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  • 公開日:2023.10.19

【薬剤師向け】降圧薬「アジルサルタン」とは?作用機序や効能効果、副作用について解説

【薬剤師向け】降圧薬「アジルサルタン」とは?作用機序や効能効果、副作用について解説

2023年6月16日に、降圧剤の「アジルサルタン」(先発品名:アジルバ錠)が、後発品医薬品として初めて薬価掲載されました。12社39品目が参入することになり、注目度が非常に高い後発医薬品となっています。

降圧薬は、作用機序の違いも含め、それぞれの特徴を正確に把握しておくことが大事です。また、新たに薬価収載されたアジルサルタンは、参入した企業数および品目数が多く、その注目度が高いことからも、薬剤師が調剤する機会が増える可能性もあります。

この記事では、アジルサルタンの作用機序や効能効果、副作用などを詳しく解説します。

アジルサルタンとは

アジルサルタンは、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)に分類される降圧薬です。ARBは、日本ではCa拮抗薬に次いで多く使用されている降圧薬であり、単剤での使用だけでなく、主にCa拮抗薬や利尿薬との併用で使用されます。

ここでは、アジルサルタンの効果効能や作用機序について解説します。

効能効果

アジルサルタンは高血圧症の治療薬です。

とくに、心血管疾患発症の危険因子とされる"夜間高血圧"や"早朝高血圧"の上昇を抑える効果をもち、ほかのARBと同様に血圧を下げることによる脳や心臓、腎臓などの臓器保護作用が期待できることも特徴です。

作用機序

アジルサルタンはアンジオテンシンⅡタイプ1(AT1)受容体に作用して、アンジオテンシンⅡと拮抗し、血管収縮作用を抑制することによって降圧作用を示します。アジルサルタンはAT1 受容体への親和性が強いため、ほかのARBよりも長時間作用し、強力かつ持続的な効果が得られるとされています。

アジルサルタンの用法用量

アジルサルタンの用法用量

アジルサルタンの用法用量は、成人に1日1回20mg、1日最大投与量は40mgです。さらに添付文書上では、アジルサルタンの降圧効果を考慮し、20mgより低用量からの開始も考慮することとされています。

また、先発品のアジルバには小児適応がありますが、後発品のアジルサルタンにはないので注意しましょう。

アジルサルタンの種類と薬価一覧

アジルバの後発品であるアジルサルタン(販売名)は、現在12社から39品目発売されています。

ここでは、アジルサルタンの種類と薬価の一覧を紹介します。

製造販売元 剤形 規格 薬価 ※23年8月24日現在
武田テバファーマ株式会社 錠剤 10mg
20mg
40mg
*10mg:24.7円/錠 
*20mg:37円/錠 
*40mg:55.5円/錠
沢井製薬株式会社
東和薬品株式会社
サンド株式会社
ニプロ株式会社
日本ジェネリック株式会社
キョーリンリメディオ株式会社 OD錠
日本ケミファ株式会社
沢井製薬株式会社
日新製薬株式会社
ダイト株式会社
Meiji Seika ファルマ株式会社
第一三共エスファ株式会社

アジルサルタン錠の規格の種類は先発医薬品のアジルバ錠と同じく、10mg、20mg、40mgの3種類です。また、先発医薬品には顆粒剤がありますが、後発医薬品では発売されていません。

先発医薬品のアジルバは、武田薬品工業会社から販売されており、その子会社である武田テバファーマ株式会社から出ている後発医薬品はAG(オーソライズドジェネリック)です。

※AGとは、原薬や添加物、製造方法などが先発品とすべて同一なものとして承認を得ているジェネリック医薬品のことをさします。

また、以下の7社は先発医薬品にはないOD錠を販売しています。

  • キョーリンリメディオ
  • 沢井製薬
  • 第一三共エスファ
  • ダイト
  • 日新製薬
  • 日本ケミファ
  • MeijiSeikaファルマ
  • これまで、嚥下困難などの理由でアジルバの顆粒剤を使用していた患者さまが後発医薬品を希望する場合は、OD錠の使用が望ましいでしょう。

    また、以下の表のように、アジルサルタンの薬価は先発品のアジルバに比べて約1/4です。

    <アジルバとアジルサルタンの薬価>

    アジルバ(先発品) アジルサルタン(後発品)
    10mg(錠剤) 93.7円/錠 24.7円/錠
    20mg(錠剤) 140.1円/錠 37円/錠
    30mg(錠剤) 210.1円/錠 55.5円/錠
    アジルバ顆粒1% 73.3円/g  - 

    薬価の面から考えても、後発品のアジルサルタンは先発品のアジルバより使いやすく、今後は積極的に使用されていくと考えられます。

    アジルサルタンとほかのARBとの違い

    アジルサルタンはほかのARBと比べてAT1受容体との結合が強固であるため、7種類あるARBのなかで降圧作用が最も強いとされています。また、24時間にわたる効果の持続が期待できます。

    アジルサルタンを含む各ARBの特徴は次の表の通りです。(日大医誌『アンジオテンシン II 受容体拮抗薬』より引用)。

    <アジルサルタンを含むARBの特徴>

    一般名 商品名 特徴
    ロサルタン ニューロタン ・世界初の持続性ARB
    ・「蛋白尿を伴う2型糖尿病における糖尿病性腎症」に対する保険適応あり
    ・ トロンボキサンA2受容体抑制作用あり
    カンデサルタン ブロプレス ・慢性心不全の保険適応あり
    バルサルタン ディオバン ・認知機能の改善効果あり
    オルメサルタン オルメテック ・CYPの影響を受けない
    ・OD錠の剤形がある
    テルミサルタン ミカルディス ・CYPの影響を受けない
    ・糖、脂質代謝を改善する
    ・胆汁からほぼ100%を排泄
    ・食事の影響を受ける
    イルベサルタン アバプロ,イルベタン ・ロサルタンに匹敵する腎保護作用あり
    アジルサルタン アジルバ ・AT1 受容体選択性が高く、効果の持続性が高い

    アジルサルタンはARBのなかでは最も新しい薬剤で、降圧効果が強く、効果の持続時間も長いことが特徴です。

    アジルサルタンの禁忌・副作用・使用上の注意

    アジルサルタンの禁忌・副作用・使用上の注意

    ここでは、アジルサルタンの禁忌や副作用、使用上の注意について解説します。

    禁忌

    まずは、アジルサルタンの禁忌項目について解説します。

    妊婦又は妊娠している可能性のある女性への使用

    アジルサルタンは、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与できません。羊水過少症や胎児・新生児の死亡、新生児の低血圧、腎不全、高カリウム血症、頭蓋の形成不全などがあらわれたとの報告があるためです。

    投与中に妊娠が判明した場合には、直ちに投与を中止し、必要に応じてほかの薬に切り替えるよう医師に相談しましょう。

    アリスキレンフマル酸塩(ラジレス®)使用中の糖尿病の方

    2型糖尿病の方を対象とした臨床試験において、直接的レニン阻害薬であるアリスキレンフマル酸塩とACE阻害薬/ARBを併用したところ、腎合併症や高カリウム血症、低血圧の発現率上昇の可能性が示唆されています。

    そのため、糖尿病を合併する高血圧症の方に対するアリスキレンフマル酸塩とACE阻害薬/ARBの併用は禁忌です。

    副作用

    アジルサルタンは安全性の高い薬ですが、めまいや頭痛、血中カリウム上昇、下痢、腎機能低下などの副作用が出る場合があります。

    重大な副作用としては、血管浮腫やショック・失神・意識消失、急性腎不全、高カリウム血症などに注意が必要です。

    投与中は観察を十分におこない、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切に処置することが大切です。

    使用上の注意

    ここでは、アジルサルタンの使用上の注意について解説します。

    運転や高所での作業をする際は注意が必要

    アジルサルタンの降圧作用によって、めまいやふらつきなどが生じる場合があります。服用中に運転や高所での作業をする際は十分に注意しましょう。

    手術前24時間は投与しない

    アジルサルタンは、手術前24時間は投与しないことが望ましいとされています。

    ARBを投与中の方では、麻酔及び手術中にレニンアンジオテンシン系の抑制作用による高度な血圧低下を起こす可能性があるためです。

    アジルバのジェネリック医薬品について、正しい服薬指導を

    アジルサルタンはARBのなかでも降圧効果や持続性が優れており、とくに早朝・夜間高血圧に有用だとされています。

    先発品のアジルバと比べると薬価が約1/4になるため、アジルサルタンの処方頻度は今後高まっていくことでしょう。

    アジルサルタンの特徴や使用上の注意について理解し、患者さまに正しく服薬指導できるようになりましょう。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2023/10/19

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