- 公開日:2020.08.31
新型コロナウイルス感染症「COVID-19」が重症化しやすい患者とは?
世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。2019年末頃から中国武漢市を中心に「謎の肺炎」として感染が拡大し、瞬く間に世界中で感染者が爆発的に増加しています。
世界での感染者は約2,200万人、死者は78万人超えとのこと(2020年8月20日現在)。温かい季節になればウイルスの活性が弱まるとの見解もありましたが、日本を含めて世界的な終息の気配はまだまだ見えないのが現状です。
そんななか、新型コロナウイルスに関する研究が世界中で進められています。新種のウイルスゆえに明確な発症ルートや治療法などがわかっていない部分も多々ありますが、少しずつ重症化しやすい方のパターンが見えてきています。
そこで今回は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が重症化しやすいケースについて詳しく解説します。
新型コロナウイルス感染症の重症度には個人差があるってホント?
新型コロナウイルスは2019年末頃に中国武漢市で発生した新種のウイルスと考えられています。そのため、症状の現れ方も未だ明確に分かっていない部分があります。
新型コロナウイルスに感染しているものの全く症状がないケースもあれば、急激に重篤な肺炎を発症して命を落とすケースも......。また、下痢や血栓症など「呼吸器」とは関係しない症状があることも報告されています。
まずは、新型コロナウイルスによって引き起こされる症状や現れ方の特徴について詳しく見てみましょう。
新型コロナウイルスの主な症状
現在、世界中で新型コロナウイルスの研究が進められていますが、多くの発症者を調査することで症状の現れ方について少しずつ見えてきた部分があります。
新型コロナウイルスは感染すると5~7日程度で発熱、咳、頭痛、倦怠感といった風邪症状や嗅覚・味覚障害、下痢などの症状が現れるとされています。中国疾病対策センターによれば発症者の8割以上はこのような軽い症状が現れるのみで、自然に軽快していくとのこと。
一方で、残り2割はウイルス性肺炎を発症し呼吸困難などを引き起こすとされています。また、その中でもさらに重症化して敗血症に移行したり、急性呼吸性窮迫症候群(ARDS)、血栓症、多臓器不全などを併発したりすることで死に至るケースもあることが分かっています。
新型コロナウイルス感染症が重症化するメカニズム
世界での新型コロナウイルス感染者は瞬く間に1000万人を突破。短期間の間に爆発的な感染拡大が生じ、世界中が脅威に怯えている一方、多数の患者調査などから新型コロナウイルス感染症が重症化する仕組みが徐々に分かってきています。
そもそも「コロナウイルス」とは、表面に王冠=コロナのような突起が多数あるウイルスのこと。新型コロナウイルスは、この突起がヒトの細胞のアンジオテンシン変換酵素に結合して感染が成立するとされています。
また、新型コロナウイルスは気管・気管支・肺などの下気道に感染し、肺炎などの重篤な症状を引き起こします。さらに、そのなかには炎症性物質であるサイトカインの爆発的な放出が生じる「サイトカインストーム」と呼ばれる現象に陥るケースがあることが分かってきました。サイトカインは本来、新型コロナウイルスなどの病原体を攻撃する働きを持つ物質です。しかし、体内で過剰に産生される状態が続くと、自分自身の正常な組織まで攻撃してしまい多臓器不全を引き起こすことに......。また、過剰なサイトカインの影響で血液が固まりやすい状態になるため、細かい血の塊が心臓や肺、脳など重要な血管を閉塞させる血栓症を引き起こすケースも世界中で報告されています。
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▼参考記事はコチラから
新型コロナウイルスとサイトカインストーム
新型コロナウイルス感染症が重症化しやすい人とは
新型コロナウイルス感染症はサイトカインが爆発的に放出され続ける「サイトカインストーム」が生じることで重症化し、全身に重篤な症状を引き起こすことが分かりつつあります。
しかし、新型コロナウイルスに感染した人すべてにサイトカインストームが生じるわけではなく、どのような条件が揃うと引き起こされるのか明確には分かっていないのが現状です。
一方、中国疾病対策センターが患者4万4672人を対象に行った調査によれば、感染者の5%が重症化して生命の危機に陥り、2.3%の感染者が命を落としているとのこと。連日の報道では、日本国内でも芸能人が立て続けに新型コロナウイルス感染症によって命を落とすなど、恐ろしい面ばかりがクローズアップされています。しかし、実際は新型コロナウイルスに感染しても多くの方は軽い症状しか現れず、重症化する方はごく限られていることがわかっています。では、どのような方が重症化しやすいのかを詳しく見てみましょう。
年齢
新型コロナウイルスは年齢が上がるごとに重症化する方が増え、致死率もアップしていく傾向にあります。前述した中国の調査によれば、感染者のうち、10歳未満の小児の致死率は0%であり、10~30代は0.2%にすぎないとのこと。一方で、40代0.4%、50代1.3%、60代3.6%、70代8%、80代以上14.8%と年齢を重ねるごとに致死率は右肩上がりになることがわかりました。
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致死率は2.3% 高齢者や持病ある人は注意 中国分析データ公表
基礎疾患の有無
新型コロナウイルス感染症は、基礎疾患がある方も重症化しやすいことがわかっています。
同上の調査によれば、心血管疾患がある方の致死率は10.5%とのこと。そもそも心血管疾患は年齢が高いほど発症しやすい病気であるため、年齢の影響もあることが考えられますが、全体の致死率の約5倍となっています。
その他の基礎疾患別致死率は高血圧6%、糖尿病7.3%、COPDなどの慢性呼吸器疾患6.3%、悪性腫瘍5.6%にも上り、一方で持病のない方の致死率は0.9%です。また、免疫力が低下しがちな抗がん剤や免疫抑制剤、生物学的製剤などを服用中の方、人工透析中の方なども重症化しやすいことが分かっています。
生活習慣
アメリカ疾病対策センターの調査によれば、新型コロナウイルス感染症は、喫煙習慣のある方や重度な肥満体型の方は重症化しやすい傾向にあると言われています。喫煙習慣や重度な肥満は呼吸機能の低下を引き起こすため、感染すると一気に呼吸機能が低下して重症化するためと考えられます。
妊婦
これまで、妊娠中の方が新型コロナウイルスに感染した場合の症状の現れ方や胎児への影響などについては、明確に分かっていない部分も多々ありました。しかし、アメリカ疾病対策センターは、新型コロナウイルスに感染した15~44歳の女性約9万人を調査したところ、妊娠中だった方は妊娠していない方に比べて重症化する確率が1.5~1.7倍高かったことを報告しています。また、流産や早産のリスクが高まるとの報告もあり、アメリカ疾病対策センターは重症化しやすい患者のリストに妊婦を追加することを発表しました。
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妊婦のコロナ感染、重症化リスク 米CDCが9万人分析
重症化しやすい患者さまへ、薬剤師はどう接する?
国内でもまだまだ終息の気配が見えない新型コロナウイルス。緊急事態宣言は解除されたものの、7月に入ってから再び感染者が増えているため新型コロナウイルスに恐怖心を抱く方も多いのが現状です。
しかしながら、新型コロナウイルスが重症化する割合は全体で見ればそこまで高くはありません。とくに若い世代の方は、重症化しやすい基礎疾患などの条件がない限り重症化することは非常に稀と言えます。一方で、高齢者や今回ご紹介した基礎疾患がある方、妊娠中の方などは重症化する確率が上がるのも事実です。
薬剤師として患者さんと対面する際に、新型コロナウイルスへの不安を吐露されることも多いと思います。その際は、過度な不安を煽らないよう適切な感染対策の徹底が重要であることを指導しましょう。とくに重症化リスクが高い方やその同居家族などには、感染対策の指導を徹底し、風邪症状があるときは電話で医療機関に相談(直接医療機関に出向くのはNG!)するように伝えられるといいですね。
ファルマラボ編集部
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