- 公開日:2023.09.25
低用量ピルのオンライン処方は安全?診療の流れやピルの種類を解説
新型コロナウイルス感染症の拡大により、急速に社会全体のデジタル化が進展しています。薬においても、最近では低用量ピルのオンライン処方が広まっており、患者さまから低用量ピルについての質問を受けることもあるでしょう。
オンライン処方された薬は自宅まで郵送されます。とても便利なシステムではありますが、「本当に安全なの?」と気になっている方もいるでしょう。
そこで今回は、低用量ピルのオンライン処方が安全なのかについて詳しく見ていきます。オンライン処方の流れについても紹介しているので、参考にしてみてください。
低用量ピルがオンライン処方されるまでの流れ
低用量ピルのオンライン処方は、とても簡単に利用できます。クリニックによって流れは異なりますが、「診療の予約」→「診療」→「会計」→「薬の発送」という手順を踏むことが一般的です。ここでは、処方されるまでの流れを見ていきましょう。
診療の予約をする
まず、診療の予約を行います。予約はネットやアプリなどを使ってできることがほとんどです。クリニックによってはLINEからも予約できます。
オンラインで診療を受ける
オンライン診療の日程が決まったら、実際に診療を受けます。オンライン診療はスマートフォンやパソコンのカメラを使用して、対面した状態で受ける必要がありますが、チャットのみで診療を行うクリニックもあるようです。
会計・低用量ピルの発送
診療が終わった後は、会計に進みます。オンライン診療が終わると、登録しているクレジットカードで自動的に引き落としされる場合や銀行振込や後払いなども利用できることがあります。診察料や送料、薬代など必要な料金を支払った後、低用量ピル等の処方箋が発送されます。
低用量ピルをオンライン診療で処方する際の注意点
オンライン処方は、医師が診察を行ったうえで処方していますが、ただし以下の点に注意しましょう。
本当に医師が処方してくれているのか?
処方箋の発行は、医師でないと行えません。医師法第20条でも、次のように定められています。
第20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。
出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp)
そのため、オンライン診療を行うのも医師である必要があります。
しかし、オンライン診療、とくに音声通話やチャットのみでやりとりをする場合は、相手の顔が見えないため本当に医師が担当しているのか判断がはっきりしません。厚生労働省はチャットのみで完結するオンライン診療を認めていないため、そのようなクリニックは不信感も残ります。
できるだけテレビ電話等を利用した対面での診療を選び、サイトに医師の情報や写真が掲載されているところを選択することをお勧めします。
「サイトの情報だけでは不安」という方には、厚生労働省が提供している「医師等資格確認検索」を使うと、医師かどうかの真偽を判断することができるでしょう。
血液検査ができないので血栓症のリスクがわからない
低用量ピルには、血栓症のリスクがあります。たとえばトリキュラーの添付文書には、次の患者さまには投与しないこととして、「血栓性素因のある女性」があげられています。つまり、低用量ピルを服用すると血栓症のリスクが上がるため、血栓症になりやすい方は服用できません。
また、外来受診した患者さまに低用量ピルを処方する場合は、血栓症のリスクを調べるために血液検査を行うクリニックがあります。しかし、オンライン処方では血液検査を行えないため、血栓症のリスクがあるかわからないまま処方することになります。そのため、オフラインと比べると安全性は低いと言えます。
海外の疫学調査では、低用量ピル服用女性で起こる静脈血栓症は、「年間1万人あたり3~9人」(日本産科婦人科学会『低用量ピルの副作用について心配しておられる女性へ。』より引用)と報告されています。また、日本では低用量ピルのヤーズ配合錠と因果関係の否定できない血栓症による死亡例が3列報告されており、安全性速報(ブルーレター)も出されています。
このような症状があらわれたときは、すぐに救急医療機関を受診するように、患者さまに指導しましょう。
低用量ピルの個人輸入は危険
個人輸入を安易に利用しない
個人輸入の低用量ピルを安易に購入することはオススメできません。個人輸入・通販の薬には偽装品が紛れている場合があります。オンライン処方の場合も、不安はありますが、個人輸入・通販と比べると多少安心して購入することができます。
オンライン処方は個人輸入と比べて、安全性が高い
個人輸入は通常のオンラインショップと同じように、欲しい薬をオンライン上で支払いを済ませるだけで簡単に購入できます。
しかし、個人輸入で購入した薬は偽造品だったり、全く違う成分が入っていたりする可能性もあり、医師の診療は行われません。通常よりも低価格であるからと安易に利用する方がいますが、健康被害をもたらす可能性が高いので注意しましょう。
オンライン処方は医師がきちんと診療したうえで処方するので安全性が高いと言えます。
オンライン処方される低用量ピルの主な種類
オンライン処方される低用量ピルは、クリニックによって異なります。ここでは、代表的な5つの低用量ピルについて特徴を簡単に見ていきましょう。
避妊を目的とする低用量ピル
トリキュラー
トリキュラーは、第2世代3相性の低用量ピルです。
レボノルゲストレルとエチニルエストラジオールが含まれています。
■特長不正出血が起こりにくいと言われています。
理由は、女性の体では生理周期の時期によってホルモン量が変動しています。トリキュラーはその変動に合わせて成分を調節しているため、不正出血が起こりにくいと言われています。
マーベロン
マーベロンは、第3世代1相性の低用量ピルです。ゲストデンとエチニルエストラジオールが含まれています。
■特長アンドロゲン作用(ニキビや多毛などの男性化症状)が少ないため、ほかの低用量ピルで肌トラブルが起こる方にも使いやすいです。
ファボワール
ファボワールは、第3世代1相性の低用量ピルです。デソゲストレルとエチニルエストラジオールが含まれています。
■特長ファボワールはマーベロンのジェネリック医薬品であるため、マーベロンよりも安価で購入できます。効果もマーベロンと同等の効果が期待できます。
月経困難症を目的とする低用量ピル
ヤーズ
ヤーズは、第4世代1相性の超低用量ピルです。ドロスピレノンとエチニルエストラジオールが含まれています。
■特長卵胞ホルモン量が低用量ピルよりも少ない超低用量ピルは、休薬によるホルモン変動が少ないです。そのため、低用量ピルで起こっていた副作用を軽減できることがあります。またアンドロゲン作用を抑える働きがあるためニキビなどの症状が気になる方にも使いやすいです。
ジェミーナ
ジェミーナは、第2世代1相性の超低用量ピルです。レボノルゲストレルとエチニルエストラジオールが含まれています。
■特長最大77日間の連続服用ができるため、月経の回数を3か月に1度に減らすこともでき、出血期間中の体調不良を避けることができます。
トリキュラー|KEGG
マーベロン|KEGG
ファボワール錠|KEGG
ジェミーナ配合錠|KEGG
月経困難症治療剤 ジェミーナ®配合錠 |ノーベルファーマ株式会社
ヤーズ配合錠|PMDA
オンライン処方を上手に活用しましょう
オンライン処方とはいえ診療は自分に合ったものを処方してもらえるため、一定の安全性は確保されています。
しかし、血栓症のリスクがある患者さまは、注意が必要です。突然の足の痛みや腫れ、手足の脱力や麻痺、突然の息切れや胸の痛み、視力障害などの静脈血栓症の症状が起こればすぐに救急医療機関を受診するようにしっかりと指導を行いましょう。
また、低用量ピルの個人輸入は非常に危険です。もし個人輸入について患者さまから相談を受けた場合は、オンライン処方の活用を提案してみましょう。
監修者:松田 宏則(まつだ・ひろのり)さん
有限会社杉山薬局下関店(山口県下関市)勤務。主に薬物相互作用を専門とするが、服薬指導、健康運動指導などにも精通した新進気鋭の薬剤師である。書籍「薬の相互作用としくみ」「服薬指導のツボ 虎の巻」、また薬学雑誌「日経DI誌(プレミアム)」「調剤と報酬」などの執筆も行う。