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  • 公開日:2023.11.27

ドラッグストアは薬剤師に人気の職場?業務内容や年収、働きやすさを解説【転職コンサルタントに聞いた】

 ドラッグストアは薬剤師に人気の職場?業務内容や年収、働きやすさを解説【転職コンサルタントに聞いた】

セルフメディケーションの浸透による医療費削減効果が期待されている今、ドラッグストアが担うべき社会的役割や存在意義が高まっています。

さらに近年では「調剤併設型ドラッグストア」も増え、より専門的な知識を生かした働き方ができるようになりました。年収や福利厚生の面でも魅力的なドラッグストアは薬剤師に人気な就業先です。この記事では、ドラッグストア薬剤師の業務内容や業界の動向、薬剤師に求められる役割、転職する際に確認すべきポイントについて解説します。

薬剤師の主な働き先とドラッグストア

まずは薬剤師が選ぶ主な就業先や、その中でもドラッグストアにはどのような特徴があるのかについて解説します。

薬剤師の主な就業先

一般に薬剤師は、調剤薬局や病院・診療所、ドラッグストア、医薬品関係企業などに就業する方がほとんどです。とくに調剤薬局には薬剤師全体の6割が勤務していると言われています。

OTC医薬品を中心に扱うことが多かったドラッグストアも、近年では調剤併設型ドラッグストアを展開する企業が増えてきており、医薬品知識を生かせる場所として薬剤師に人気の就業先となっています。

ドラッグストア業界の特徴と求められる役割とは

ドラッグストア業界全体での売上高や店舗数は年々増加傾向にあり、薬剤師のニーズは高まっています。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は「2025年にドラッグストア業界を10兆円産業にする」という目標を打ち出しており、今後ますますの成長が期待できる業界です。

2023年の主な企業と売上高・店舗数は以下になります。

ドラックストア業界上位各社の売上高と店舗数(2023年度)※千万円以下、切り捨て

企業 売上高 店舗数
ウエルシアHD 1兆1,442億円 2,751店舗
ツルハHD 9,700億円 2,589店舗
マツキヨココカラ&カンパニー 9,512億円 3,409店舗
コスモス薬局 8,276億円 1,358店舗

また日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、ドラッグストアを「医薬品と化粧品、そして、日用家庭用品、文房具、フィルム、食品等の日用雑貨を取り扱うお店」と定義しています。つまり、ドラッグストアは単なる医薬品の提供だけでなく、地域住民の健康全般に関わる商品やサービスを提供する役割が求められているのです。

また近年では「調剤併設型ドラッグストア」が増加傾向にあり、OTC医薬品だけでなく、処方箋が必要な医療用医薬品の提供も行うドラッグストアが増えてきています。

これから日本の高齢化が進むに連れて、ドラッグストアには予防・治療・介護の相談ができる「健康ステーション」「かかりつけ薬局」としての機能が求められています。これらを推進していくうえで、地域に密着するドラッグストアは、ますます重要な役割を担う存在になっていくでしょう。

ドラッグストア薬剤師の主な業務内容とは

ドラッグストア薬剤師の主な業務内容とは

ではドラッグストアで働く薬剤師はどのような業務内容になるのでしょうか。ここではOTC医薬品のみのドラッグストアと調剤併設型ドラッグストアに分けて解説します。

OTC医薬品のみのドラッグストアの場合

OTC医薬品のみのドラッグストアでは、体の不調に悩むお客さまから相談を受け、適切な市販薬を選択できるようにアドバイスを行うのが薬剤師の重要な仕事です。OTC医薬品の販売については以下のように法律で定められています。

薬の種類 対応する専門家 販売者から購入者への説明 購入者からの相談対応
要指導医薬品 薬剤師 薬剤師から対面での指導・書面を用いて、適正使用のために必要な情報提供を行わなければならない 義務
一般用医薬品 第1類医薬品 薬剤師 薬剤師からの指導・書面を用いて、適正使用のために必要な情報提供を行わなければならない 義務
第2類医薬品 薬剤師or登録販売者 適切な情報提供に努めなければならない 義務
第3類医薬品 薬剤師or登録販売者 規定なし 義務

場合によってはサービス提供を行うなかで、医療機関への受診勧奨が必要なケースもあるでしょう。ほかにも介護用品やサプリメント、化粧品など多岐に渡る商品の知識も求められます。薬剤師として病気の発症や重症化を防ぐために的確な情報提供を行うことが大切です。

また、店舗や企業の方針によっても異なりますが、スタッフの一員として、商品の品出し・陳列やレジ打ちなどの店舗運営に関わる業務を担当することもあります。商品の配置場所やPOP制作による売り場作りの工夫は売り上げに大きく影響します。薬剤師の専門性を生かした業務のほかに、店舗経営を支えることも重要な仕事です。

調剤併設型ドラッグストアの場合

近年は調剤併設型ドラッグストアを展開する企業が増えています。処方箋を受け取るまで隣接のドラッグストアで買い物などをしながら過ごせるので、患者さまの待ち時間の負担が少ないというメリットがあります。

調剤併設型ドラッグストアでは、一般的な調剤薬局と同様に、薬剤師は処方箋の調剤や服薬指導、在庫管理などの薬局業務を行います。またドラッグストアが併設されているという特性上、患者さまから処方薬とOTC医薬品・サプリメントとの飲み合わせや、介護用品などの相談を受ける機会も多くあります

調剤併設型ドラッグストアは会社の方針によって、薬局業務と店舗運営を担当するスタッフが完全に分かれている場合と、同じスタッフがどちらも行う場合の両方があります。両方を行う場合は、薬局業務の空き時間や患者さまの求めに応じて、品出しやレジ打ち、市販薬の販売・情報提供を行うことが求められます。

ドラッグストア薬剤師は高年収&働きやすいって本当?【転職コンサルタントに聞いた】

ドラッグストア薬剤師は高年収&働きやすいって本当?【転職コンサルタントに聞いた】

ここでは、ドラッグストア薬剤師の年収や働きやすさについて解説します。

ドラッグストア薬剤師の平均年収とは

一般に、「ドラッグストアは高年収である」と言われますが、本当にそうなのでしょうか。

2023年11月時点でのファルマスタッフの掲載求人をもとに算出したデータが以下になります。

薬剤師の就業先別の平均年収

調剤薬局 年収591万円
病院 年収522万円
ドラッグストア(調剤併設) 年収624万円
ドラッグストア(OTCのみ) 年収629万円
企業 年収577万円

ドラッグストアの年収が調剤薬局や病院と比較して高い理由としては、保険調剤に加えてOTC医薬品や介護用品、化粧品、食品なども扱うため、診療報酬に依存せずに営業利益が安定していることがあげられます。

また、店舗の運営上、22時以降のシフト勤務や祝日・年末年始の休日出勤にも対応する場合があるために、年収が上がりやすくなるのです。

転職コンサルタントに聞いた!ドラッグストア薬剤師の年収

年収は20代で500万円からスタートし、40代で700万円まで目指せるでしょう。管理薬剤師を経てエリアマネージャーになれば、さらに高い年収に近づくことができるでしょう。ドラッグストアは昇給がゆるやかですが、最初の年収が高いぶん生涯年収は高くなります。

(転職コンサルタント A)

比較的に若いうちから高い年収が見込めますが、年収の上がり幅は大きくないので、資格を取得したり役職に就いたりすることで年収を上げていくのが良いでしょう。ドラッグストアは店舗数が多いため、若手でも希望すれば入社1~3年目で管理薬剤師になれる可能性が高く、年収アップが見込めます。しかし、病院や調剤薬局へ転職する場合に年収が下がるケースが多いという特徴もあります。

(転職コンサルタント B)

管理薬剤師などの役職に就いて年収をアップさせていくことも可能ですが、企業によっては管理薬剤師手当が基本給に含まれていたり、昇給のためにテストの実施や要件を満たさなければならなかったりすることもあります。事前にそうした部分も確認しておけると良いでしょう。

(転職コンサルタント C)

ドラッグストア薬剤師の働きやすさとは

以前は、ハードワークで休みが取得しづらいイメージのあったドラックストア。

しかし近年では、人手不足が緩和されつつあることから、ドラッグストアはシフトの融通が利きやすい職場へと変わってきています。

ドラッグストアは大手企業が経営元の場合が多いことから、福利厚生が充実している傾向にあります。会社にもよりますが、産休育休制度や介護休暇、住宅手当・借り上げ社宅、退職金の積み立てなどの制度が整っている傾向にあり、長期目線で見ても働きやすい環境となっています。

転職コンサルタントに聞いた!ドラッグストア薬剤師の働きやすさ

調剤薬局や病院と比べて、福利厚生や研修カリキュラムが充実しているため、経験が浅い薬剤師でも安心して働けます。また、全国展開しているドラッグストアでは、勤務コースや社宅制度があり、転居があれば異動して続けられる可能性が高いです。ライフイベントに柔軟に対応したい人におすすめです。

(転職コンサルタント A)

調剤に関するスキルは研修や実務でしっかり学べるため、ブランクがあってもコミュニケーションスキルがあれば問題なく働けるでしょう。OTC販売やレジ業務をすることもあるため、接客業に抵抗のない人におすすめです。また、アクセスの良い店舗が多いことや、機械化が進み効率良く仕事ができること、経営が安定していることもあり、働きやすい環境といえます。

(転職コンサルタント B)

土日祝も営業している店舗が比較的多いため、平日休みを取りやすい印象です。店舗によっては、長期休暇制度を利用して最大2週間の休みが取れる場合もあります。また、福利厚生が手厚く、利用しやすいことも特徴でしょう。ドラッグストアならではのOTC社割制度がある企業では、市販薬がお得に購入できます。

(転職コンサルタント C)

薬剤師がドラッグストアで働くメリット・デメリット

薬剤師がドラッグストアで働くメリット・デメリット

ここでは、ドラッグストアへの転職を考える薬剤師に向けて、ドラッグストアを選ぶメリット・デメリットをお伝えします。

【ドラッグストアのメリット1】幅広い商品を扱うため、薬剤師としてスキルアップできる

一般的な調剤薬局と比較し、ドラッグストアに来局される患者さまはさまざまな医療機関から処方箋を持って来られるため、処方内容や患者さまの年代が多岐に渡ります。

また、OTC医薬品や健康食品、介護商品などにも触れる機会がありセルフメディケーションにも貢献できるため、薬剤師として大きなやりがいを感じられます。さらに大手企業であれば研修制度が充実しており、薬剤師の専門知識だけでなく接遇やコミュニケーションのスキルアップにもつながるでしょう。

【ドラッグストアのメリット2】幅広いキャリアプランや人間関係が構築できる

ドラッグストアは会社としての規模が大きいために、店舗業務以外にも、総務や人事、教育部門で働いたり、マーケティング部門でプライベートブランドの企画・商品開発に挑戦したりできるなど、キャリアプランが豊富です。

また、薬剤師以外に登録販売者や販売スタッフ、卸売業者の方などさまざまな職員がいるため、幅広い人間関係を築くこともできます。

【ドラッグストアのデメリット1】業務内容が多岐にわたる

就業先によっては、薬局業務に加えて売り場作りや接客などにも対応しなくてはなりません。調剤や服薬指導に専念したいと考える薬剤師にとってはデメリットと感じられるでしょう。

【ドラッグストアのデメリット2】シフトに柔軟に対応することが求められる

ドラッグストアは営業時間が長く、土日祝日にも処方箋を受け付けている店舗が多いことが特徴です。深夜の勤務シフトにも柔軟に対応することが求められます。

そのほか年末年始やゴールデンウイーク、お盆休みなど世間がお休みのときでも出勤する必要があります。

薬剤師がドラッグストアへの転職する際に確認すべきポイントとは

ドラッグストア薬剤師の主な業務内容とは

ここでは上記の点をふまえて、薬剤師がドラッグストアに転職する際にどのような点を確認すべきか解説します。

ドラッグストアの経営方針

ドラッグストアでは企業によって、調剤併設型店舗を積極的に展開する企業や対人接客業務を重視する企業があるなど、経営方針が大きく異なります。自分の希望する働き方と合っているか、企業のホームページや転職コンサルタントを活用して確認しましょう

配属先の店舗や転勤の有無

企業によっては、調剤併設型店舗とOTC医薬品のみの店舗の両方を有しているケースがあります。「調剤とOTC医薬品両方の勉強をしたかったのに、OTC医薬品のみの店舗に配属されてしまった」という失敗談もあるため注意しましょう。また、大手企業の多いドラッグストアは全国各地で店舗展開している場合も多いため、転勤の有無や異動のエリア(地域)も事前に確認する方が良いでしょう。

勤務時間やシフト体制

ドラッグストアは勤務時間や休みが不定期になりやすいため、自身の生活や家庭との両立が可能であるかどうかを検討することも大切です。勤務時間については、「朝何時から夜何時までの勤務なのか」「夜勤は月に何回程度あるのか」「夏季休暇や年末年始の休暇の有無」等。事前にしっかりと確認しましょう。

ミスマッチを防ぐために転職コンサルタントに相談を!

セルフメディケーションや在宅医療の推進により、売上高や店舗数が右肩上がりであるドラッグストアは、今後も成長性が期待できる業界です。年収や福利厚生の面から見ても魅力的で、ドラッグストアを就業先に希望する薬剤師も増えてきています。

一方で、選ぶ企業や配属される部署によっては、業務内容や待遇が大きく異なることがあります。転職後のミスマッチを防ぐためにも、転職コンサルタントに相談してみるのも良いでしょう。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2023/11/27

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