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  • 公開日:2019.03.22

副業によって心と体をサポートできる人に。吉田奈央さんインタビュー【薬剤師+ヨガインストラクター】

副業によって心と体をサポートできる人に。吉田奈央さんインタビュー【薬剤師+ヨガインストラクター】

薬剤師としてのお仕事以外でも活躍される方にお話しをお聞きする、インタビュー連載企画。第3弾となる今回は、薬局薬剤師の仕事をしながらヨガインストラクターとしてご活躍されている【吉田奈央さん】にお聞きしました。

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なんとなく決めた薬剤師への道。それでも薬局で働くやりがいを感じていた

薬剤師の仕事に興味を持ったり、薬学部への進学を決めたりしたのはいつからでしょうか?

実は大学の進路を選択した時に薬剤師になろうとは思ってなく、薬剤師の仕事内容もあまり理解していませんでした。もともとはなぜ人は心を病むのかを知りたくて精神科医を目指していたのですが、数学がどうしても苦手で......。

浪人をしたのですが国立大の医学部の壁は高く挫折したことで、進路の選択に困ってしまいました。結局、建築や土木、応用化学など理系の学部を幅広く受験し、合格した学部のうち一番早く資格を取得できるという理由で、薬学部を選びました。

もともと薬剤師になろうと決めていたわけではなかったんですね。大学卒業後、実際に薬剤師として働かれてどうでしたか?

大学卒業後は調剤薬局やドラッグストアで、薬剤師としてのやりがいを感じながら働いていました。何より患者さまに不安を打ち明けられた時に、自分の知識を活かして患者さまの役に立てると嬉しかったです。

また私が新人の時に働いていたのが、精神科の患者さまが半分くらい、他には内科、糖尿専門外来、漢方外来、更年期外来、肝臓専門外来の方など、様々な患者さまがいらっしゃる薬局だったので、幅広く知識を得ることができました。

若手の頃は、医師の方の意図と違う内容を患者さまに伝えてしまうなど、苦労したこともありました。薬剤師として患者さまにお伝えできるさじ加減を身につけてからは、スムーズに仕事ができるようになりましたね。

病気によって健康へのアプローチが変わる。薬剤師とヨガインストラクターの両立を選択

2015年以降、本格的にヨガのインストラクターとして活動されていますが、そのきっかけは何だったのでしょうか?

2014年に仕事とプライベートでのストレスが重なってしまい、潰瘍性大腸炎になってしまったんです。一生治らない病気と言われているので、当時は相当ショックを受けました。

潰瘍性大腸炎のスタンダードな治療薬で完全に症状がよくならず、この時薬だけで解決できないこともあるということを身をもって感じたんです。とても衝撃的な出来事でした。それから、自分の考え方や環境、食べ物などを変えていかないと自分の病気は良くならないと思い、薬以外の方法を考えるようになりました。その中の一つが「ヨガ」でした。

初めてヨガをしたのは25〜26歳ぐらいで、初めは趣味としてやっていました。ある時、知り合いの方のヨガレッスンを受けたら、心が落ち着いてとてもリラックスできたんです。これをきっかけに、私もヨガによって癒しを与える空間を提供したいと思い、週末にインストラクターのコースを受けて実技や座学を少し勉強したこともありましたが、結局教える立場にはならないまま、時が流れていきました。

自分自身が病気を経験したことが、ヨガをもっと真剣に勉強したいという原動力になり、2015年にニューヨークに渡って全米ヨガアライアンスという公式の資格を取得したんです。

病気がヨガのインストラクターになるきっかけとなったのですね。全米ヨガアライアンスのカリキュラムを通して、ご自身に変化はありましたか?

自分自身とも向き合いながら、ヨガのゴールである「心をコントロールすること」の大切さを学ぶことができました。そして自分が病気になってしまったのはストレスによるイライラなど、感情の暴走によるものであると理解できたんです。

現地に約1ヶ月滞在して朝から晩までヨガの勉強をする厳しいカリキュラムだったのですが、大切な仲間もでき、やりたいことを精一杯やることができた良い経験となりましたね。

現在は漢方とヨガのおかげで潰瘍性大腸炎の症状は出ていません。病気になる前と同じ生活を送れているので感謝しています。また日々の体調ケアにも、漢方茶、ハーブティー、アロマオイルを取り入れ、なるべく薬を使わないような生活を送るようになりました。

薬剤師とヨガの経験が繋がって、心と体をケアする方法を伝えたいという思いに

ヨガをはじめとした様々な方法によって、健康を保っているんですね。病気を経験されてから、薬剤師として変わったと思うことはありますか?

患者さまの気持ちが、真の意味でわかるようになりましたね。健康なうちはどうしても他人事になってしまう場面があったと思います。病気になるとメンタルも落ちてしまうので、そういったケアを心がけながら、親身に対応できるようになりました。

また、薬と自分自身で行うケアの2つの視点をニュートラルに持つことができるようになりました。お薬で悩んでいる方がいらっしゃった時、もちろんお薬のことをお伝えした上で、食事や考え方、運動など、違う視点からもアドバイスをしています。

薬剤師とヨガインストラクターのパラレルキャリアによって、健康に対する考え方や視野を広げることができましたね。

患者さまとの関わり方や健康に対する考え方に変化があったのですね。では今後はどのようなことに挑戦していきたいですか?

今後はさらにヨガインストラクターとしての活動の幅を広げて行きたいです。ヨガインストラクターの活動は、企業でのヨガ、東洋医学を取り入れた漢方アンチエイジングヨガ、アロマオイルを使ったレッスンなどを行っています。ヨガレッスンでは、生徒の方がご自身の体と心を見つめられて、心身を整えられるような工夫をしています。

その他には、自分の人生のテーマを知ることができる占星術のセッションを取り入れたり、薬膳レストランとコラボをして「薬膳セミナー×ヨガ」のイベントを行ったりしています。また現在は、腸内サプリメントの企業とのコラボイベントも企画しているところです。今後は「音楽×ヨガ」といった、少し違うジャンルを取り入れた新しいイベントにもチャレンジしてみたいですね。

今思えば、初めて働いた薬局で出会ったような精神科患者の方々にもヨガは効果があるのではないかと思っています。人生には様々なことが起きるので、全ての方が日頃から心を鍛えたり、自然治癒力を高めたりしておくことが必要なのではないかと考えています。ヨガはそういう力を身につける方法の一つだと言えますね。心身ともに健康でないと、人生を楽しむことはできないですから。

高校の時に漠然と精神科医を目指したこともありましたが、これまでの経験や学びがようやく繋がって今になっています。私は人生を通して人の心と関わり、それぞれの人生が輝くようなサポートをしていきたいのだということに気づいたんです。

自分をよく知り一歩ずつ行動することで、輝く人生に繋がっていく

最後に、今後のキャリアを悩む薬剤師に向けて一言お願いします。

少し前までは一つの道を決めたら、それをずっと続けるのが一般的でした。しかし最近では国が副業を認める施策を進めており、型にはまらない様々な生き方が可能になっています。薬剤師という仕事においても、一筋で頑張る人がいても良いですし、いろんなことに挑戦する人がいても良いのです。

そういった個人の生き方がフォーカスされる時代では、自分が何が好きで何が嫌いで、何をしたいのか、どんな生き方をしたいのかを知ることがとても重要になってきます。自分の経験と壁打ちしながら、自分を分析していってください。ゆっくり自分と向き合う時間を持つと良いと思います。

もし何も見つからないのであれば、目の前のことを一生懸命にやって、何か興味が出て来たら行動してみてください。勉強したいことがあるなら迷わず勉強する、会いたい人がいるなら会いにいく、行きたいところがあるなら行く。直感のままに行動してみると、やがて点と点は繋がって最後に自分の本当にやりたいことにたどり着けると思います。それは今、私が実際に感じていることです。

どんなに遠回りでもどんな経験であっても、輝く人生に繋がって行くので、焦らずに自分の人生を楽しんで行くスタンスで一歩ずつ進んで行ってくださいね。

  • 吉田奈央(よしだなお)さん

東邦大学薬学部卒業後、調剤薬局、ドラッグストアに勤務。
オーストラリアでワーキングホリデー中にアロマテラピーを学んだり、帰国後はカラーセラピーであるオーラソーマ、エネルギーヒーリングなどを直感のままに学ぶ。
2014年仕事とプライベートのストレスから潰瘍性大腸炎という難病になり健康の大切さ、自分の体と心と向き合う。 病がきっかけで趣味でしていたヨガを本気で勉強することを決意し、2015年にニューヨークで全米ヨガアライアンスRYT200を取得。
現在はヨガと漢方で健康を取り戻し、グループ、プライベートレッスン、企業にてヨガの哲学から呼吸法、瞑想の流れを重視したヨガレッスン、東洋医学とヨガを組み合わせた漢方アンチエイジングヨガや薬膳レストランなどでコラボイベントを行っている。
ブログ:Ph.Nao's Blog Integrative Beauty

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記事掲載日: 2019/03/22

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