら、患者さまの話をしっかりとお聞きして薬歴を充実させましょう。また、上記4つのなかでも、薬剤師にとって最も需要な項目はAssessment(評価)です。特に新人のうちは、「なぜそのように考えたのか」ということを細かく記載して、先輩薬剤師にアドバイスをもらうようにしましょう。
薬歴の基本的な書き方
薬歴(薬剤服用歴管理簿)は、患者さまの安心安全な薬物治療を行うために欠かすことのできない大切なもの。一人ひとりに合わせた服薬状況や残薬確認、体調変化、併用薬、既往歴、他科受診、副作用、飲食物、後発品(ジェネリック医薬品)の意向、「おくすり手帳」の有無、服薬指導の要点など、様々な情報を記載します。
記載するときには、自分以外の薬剤師が見てもわかるように、箇条書きにするのがポイント。また、初回患者さまと再来患者さまで記入方法を変えることも必要です。詳しくは下記のリンクで解説しているので、気になる方は確認してみてください。
服薬指導は、まずは積極的に行動すること
今回は、新人薬剤師や服薬指導が苦手な方に、服薬指導の方法やコツをご紹介しました。
どんな仕事においても、初めはうまくいかず戸惑ってしまうもの。特に人の命に携わる薬を取り扱う重要な薬剤師の仕事では、万が一のことを考えて、尻込みしてしまいがちです。しかし、新人のうちは数をこなすことが"成長への近道"。恐れずに、積極的に挑戦しながら経験を積み、少しでもわからないことがあれば恥ずかしがらず先輩に聞くことも大切です。
ここでご紹介した内容を参考にして、1日でも早く一人前の薬剤師を目指してください。
ファルマラボ編集部
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