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  • 公開日:2021.08.25

栄養サポートチーム(NST)に求められる仕事と薬剤師が担う役割は?

栄養サポートチーム(NST)に求められる仕事と薬剤師が担う役割は?

患者さまに最適な栄養療法を提供することを目的とした医療チームの一つとして、栄養サポートチーム(NST)が注目を集めています。入院中の患者さまや在宅治療を受ける患者さまに栄養サポートチームが介入することで、病気の治療促進や合併症の予防、入院期間の短縮など、様々な効果が期待されているのです

この記事では、栄養サポートチームの概要や薬剤師に求められる役割、活動内容について解説していきます。関連する資格であるNST専門療法士についても触れているので、ぜひ参考にしてください。

栄養サポートチーム(NST)とは

栄養サポートチーム(NST)とは

栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)とは、医療系多職種によって構成される、患者さまに最適な栄養療法を提供することを目的とした医療チームのことです。医師や看護師、薬剤師だけでなく、管理栄養士や臨床検査技師、理学療法士、歯科衛生士、介護福祉士、クラークなど、複数の医療従事者が参加しています。

栄養サポートチームは、1968年に米国で中心静脈栄養(TPN)が開発されたことを受けて、その実施と安全管理を目的として誕生しました。現在では多くの医療機関で採用されており、感染対策チームや緩和ケアチームなどと同じく、複数の専門家が互いの専門性を尊重しながら1つのチームを結成して治療にあたることで、医療全体の質向上が期待されています

栄養サポートチーム(NST)の役割や活動内容は?

栄養サポートチーム(NST)の役割や活動内容は?

栄養サポートチーム(NST)に求められる役割や活動内容には、どのようなものがあるのでしょうか。

求められる役割

疾病の治療には様々な方法がありますが、栄養管理が適切に行われなければ、どのような治療方法も成果をあげることはできません。とくに入院中は生活環境の変化や手術による侵襲などによって、十分な食事が摂れない患者さまも少なくありません。

栄養サポートチームは、患者さまそれぞれの栄養状態を評価したうえで、最も適切に栄養補給を行う方法の提案を行います。あわせて、医師や看護師などの専門職、各種医療チームとの情報交換によって、栄養状態の改善や治療効果の向上、合併症の予防、QOL(生活の質)向上へ寄与することも役割のひとつです。

おもな活動内容

医療機関によって活動内容は様々ですが、ここではNSTの一般的な活動について解説していきます。

まずは、栄養状態が悪化している患者さまや栄養管理を必要としている患者さまを対象に、栄養サポートチームによる回診(NST回診)を実施します。そこで患者さまの身体状況を実際に確認しながら、食事の状況や嗜好、問題点について聞き取りを行います。

回診後はカンファレンスを開催して患者さまごとの対応策を協議し、その結果を主治医や担当看護師など多職種へフィードバックすることも重要です。また、院内外職員のスキルアップを目的に、研修会や勉強会を企画することもあるでしょう。

栄養サポートチームにおける薬剤師の役割は?

栄養サポートチームにおける薬剤師の役割は?

栄養サポートチーム(NST)における主な薬剤師の役割は、薬学の知識に基づいた栄養剤や輸液の適正使用と情報提供です。たとえば静脈栄養・経腸栄養療法に関する処方設計支援や、病態に応じた栄養製剤の提案、中心静脈栄養(TPN)の調製などが求められています。

医薬品と静脈・経腸栄養製剤との相互作用についての確認や、多職種に対する栄養製剤の適正使用や器具の使用方法についての情報提供も重要な役割の1つです。

ほかにも患者さまやその家族に対して、栄養製剤を適正使用するための方法、併用薬や食事との相互作用についての服薬指導を行います。管理栄養士と協力して、摂取すべき栄養素や栄養補助食品の使用についてアドバイスを行うなど、在宅栄養療法において力を発揮こともあります

栄養サポートチーム(NST)で活かせる資格「NST専門療法士」とは

栄養サポートチーム(NST)で活かせる資格「NST専門療法士」とは

栄養サポートチーム(NST)でより活躍するための資格として、「NST専門療法士」があります。ここでは、概要や申請条件について確認していきましょう。

NST専門療法士の概要

NST専門療法士とは、一般社団法人日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)が認定する栄養管理の専門資格です。静脈栄養・経腸栄養を用いた臨床栄養学に関する、優れた知識と技能を有した人材を育成するために設立されました。

薬剤師はもちろん、医師や看護師、管理栄養士、臨床検査技師など、栄養サポートチームに関わる専門職が取得対象です。栄養サポートチームに所属するために必須となる資格ではありませんが、資格の取得によってより豊富な知識と実践的な技術をもって業務に取り組めるようになります。

申請条件

NST専門療法士の認定を申請するには、以下の条件を満たしている必要があります。

① 日本国内の国家資格を有していること。
認定対象国家資格:管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師

② ①の国家資格を有してから、医療・福祉施設に勤務し栄養サポートに関する業務に従事した経験が5年以上あること。

③ 日本臨床栄養代謝学会学術集会に1回(10単位)以上、日本臨床栄養代謝学会主催のNST専門療法士受験必須セミナー(旧JSPEN臨床栄養セミナー、コ・メディカル教育セミナー10単位)に1回以上参加し30単位以上を取得していること。または、必須単位数に加え、日本臨床栄養代謝学会が認める栄養に関する全国学会、地方会、研究会への参加単位数の合計が30単位以上あること。なお、「バーチャル臨床栄養カレッジ」修了証については非必須10単位を認める。

④ 認定教育施設において、合計40時間の実地修練を修了していること。

⑤ ①から④までの条件を満たしたあと、認定のための試験に合格していること。

認定試験について

前述した認定試験を申請する場合は、申請書類を日本臨床栄養代謝学会のホームページ からダウンロードし、認定・資格制度委員会に提出しましょう。

提出書類は以下の通りです。

① 所定のNST専門療法士受験申請書

② 最終学歴から申請時までの履歴書

③ 国家資格の免許証(写)

④ 日本臨床栄養代謝学会学術集会参加証【原本】(旧 日本静脈経腸栄養学会学術集会参加証)

⑤ NST専門療法士受験必須セミナー(旧 JSPEN臨床栄養セミナー、コ・メディカル教育セミナー)修了証【写】

⑥ その他本学会の認めた全国学会、地方会、研究会等への参加証【写】

⑦ 指導医が自署捺印した認定教育施設実地修練修了証

⑧ 実地修練期間中にその施設において携わった静脈経腸栄養管理中の患者さまに関する1,600字以内の症例報告

受験料および認定料

NST専門療法士認定試験の受験量は10,000円です。試験に合格し、認定を希望する場合は、認定料として20,000円が必要となります。

多職種連携でも活躍できる薬剤師を目指して

この記事では、栄養サポートチーム(NST)の概要や薬剤師に求められる役割、活動内容、関連する資格であるNST専門療法士について解説していきました。

栄養サポートチームは薬剤師が力を発揮できる分野の一つです。また、超高齢社会を迎える日本では、フレイルやサルコペニアなどが問題視されるなかで、高齢者の栄養管理も注目を集めています。今後、栄養サポートチームに対するニーズはますます高まると考えられているため、資格の取得などを検討してみてはいかがでしょうか。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/08/25

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