- 公開日:2020.08.28
新型コロナウイルス感染症「COVID-19」はどんな病気?医療業界への影響とは
2019年末頃から中国武漢市を中心に発生し、瞬く間に世界中へ広がった新型コロナウイルス。世界では2,152万人以上の方がこの新型コロナウイルスに感染し、約77万人が命を落としています(2020年8月17日現在)。日本でも4月上旬から感染者が増え続け、全都道府県を対象とし、2020年4月7日に緊急事態宣言が発出されました。これにより長期間にわたる休校、外出自粛、リモートワークなど、日常生活も大きな変化を余儀なくされました。
国内での感染者・死者数は徐々に減少し、一旦は落ち着いたように見えたものの、7月中旬ごろより再び感染が拡大しはじめ、医療業界にも大きな影響を与えています。今回は、新型コロナウイルスの特徴と医療業界に与えた影響、今後の見通しについて詳しく解説します。
現在分かっている新型コロナウイルスの特徴は?
新型コロナウイルス(COVID-19)は、2019年末頃に中国武漢市で発生し、世界中へ広がっていったと考えられています。感染経路や症状、治療法などについては世界中でさまざまな研究が行われていますが、まだはっきりわかっていないのが現状です。まずは、現在把握されている新型コロナウイルスの特徴について詳しく見てみましょう。
新型コロナウイルスはどうやって生まれたの?
そもそも、「コロナウイルス」とはどのようなタイプのウイルスなのでしょうか?コロナウイルスは、エンベロープというウイルスを覆う油性の膜の上にさらに「王冠」のような突起のある膜がかぶさった形状のウイルスのこと。自然界に多く存在し、人間に感染すると肺炎などの重篤な下気道感染症を引き起こすものもあります。2002年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)の原因ウイルスもコロナウイルスの一種です。
このようなコロナウイルスは、変異を起こしやすいのが特徴のひとつ。新型コロナウイルスも従来から存在したウイルスが変異を繰り返すことで、ヒトに感染するようになったと考えられています。様々な調査の結果、新型コロナウイルスは中国武漢市の野生動物を売買する生鮮市場で発生したとする説が濃厚であり、何らかの野生動物からヒトへ感染し、さらにヒトからヒトへ感染するようになったことが示唆されています。
新型コロナウイルスはどうやってヒトからヒトに感染するの?
現在のところ、新型コロナウイルスは接触感染と飛沫感染によって拡がっていくと考えられています。一方で、いわゆる3密の環境下での空気感染「エアロゾル(マイクロ飛沫感染)」による経路も指摘されており、アメリカでの研究によれば、エアロゾル化した新型コロナウイルスは病原性を保ったまま空気中を3時間ほど漂うとの報告もあります。また、物体の表面に付着した新型コロナウイルスは、2~3日も生存するとの報告も......。かつて流行し、世界を震撼させたSARSやMERSよりも感染力が高いと考えられているのが現状です。
新型コロナウイルスに感染するとどんな症状が現れる?
新型コロナウイルス感染症といえば、「肺炎」を思い浮かべる方が多いかもしれません。ですが、新型コロナウイルス感染症の症状の現れ方は、人によって大きく異なることがわかっています。一般的によく見られる症状としては、発熱、咳、息切れなどが挙げられますが、頭痛や下痢など「肺炎」とは全く関連しないような症状しか現れないことも少なくありません。また、重度な副鼻腔炎や味覚障害を引き起こすことも知られています。
一方で、新型コロナウイルスに感染したとしてもほとんど自覚症状がないケースも多いことがわかっています。新型コロナウイルスの厄介なところは、このような無症候感染者も感染源となること。自覚症状がないため感染に気づかないまま生活を送り、多くの方に感染させてしまっているケースも多いと考えられています。
新型コロナウイルスはどうやって治療する?
現在のところ、新型コロナウイルスに特化した抗ウイルス薬は開発されていません。そのため、世界中で新薬の開発が進められているとともに、別のウイルスに対する既存の抗ウイルス薬を新型コロナウイルス感染症治療薬に転用できないかといった研究も盛んに行われています。
その結果、日本国内では新型インフルエンザに対する「アビガン®」の有効性が指摘され実際に多くの医療機関で使用されています。また、アメリカではエボラ出血熱の治療薬として開発された「レムデシビル®」がFDA(Food and Drug Administration)/アメリカ食品医薬品局)によって認可されたことを背景に日本でも5月に厚生労働省の承認が下されました。
そのほかにも、抗HIV薬の「カトレラ®」、気管支治療薬の「オルベスコ®」、抗マラリア薬の「クロロキン®」など世界ではさまざまな既存薬の転用が試みられています。
新型コロナウイルスによって医療業界はどう変化したのか~薬剤師の役割とは?~
少しずつ解明が進められている新型コロナウイルスですが、世界的な終息の気配は見えていないのが現状です。それに伴い、感染対策を徹底すべく私たちの生活には大きな変化が生じています。医療業界も新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。ここでは、新型コロナウイルスが医療業界に及ぼした影響と、それに対する薬剤師の役割について詳しく見てみましょう。
受診よりもセルフメディケーション?
医療業界への新型コロナウイルスによる最も大きな影響といえば、患者数の減少といっても過言ではありません。実際、医療機関で発行された処方箋の数は前年より10%ほど減少していると言われています。耳鼻咽喉科や小児科に至っては30%以上の減少が見られています。
その背景には、医療機関を訪れることで新型コロナウイルスに感染する危険を避けようとする「感染対策」があります。厚生労働省なども不要不急の受診は控えるべきとの見解を発表しており、軽い風邪などであれば市販薬を使用して対処する方が増えていることが考えられます。
<薬剤師が果たすべき役割>
感染対策の一環として医療機関への受診を控えるのは間違った行為ではありません。ですが、「新型コロナウイルスばかりに囚われすぎて、受診の必要があるにも関わらず受診を控える......」というのは避けたいところ。新型コロナウイルスに過度な心配をしている患者さまに対しては、医療機関内では感染対策を徹底していること、通院を中断することによるデメリットの方が大きいことを説明するとよいでしょう。
また、OTC医薬品といった市販薬を利用する方も増えていると考えられるので、薬局やドラッグストア勤務の薬剤師は安全な使用の徹底、副作用が現れたときや症状が改善しないときはできるだけ早く病院を受診するように促すことも大切です。
電話などを用いた診療・服薬指導も可能に
厚生労働省は、2020年4月10日に医療機関内での新型コロナウイルス感染拡大の予防策として、慢性疾患に関しては電話やスマホなどのツールを用いた診療と服薬指導を時限的に許可することを発表しました。また、処方された薬は郵送してもらうことも可能になったため、医療従事者と対面することなく受診を完了できるようになりました。
対面の機会が減るため、患者さまと医療従事者双方の感染リスクを低減することが可能となります。しかし、その一方で、患者さまと対面せずに診療が完了するため、声や画面だけでは伝わらない体調の変化を見過ごしてしまう可能性も......。
<薬剤師が果たすべき役割>
当初、2022年9月1日から施行することとされいた「オンライン診療」が、新型コロナウイルスの蔓延によって前倒しとなり、同年3月11日に推奨された形となりました。これにより、今後もさらに対面しない診療形態が増えていくことが予想されます。患者さまにとっては感染対策になるばかりでなく、通院の手間が省けるなどメリットが多いようにも思えるオンライン診療ですが、上述した通り、体調の変化などを正しく医師に伝えられない可能性もあります。
受診の最後に患者さまと接する薬剤師は、オンライン診療だからこそ身体の状態をもう一度確認し、薬の正しい用量・用法、副作用について丁寧な説明を心がけるようにしましょう。
成田 亜希子(医師ライター)
一般内科医として幅広い分野の診療を行っている。保健所勤務経験もあり、感染症や母子保健などにも精通している。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。
ファルマラボ編集部
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