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  • 公開日:2023.11.02

フェブリク錠に小児適応が追加!効能効果、副作用、服薬指導のポイントを解説

フェブリク錠に小児適応が追加!効能効果、副作用、服薬指導のポイントを解説

2023年6月に、痛風・高尿酸血症治療薬のフェブリク錠(一般名:フェブキソスタット)が、小児の用法用量について追加の承認を取得しました。

痛風・高尿酸血症治療薬では初の小児適応となることから、広く注目を集めています。

この記事では、フェブリクの効能効果や作用機序を確認したうえで、小児に対する用法用量をご紹介します。また、副作用や服薬指導のポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

フェブリクとは

フェブリク(一般名:フェブキソスタット)は、体内での尿酸の過剰な生成を抑える「尿酸生成抑制薬」です。

まずは改めて、フェブリクの効能効果や作用機序について確認します。

効能効果

フェブリクが適応とする効能・効果は、「痛風、高尿酸血症」と「がん化学療法に伴う高尿酸血症」です。

痛風、高尿酸血症

痛風は、血液中の尿酸値が高くなる(高尿酸血症)ことが原因で、尿酸の結晶が関節に沈着してしまう病気です。関節に蓄積すると、関節や周辺の組織に激しい痛みや炎症を引き起こすことがあります。

フェブリクは、尿酸の過剰な生成を抑えることから、痛風や高尿酸血症の治療に用いられます。

がん化学療法に伴う高尿酸血症

抗がん薬の投与によってがん細胞が急速に壊れると、細胞内の核酸や電解質が血中に大量に放出されます。

核酸は分解・代謝されて尿酸になるため、がん治療を行う中で高尿酸血症を引き起こすことがあります。

フェブリクはこのようながん化学療法に伴う高尿酸血症にも用いられる薬剤です。

作用機序

フェブリクは、キサンチンオキシダーゼの働きを選択的に阻害することで、尿酸の過剰な生成を抑制します。なお、キサンチンオキシダーゼとは、ヒポキサンチンをキサンチンへ酸化し、さらに尿酸への酸化を触媒する酵素です。

キサンチンオキシダーゼを阻害する主な薬剤として、アロプリノール(商品名:ザイロリック他)をあげることができます。アロプリノールはヒポキサンチンの構造異性体であり、キサンチンとよく似た構造であることから、キサンチンオキシダーゼの競合阻害薬として作用します。

フェブリクは、アロプリノールのような競合阻害ではなく、選択的にキサンチンオキシダーゼを阻害することで、尿酸生成を抑制します。

フェブリクの用法用量

フェブリクの痛風、高尿酸血症に対する用法用量は、これまで成人に対するものしかありませんでしたが、2023年6月に小児適応が追加承認されました。

ここでは、成人と小児に対するフェブリクの用法用量の違いを説明します。

痛風、高尿酸血症

成人

1日10mgから開始し、1日1回経口投与します。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量します。

維持量:1日1回40mg

最大投与量:1日1回60mg(患者の状態に応じて適宜増減)

小児

小児には、体重に応じて下記の投与量を1日1回経口投与します。

  • 体重40kg未満
  • 通常、1日5mgより開始し、1日1回経口投与します。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量します。

    維持量:1日1回20mg

    最大投与量:1日1回30mg(患者の状態に応じて適宜増減)

  • 体重40kg以上
  • 通常、1日10mgより開始し、1日1回経口投与します。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量します。

    維持量:1日1回40mg

    最大投与量:1日1回60mg(患者の状態に応じて適宜増減)

    以上からもわかるように、体重40kg以上の小児では、体重40kg未満の場合と比べて用量が2倍になります。

    がん化学療法に伴う高尿酸血症

    成人

    60mgを1日1回経口投与します。

    がん治療を開始する1~2日前から服用をはじめ、化学療法の開始後5日目まで服用します。服用期間は、患者さまの状態にあわせて延長される場合もあります。

    小児

    がん化学療法に伴う高尿酸血症では小児適応は追加されていません。

    ▼参考資料はコチラ
    フェブリク錠 添付文書|PMDA

    小児適応が追加された背景

    小児適応が追加された背景

    フェブリクに小児適応が追加された背景としては、次のことがあげられます。

    特定の基礎疾患をもつ小児で高尿酸血症がみられるケースがある

    痛風や高尿酸血症は成人に発症するイメージがあるかと思いますが、実は基礎疾患をもつ小児でも発症するケースがあります。

    帝人株式会社が発表した資料によると、「先天性心疾患や慢性腎疾患、甲状腺機能低下症、先天性代謝異常症などの慢性疾患をもつ小児患者では、慢性的な高尿酸血症が認められることが多いとされています。

    これらの基礎疾患に伴う高尿酸血症は、適切に治療しなければ成人になってから痛風を発症する可能性があるため、小児期から長期にわたって尿酸値をコントロールする必要がある」(帝人ファーマ株式会社『痛風・高尿酸血症治療剤「フェブリク錠」が小児適応追加の承認を取得』より引用)。

    臨床試験で小児に対する有効性・安全性が確認された

    肥満の小児や上記のような基礎疾患をもつ小児では、高尿酸血症の発症がみられるものの、これまで小児に対する用法用量が設定された尿酸降下薬は存在しませんでした。

    そこで、フェブリクを開発した帝人ファーマ社は、2018年より小児の痛風・高尿酸血症患者を対象とした有効性や安全性を確認する第2相臨床試験を実施してきました。6〜18歳の小児30人を対象とした同試験において、フェブリクの尿酸降下作用や安全性が確認されたため、今回の承認に至りました。

    フェブリクの禁忌・副作用・使用上の注意

    ここでは、フェブリクの禁忌や副作用について解説します。

    禁忌

    フェブリクの併用禁忌としては、免疫抑制剤のアザチオプリン(イムラン)や、白血病の薬であるメルカプトプリン(ロイケリン)があげられます。

    アザチオプリンの代謝物であるメルカプトプリンは、キサンチンオキシダーゼによって代謝されるため、キサンチンオキシダーゼ阻害薬であるフェブリクと併用することで代謝が阻害されてしまいます。

    その結果、メルカプトプリンの血中濃度が上昇し、骨髄抑制による貧血症状や、消化器症状、発疹などの副作用が発現しやすくなると可能性があります。

    副作用

    フェブリクの副作用としては、関節の痛みや手足の不快感・痛み、下痢などがあげられます。

    また重大な副作用としては肝機能障害や過敏症などによる以下のような症状があげられます。

  • 全身のだるさ
  • 食欲減退
  • 皮膚や白目が変色(黄色)
  • 全身の皮疹や発疹
  • 肝機能障害は無症状のまま血液検査でASTやALTの上昇が確認される場合もあるため、服用中の検査値をフォローしておくようにしましょう。

    フェブリクの服薬指導のポイント

    フェブリクの服薬指導のポイント

    フェブリクの服薬指導を行う際は、主に次のポイントに注意しましょう。

    飲みはじめに発作が起きても自己判断で中止しない

    フェブリクの飲みはじめには、尿酸値が急激に下がることで痛風発作が起こる場合があります。

    痛風発作が起きたからといって、自己判断で中止したり服用量を変更したりすると、症状の悪化や再発につながる可能性があります。

    薬の飲み忘れに気づいたら、できるだけ早く飲む

    薬の飲み忘れに気づいたら、できるだけ早く飲むように指導しましょう。次の服用タイミングが迫っている場合は、次回まで待って飲みます。その場合、2回分を一度に飲まないように注意しましょう。

    フェブリクに小児適応が追加されたことを確認しておこう

    この記事では、痛風・高尿酸血症治療薬で初めて、フェブリクに小児適応が追加されたことをお伝えしました。

    小児適応の中でも、体重によってフェブリクの用量が異なるため、処方されたときにも慌てないように事前に確認しておきましょう。

    また、フェブリクの効能効果や作用機序、副作用などについても改めて確認し、患者さまが安心して服用できるように正しく服薬指導しましょう。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2023/11/02

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