- 公開日:2021.09.22
オーソライズドジェネリックとは?メリット・デメリットや服薬指導のポイントを解説
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と治療学的に同等でありながら、一般的に研究開発に要する費用が低く抑えられることから、薬価が低く設定されています。増え続ける医療費を節減するため、ジェネリック医薬品の使用の促進は薬剤師に期待される役割の1つです。そうしたなかで、先発医薬品メーカーから許諾を得て製造される「オーソライズドジェネリック」が注目を集めています。
この記事では、オーソライズドジェネリックの概要やメリット・デメリット、薬剤師がおさえておくべきポイントについて解説していきます。
オーソライズドジェネリックとは?
ここでは、オーソライズドジェネリックの概要や種類、使用が広がる背景について確認していきます。
オーソライズドジェネリックについて
オーソライズドジェネリック(AG:Authorized Generic)とは「許諾を受けたジェネリック医薬品」という意味です。先発医薬品メーカーから許諾を得て後発品メーカーが製造した、先発医薬品と原薬、添加物や製造方法などが同一の医薬品のことをいいます。
開発にかかる費用や時間が削減できるため、ジェネリック医薬品と同じく薬剤費の負担を下げられるのが大きな特徴です。ジェネリック医薬品を不安視する患者さまも一定数いるなかで、先発医薬品メーカーとほとんど同等の条件で製造されるオーソライズドジェネリックが注目されはじめています。
オーソライズドジェネリックの種類
オーソライズドジェネリックと一口に言っても、製造されるプロセスの違いでおもに3種類に分けられます。
■オーソライズドジェネリック(AG)の種類
種類 | 先発医薬品との比較 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
有効成分 | 原薬 | 添加物 | 製法 | 製造工場 | 製造技術 | |
AG1 | 同一 | 同一 | 同一 | 同一 | 同一 | 同一 |
AG2 | 同一 | 同一 | 同一 | 同一 | 異なる | 異なる |
AG3 | 同一 | 異なる | 同一 | 同一 | 異なる | 異なる |
AG1は、先発医薬品と同等の原薬、添加物、製法で、先発医薬品メーカーの工場を使い同一の製造技術によって作られます。
AG2は、先発医薬品と同等の原薬、添加物、製法で、許諾を得た後発医薬品メーカーが自社工場にて製造します。
AG3は、先発医薬品と添加物や製法は同等ながら異なる原薬を使い、許諾を得た後発医薬品メーカーが自社工場にて製造する方法です。
オーソライズドジェネリックが広がる背景
近年、国内の先発医薬品メーカーの間で、オーソライズドジェネリックを戦略的に活用する動きが活発になってきています。これまでは先発医薬品からジェネリック医薬品への切り替えのスピードは緩やかで、特許期間満了後も長期収載品として販売を続けたほうが、経営上のメリットは大きいと考えられてきました。
しかし、国をあげたジェネリック医薬品の使用促進により、ジェネリック医薬品への切り替えが加速しています。さらに、2014年から後発品への置き換え率に着目して、切り替えが進まない長期収載品の価格を更に引き下げる「Z2ルール」が策定されるなど、度重なる薬価の引き下げにより従来のような収益を確保することが難しくなりました。
先発医薬品メーカーにとって、オーソライズドジェネリックを発売することは売り上げを減らすリスクもありますが、許諾したメーカーからのロイヤリティ収入などが見込めるため、一定の収益を確保する効果も期待されています。自社の市場を守りながらジェネリック医薬品の普及をすすめるため、オーソライズドジェネリックが広がりはじめているのです。
ジェネリック医薬品やバイオシミラーとの違いは?
ここでは、オーソライズドジェネリックとの違いがわかりづらいジェネリック医薬品や、バイオ医薬品の後発医薬品であるバイオシミラーについて、それぞれの異なる点を解説します。
オーソライズドジェネリックとジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、特許期間が切れた新薬と同じ有効成分を含む薬のことで、オーソライズドジェネリックはジェネリック医薬品のなかの選択肢の1つです。
ジェネリック医薬品は先発医薬品と同じ有効成分ながら、原薬や添加物、製法などは異なる場合があり、それがオーソライズドジェネリックとの相違点といえます。また、ジェネリック医薬品は先発医薬品の特許が切れてから製造が開始できますが、オーソライズドジェネリックは先発医薬品の特許が切れる前に発売可能です。
オーソライズドジェネリックとバイオシミラー
バイオシミラー(バイオ後続品)とは、特許が切れたバイオ医薬品の後発医薬品です。オーソライズドジェネリックはおもに薬品を化学反応させて作られていますが、バイオ医薬品やバイオシミラーは遺伝子組換えや細胞培養などバイオテクノロジーの技術を応用して製造されます。
バイオシミラーは、タンパク質の分子量の大きさや構造の複雑さなどが要因で先行バイオ医薬品との同一性が示しにくいため、オーソライズドジェネリックよりも多くの試験を行う必要があります。
オーソライズドジェネリックのメリット
オーソライズドジェネリックのメリットは数多く知られていますが、ここでは医療従事者、患者さまそれぞれの立場からみていきます。
医療従事者のメリット
まずは先発医薬品と変わらない情報提供体制が維持される点があげられます。オーソライズドジェネリックには先発医薬品において長年にわたり集積された知見やデータが引き継がれているため、文献や臨床データなどの情報が多いことが特徴です。
また、近年では製薬会社の相次ぐGMP違反などを背景に、出荷調整が行われるケースも増えています。オーソライズドジェネリックでは、これまで培った経験をもとに安定供給が確保されているため、供給不足を起こしにくい点もメリットの1つです。
患者さまのメリット
大きなメリットは、先発医薬品と同一という信頼感をもてる点です。オーソライズドジェネリックは通常、先発医薬品と同じ原薬・添加物・製造方法などが用いられるため、ジェネリック医薬品に不安を抱えている方でも安心して服用できます。PTP包装も先発医薬品のデザインが踏襲される場合が多く、切り替え後でも服薬しやすいこともポイントです。もちろん薬価はほかのジェネリック医薬品と同様に安価となるため、経済的負担を減らす効果も期待されています。
オーソライズドジェネリックのデメリット
メリットの多いオーソライズドジェネリックですが、いくつかのデメリットもあります。
医療従事者のデメリット
医薬品卸から薬局への納入価格が比較的高額であり、薬価差益が確保しにくい点があげられます。薬価差益が減少すれば薬局全体の利益率も悪化してしまい、よりよい薬局づくりのための投資も難しくなるでしょう。最終的には患者さまに不利益が生じてしまう可能性も考えられます。
患者さまのデメリット
オーソライズドジェネリックは先発医薬品と同一の製造方法が用いられているため、製品によっては飲みやすさへの配慮など製剤的工夫に欠ける場有があります。また、すべての薬剤でオーソライズドジェネリックが発売されているわけではなく、まだまだ数が少ない点も知っておきましょう。
服薬指導でおさえておきたいポイント
政府によってジェネリック医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップが掲げられ、ジェネリック医薬品がますます普及していくなかで、薬剤師に求められる役割も大きくなりつつあります。ここでは、オーソライズドジェネリックを扱う薬剤師がおさえておきたいポイントについて解説していきます。
薬価や製品の特徴など、正確な知識を身につける
一般的なジェネリック医薬品とオーソライズドジェネリックの違いについて理解するだけでなく、薬価や製品の特徴についての最新情報を集めておくことも重要です。オーソライズドジェネリックが発売されている医薬品は限られるため、しっかりと押さえておきましょう。
情報提供のスキルを磨き、わかりやすい説明を心がける
先発医薬品や一般のジェネリック医薬品、オーソライズドジェネリックなどの違いを、患者さまが明確に理解することは困難です。個人の理解度に合わせながら、わかりやすい説明を心がけましょう。日ごろから患者さまとの信頼関係を構築することも忘れてはなりません。
患者さまの希望を考慮して、一人ひとりに合わせた提案を行う
患者さまのなかには、過去にジェネリック医薬品に漠然とした不安を抱えている方も少なくありません。オーソライズドジェネリックだからと無理にすすめるのは避けるべきです。患者さまの話に耳を傾けて、丁寧な説明で不安を取り除くなどそれぞれに合わせた提案を行いましょう。
変化する状況をきちんと把握しておこう
オーソライズドジェネリックの概要やメリット・デメリット、薬剤師がおさえておくべきポイントについて解説していきました。
ジェネリック医薬品の普及率は80%を目前にしていますが、相次ぐ大型商品の特許切れや大手ジェネリックメーカーの回収などを背景に、伸び率は鈍化しつつあります。さらなる普及を目指すためには薬剤師がエビデンスに基づいて、継続した啓発活動を行うことが重要です。
また、先発医薬品を希望する患者さまに対して、オーソライズドジェネリックの活用も期待されています。オーソライズドジェネリックは今後もさらに増えていくことが予想されるため、今のうちに知識を身につけておきましょう。
ファルマラボ編集部
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