バクスミー点鼻粉末剤
Q |
何のお薬?処方目的は? |
A |
「低血糖時の救急処置」のみの適応です。 |
Q |
用法・用量は? |
A |
通常、1回3mgを鼻腔内に投与します。低血糖症状が改善しない場合でも、追加投与は行わないこととされています。鼻炎に用いる点鼻薬とは異なり、使用に際して空うちは必要ありません。 基本的に患者さま本人ではなく、ご家族などの介護者が使う薬剤です。使用時は救急処置として即座の対応が求められるため、事前に使用方法をしっかり把握してもらう必要があります。注入ボタンを押す際に抵抗を感じることがありますが、最後まで押し切る点が重要で、介護者によるマネキンへの模擬投与試験では、押し切りが不十分であったためにグルカゴンが到達しなかったと思われる失敗例が報告されています。メーカー作成の資材などを活用して指導しましょう。 |
Q |
作用機序は? |
A |
グルカゴンは肝臓のグルカゴン受容体に結合して活性化し、肝臓に蓄積されたグリコーゲンをグルコースに分解して血液中に放出させることにより血糖値を上昇させます。そのため、飢餓状態や副腎機能低下症、頻発する低血糖、一部糖原病、肝硬変などの場合には、血糖上昇効果はほとんど期待できません。また、アルコール性低血糖の場合にも、血糖上昇効果はみられません。 |
Q |
投与前後に注意すべき点は? |
A |
保管中の注意点として、防湿のためにフィルム包装が為されているようですので、フィルムは投与直前まではがさないようにします。また、本剤の使用により低血糖から回復した場合であっても糖質投与を行うことが望ましいとされています。 |
Q |
注意すべき副作用は? |
A |
悪心・嘔吐や頭痛、鼻痛などが副作用として報告されています。悪心・嘔吐・頭痛はグルカゴンの注射製剤でも報告されている副作用ですが、鼻痛は本剤の剤形ゆえの副作用と思われます。また、注射製剤ではアレルギー反応が報告されているため、本剤でも注意が必要と考えられます。
注射製剤(グルカゴン注)との比較
グルカゴンには注射製剤がありますが、臨床試験で低血糖からの回復率について、本剤の非劣性が検証されています。また、投与後1時間までの間は注射剤と同等以上の血中濃度を維持しており(注射剤が1mgであるのに対し本剤は3mg)、代替薬剤として遜色なしと言えるでしょう。
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Q |
「低血糖時の救急処置」とはどういう状況?ブドウ糖などとの使い分けは? |
A |
●救急処置が必要な状況について 低血糖が起こっても対処が遅れたり、低血糖に気づかずにそのまま進行したりすると、意識の遠のきやけいれん、昏睡といった症状を呈することがあります(重症低血糖)。この状態になると患者さまは自身で低血糖に対処する事ができず、家族や周りの人が手助けする必要があり、本剤はこのような場合での使用が想定されています。 ●ブドウ糖などとの使い分け 通常の低血糖であれば、患者さまは自身で糖分を経口摂取することが可能ですので、ブドウ糖などの糖質摂取を行い、本剤の使用は推奨されません。しかし、上記のような重症低血糖時は患者さまが自身で糖分を経口摂取することが困難な状況です。本剤はこのような「意識がはっきりしていない」「口から糖分を取れる状態にない」「患者さま自身で対処出来ない」ときに、本人ではなく家族が使用することになります。本剤は鼻粘膜から受動的に吸収され、本人が吸入しなくても問題はなく、また鼻炎がある場合でも薬効には影響しないと考えられています。 ◆総評として、家庭でも重症低血糖の対応が容易になった画期的な薬剤ですが、患者本人ではなくご家族が使用方法を把握しておく必要がある点に注意して服薬指導を行う必要があります。 |
掲載日: 2022/05/12
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります
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